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第二章
第二話 卵の調査だけど、ギルド直々の依頼なら、報酬金額は期待してもいいよな
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~シロウ視点~
「シロウ。こいつをお前に頼みたい」
ギルドに立ち寄って、何か上手い依頼はないかと吟味をしていると、オルテガが話しかけてきた。
彼は手に持っていた紙を俺に無理やり渡し、無言の圧力を向けてくる。
いったい俺に何をさせようと言うのだこのオッサンは? まぁ、つまらないものなら断ればいいだけだし、上手い話しなら乗ればいい。
とりあえずは目を通すだけでもしておこう。
えーと、なになに、依頼主はギルド直々だって! おいおい、マジかよ! ギルド直々の依頼となれば、報酬金額も高いじゃないのか! これは期待できる! 依頼内容は卵の調査?
「卵の調査?」
依頼内容を見た俺は、正直がっかりした。ギルドマスターが持ってきたのだから、どれだけ凄い依頼なのかと期待していた。だけどとんだ肩透かしだ。
こんな依頼は、Dランクの冒険者がするものなのだから。
いくらギルド直々であったとしても、こんな依頼なら報酬金額は期待できない。
「どうして俺が、こんな簡単で面倒臭い依頼を受けないといけない」
「まぁ、待て。話を聞いても損はしない。数日前に東のダンジョンで大量の卵が発見されたらしいのだ」
俺の言葉を無視して、オルテガが勝手に話し出す。
「らしいとは、また曖昧な表現だな」
「まぁ、正直正確な情報は入っていないんだよ。最初はDランクの依頼にしていたのだが、この依頼を受けた冒険者は、それ以来帰って来ていない。なのでCランク、そしてBランクとランクを上げたのだが、Bランクの冒険者も同じ道を辿った」
「だからAランクである俺のところに来たと」
オルテガは無言で頷く。
彼の言ったことが事実であるならば、確かに気になるな。ただの卵の調査で行方不明者が出ていると言うことは、強い魔物がいると見ていい。
「わかった。その依頼を引き受けるよ」
「そうか。そいつは助かる。手続きは俺のほうからしておくから、今から向かってくれ」
「今からって急すぎるな」
「何せ、多くの冒険者が犠牲になったからな。できるだけ早く終わらせたいんだ」
「その依頼、このマリー・オルウィンも受けますわ!」
ギルドの出入口のほうから声が聞こえ、そちらに顔を向ける。
毛先をゆる巻にしている金髪の女性が俺のところに歩いてきた。
「シロウが依頼を受けるのであれば、当然ワタクシもその依頼に参加しますわ」
「いや、それは無理だろう」
「それは無理だ」
俺とオルテガは同時に言い、言葉が被った。
「ど、どうして無理なのですか!」
「だって、マリーは赤いバラを抜けてソロとして活動しているじゃないか。今のマリーのランクは最初のランクであるEだ。ランクに違いがあるから参加できないぞ」
「そ、そんなー! ワタクシもシロウと依頼を受けたいですわ」
そういうと、マリーは俺の腕に自身の腕を絡ませ、上目遣いで俺を見てきた。
女性の上目遣いほど威力が高いものはない。
「ワタクシ、シロウと一緒がいいですの……ダメ……ですの?」
彼女は目尻に涙を溜めながら言ってくる。
マジでそんなお願いの仕方は止めてくれ! 女の涙ほど弱いものはないのだから。
まぁ、実際はひとつだけマリーも参加できる方法があるんだよな。だけどそれをしてしまっては、俺のソロとしての信念を曲げることになるし。
「まぁ、マリー嬢も参加できる方法はある。それはシロウとチームを組むことだ。パーティーリーダーがAランクであるのなら、問題はない」
ちょっと、オルテガ! どうしてマリーに参加方法を教えるんだよ!
