Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第一章

第四話 チーム赤いバラ、スライムには勝てなかったよ 後編

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 ~マリー視点~


「マリー様、マリー様。起きてください。一大事です」

 名前を呼ばれる声が聞こえ、ワタクシは目を覚ましました。

「レオ。それにエリナ。ワタクシはいったい?」

「俺たちは知らない間に眠っていました。そして目が覚めると知らないところにいたのです」

「知らないところ?」

 上体を起こし、周囲を伺います。ここはどうやら洞窟内の広いフロアになっているようです。ここにはいくつもの松明が置かれ、全体を明るく照らしております。

「ここはいったい、洞窟のどこなのでしょうか?」

『ようこそ、冒険者の諸君。ここは洞窟のもっとも深き場所。10階層だ』

「誰ですか!」

 声が聞こえ、ワタクシは声の主に尋ねます。ワタクシを庇うように2人が前に出ると、レオは剣を鞘から抜き、エリナは杖を構えました。

『俺か? 特に名前はない。ただの魔物の1体にすぎないよ』

「魔物だと!」

 声の主が魔物だと言うことを知り、レオは声を荒げました。

 人間に階級があるように、魔物にも階級が存在するのです。

 一般的なノーマル階級、エレメント階級、そして上位の階級であるナイト、バロン、ジェネラル、ストラテジスト、キング、クイーン、グレータ、エルダー、エンシェント、そしてロード。これらの階級が存在しています。

『そうだ。お前たちは俺が更に強くなるための餌になってもらったが、正直肩透かしだった。2文字で言うのなら、ザコだ。お前らの力は弱すぎる』
 
「何だと! もう1回言ってみろ! 俺たちはSランクのパーティーだぞ。それをザコ扱いしやがって! 隠れていないで姿を現せ!」

『いいだろう。力としての餌はいただいたが、身体のほうは満足していない。お前たちを食べてくれる』

 レオが勇敢に声を上げると、天井から緑色の液体が振ってきました。

「スライム!」

 ワタクシたちの前に現れたのはスライムでした。こいつが依頼されたスライムで間違いはないでしょう。向こうから来てくれたのは好都合。このまま倒して依頼を完了させますわ。

「レオ、エリナ! やってください」

 