「それは本当ですの! わかりました。確かによく考えれば、ワタクシがパーティーのリーダーに拘る必要はありません。では早速チーム結成の申請をしましょう」
「おい、ちょっと待て! 俺は一言もいいとは言っていないぞ」
「別にいいではないですか。以前は同じチームを組んでいたのですから。前回はワタクシがパーティーのリーダー、そして今回はあなたがパーティーリーダーになるのですよ。リーダーの指示は絶対に従うこと。ワタクシをパーティーに加えて下されば、あなたの好きにしていいのですよ」
マリーが耳元で囁いてくる。俺は男だ。そんな言いかたをされれば、あっち系の妄想を膨らませてしまう。
って、騙されるな俺! これはマリーの巧妙な罠だ。俺がチームを結成したことをいいことに、俺の力を利用するに決まっている。
こうなったのも、ギルドマスターが余計なことを言ったせいだ。責任を取って説得してもらおう。
助けを求めようと彼を見る。すると、オルテガはなぜか額に青筋を浮かべていた。
どうしてそんな怖い顔をする。俺が困っているのだから助けてくれよ。
「人の前で堂々といちゃつくな! 全然話が先に進まないではないか! もういい、俺がギルドマスターの権限を使って、お前たち二人にパーティーを組ませる。リーダーはシロウ! お前だ」
はぁ?
「ちょっと待てよ、どうしてそうなる!」
「いいからさっさと行け! でないと冒険者資格を剥奪するぞ!」
「職権乱用じゃないか!」
「さぁ、ギルドマスターの許可も得られましたし、さっそく行きますわよ!」
マリーが絡ませている腕に力を入れ、俺をギルドの外に引っ張る。
こうなったら仕方がない。とりあえずこの依頼だけは、マリーとチームを組もう。そして終わったあとに解散だ。
そのように意気込みつつ、俺たちは東のダンジョンの入り口に来た。
「さて、マリーが強引に連れてきたせいで、まともな準備をせずに依頼を受けることになったのだが」
ポツリと呟きながら、マリーを見る。
「シロウなら大丈夫ですわ。ワタクシは信じております」
一時的にパーティーとなったマリーは、俺に期待の眼差しを向けてきた。
「まぁ、俺のスキルがあれば問題ないだろう」
飲み物は魔法で空気中の水分子を集めればいいし、ケガをしても肉体の損傷を治すことも可能だ。万が一にでも、俺が魔法を封じられるなんてことにならなければ、何も問題はないだろう。
どうして俺に【魔学者】なんてスキルが与えられたのかはわからないが、本当にこのスキルは応用が利く。それに魔学者のおまけで異世界の知識も手に入れているお陰で、この世界には存在しない魔法も生み出すことが可能だ。
例えばこの世界の回復魔法はヒールが主だ。だけどヒールは傷を癒すことはできるが、失った血液を元に戻すことはできない。
そのせいで外傷を治しても意識不明となるケースもあり、時にはまともに生活ができないほどの障がいを引き起こすこともあるのだ。
だけど異世界の知識を用いた魔法ならば、血液を生産させることができる。
そのお陰で大けがをしたとしても、即効で元気になるのだ。
「それじゃあ、入って行くとしますか」
「ええ、頑張りましょう」
マリーと二人でダンジョンの中に入る。ここも入り口だけは明るいが、奥に進むと次第に暗くなり、先が見えない状態だ。
「ファイヤーボール」
火球を生み出す魔法を唱え、周囲を明るく照らす。
『キュウ、キュウ』
奥に向って歩いていると、さっそく魔物が出迎えてくれた。
人間の生き血を吸う魔物、吸血コウモリだ。全長一メートルほどの魔物だが、俺にとってはただの大きいコウモリでしかない。
やつは常に音波を放っており、跳ね返ってくる反射の強さで相手が自分よりも格下かどうかを判断する。
つまり、あの魔物は俺たちを格下だと思い込んでいる。だから襲ってきたと言うわけだ。
まったく、相手の力量を正確に測れないなんて、魔物も所詮はただの生き物だな。
ならば、その驕りを後悔させてやろう。
吸血コウモリは翼を羽ばたかせて空中浮遊しているが、その場に留まったままだ。今なら直ぐに倒せれるだろう。
「アイシクル」
氷系の呪文を唱える。すると、吸血コウモリの上にある空気の水分子を集め、水にすると三角柱に象る。そしてその水の気温を下げて氷に変えると、魔物に落とす。
先端の尖った氷は、吸血コウモリの肉体を貫いて地面に突き刺さる。
魔物は、まるで標本にされた昆虫のような状態になった。
「さすがシロウですわ。あっと言う間に魔物を倒すなんて! でも、変わった呪文ですわね。今まで聞いたことがありませんわ」
「まぁ、俺のオリジナルだからな」
身動きの取れなくなっている魔物を横切り、先を急ぐ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!
など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。
【感想】は一言コメントや誤字報告でも大丈夫です。気軽に書いていただけると嬉しいです。
何卒宜しくお願いします。
「シロウ。こいつをお前に頼みたい」
ギルドに立ち寄って、何か上手い依頼はないかと吟味をしていると、オルテガが話しかけてきた。
彼は手に持っていた紙を俺に無理やり渡し、無言の圧力を向けてくる。
いったい俺に何をさせようと言うのだこのオッサンは? まぁ、つまらないものなら断ればいいだけだし、上手い話しなら乗ればいい。
とりあえずは目を通すだけでもしておこう。
えーと、なになに、依頼主はギルド直々だって! おいおい、マジかよ! ギルド直々の依頼となれば、報酬金額も高いじゃないのか! これは期待できる! 依頼内容は卵の調査?
「卵の調査?」
依頼内容を見た俺は、正直がっかりした。ギルドマスターが持ってきたのだから、どれだけ凄い依頼なのかと期待していた。だけどとんだ肩透かしだ。
こんな依頼は、Dランクの冒険者がするものなのだから。
いくらギルド直々であったとしても、こんな依頼なら報酬金額は期待できない。
「どうして俺が、こんな簡単で面倒臭い依頼を受けないといけない」
「まぁ、待て。話を聞いても損はしない。数日前に東のダンジョンで大量の卵が発見されたらしいのだ」
俺の言葉を無視して、オルテガが勝手に話し出す。
「らしいとは、また曖昧な表現だな」
「まぁ、正直正確な情報は入っていないんだよ。最初はDランクの依頼にしていたのだが、この依頼を受けた冒険者は、それ以来帰って来ていない。なのでCランク、そしてBランクとランクを上げたのだが、Bランクの冒険者も同じ道を辿った」
「だからAランクである俺のところに来たと」
オルテガは無言で頷く。
彼の言ったことが事実であるならば、確かに気になるな。ただの卵の調査で行方不明者が出ていると言うことは、強い魔物がいると見ていい。
「わかった。その依頼を引き受けるよ」
「そうか。そいつは助かる。手続きは俺のほうからしておくから、今から向かってくれ」
「今からって急すぎるな」
「何せ、多くの冒険者が犠牲になったからな。できるだけ早く終わらせたいんだ」
「その依頼、このマリー・オルウィンも受けますわ!」
ギルドの出入口のほうから声が聞こえ、そちらに顔を向ける。
毛先をゆる巻にしている金髪の女性が俺のところに歩いてきた。
「シロウが依頼を受けるのであれば、当然ワタクシもその依頼に参加しますわ」
「いや、それは無理だろう」
「それは無理だ」
俺とオルテガは同時に言い、言葉が被った。
「ど、どうして無理なのですか!」
「だって、マリーは赤いバラを抜けてソロとして活動しているじゃないか。今のマリーのランクは最初のランクであるEだ。ランクに違いがあるから参加できないぞ」
「そ、そんなー! ワタクシもシロウと依頼を受けたいですわ」
そういうと、マリーは俺の腕に自身の腕を絡ませ、上目遣いで俺を見てきた。
女性の上目遣いほど威力が高いものはない。
「ワタクシ、シロウと一緒がいいですの……ダメ……ですの?」
彼女は目尻に涙を溜めながら言ってくる。
マジでそんなお願いの仕方は止めてくれ! 女の涙ほど弱いものはないのだから。
まぁ、実際はひとつだけマリーも参加できる方法があるんだよな。だけどそれをしてしまっては、俺のソロとしての信念を曲げることになるし。
「まぁ、マリー嬢も参加できる方法はある。それはシロウとチームを組むことだ。パーティーリーダーがAランクであるのなら、問題はない」
ちょっと、オルテガ! どうしてマリーに参加方法を教えるんだよ!
「それは本当ですの! わかりました。確かによく考えれば、ワタクシがパーティーのリーダーに拘る必要はありません。では早速チーム結成の申請をしましょう」
「おい、ちょっと待て! 俺は一言もいいとは言っていないぞ」
「別にいいではないですか。以前は同じチームを組んでいたのですから。前回はワタクシがパーティーのリーダー、そして今回はあなたがパーティーリーダーになるのですよ。リーダーの指示は絶対に従うこと。ワタクシをパーティーに加えて下されば、あなたの好きにしていいのですよ」
マリーが耳元で囁いてくる。俺は男だ。そんな言いかたをされれば、あっち系の妄想を膨らませてしまう。
って、騙されるな俺! これはマリーの巧妙な罠だ。俺がチームを結成したことをいいことに、俺の力を利用するに決まっている。
こうなったのも、ギルドマスターが余計なことを言ったせいだ。責任を取って説得してもらおう。
助けを求めようと彼を見る。すると、オルテガはなぜか額に青筋を浮かべていた。
どうしてそんな怖い顔をする。俺が困っているのだから助けてくれよ。
「人の前で堂々といちゃつくな! 全然話が先に進まないではないか! もういい、俺がギルドマスターの権限を使って、お前たち二人にパーティーを組ませる。リーダーはシロウ! お前だ」
はぁ?
「ちょっと待てよ、どうしてそうなる!」
「いいからさっさと行け! でないと冒険者資格を剥奪するぞ!」
「職権乱用じゃないか!」
「さぁ、ギルドマスターの許可も得られましたし、さっそく行きますわよ!」
マリーが絡ませている腕に力を入れ、俺をギルドの外に引っ張る。
こうなったら仕方がない。とりあえずこの依頼だけは、マリーとチームを組もう。そして終わったあとに解散だ。
そのように意気込みつつ、俺たちは東のダンジョンの入り口に来た。
「さて、マリーが強引に連れてきたせいで、まともな準備をせずに依頼を受けることになったのだが」
ポツリと呟きながら、マリーを見る。
「シロウなら大丈夫ですわ。ワタクシは信じております」
一時的にパーティーとなったマリーは、俺に期待の眼差しを向けてきた。
「まぁ、俺のスキルがあれば問題ないだろう」
飲み物は魔法で空気中の水分子を集めればいいし、ケガをしても肉体の損傷を治すことも可能だ。万が一にでも、俺が魔法を封じられるなんてことにならなければ、何も問題はないだろう。
どうして俺に【魔学者】なんてスキルが与えられたのかはわからないが、本当にこのスキルは応用が利く。それに魔学者のおまけで異世界の知識も手に入れているお陰で、この世界には存在しない魔法も生み出すことが可能だ。
例えばこの世界の回復魔法はヒールが主だ。だけどヒールは傷を癒すことはできるが、失った血液を元に戻すことはできない。
そのせいで外傷を治しても意識不明となるケースもあり、時にはまともに生活ができないほどの障がいを引き起こすこともあるのだ。
だけど異世界の知識を用いた魔法ならば、血液を生産させることができる。
そのお陰で大けがをしたとしても、即効で元気になるのだ。
「それじゃあ、入って行くとしますか」
「ええ、頑張りましょう」
マリーと二人でダンジョンの中に入る。ここも入り口だけは明るいが、奥に進むと次第に暗くなり、先が見えない状態だ。
「ファイヤーボール」
火球を生み出す魔法を唱え、周囲を明るく照らす。
『キュウ、キュウ』
奥に向って歩いていると、さっそく魔物が出迎えてくれた。
人間の生き血を吸う魔物、吸血コウモリだ。全長一メートルほどの魔物だが、俺にとってはただの大きいコウモリでしかない。
やつは常に音波を放っており、跳ね返ってくる反射の強さで相手が自分よりも格下かどうかを判断する。
つまり、あの魔物は俺たちを格下だと思い込んでいる。だから襲ってきたと言うわけだ。
まったく、相手の力量を正確に測れないなんて、魔物も所詮はただの生き物だな。
ならば、その驕りを後悔させてやろう。
吸血コウモリは翼を羽ばたかせて空中浮遊しているが、その場に留まったままだ。今なら直ぐに倒せれるだろう。
「アイシクル」
氷系の呪文を唱える。すると、吸血コウモリの上にある空気の水分子を集め、水にすると三角柱に象る。そしてその水の気温を下げて氷に変えると、魔物に落とす。
先端の尖った氷は、吸血コウモリの肉体を貫いて地面に突き刺さる。
魔物は、まるで標本にされた昆虫のような状態になった。
「さすがシロウですわ。あっと言う間に魔物を倒すなんて! でも、変わった呪文ですわね。今まで聞いたことがありませんわ」
「まぁ、俺のオリジナルだからな」
身動きの取れなくなっている魔物を横切り、先を急ぐ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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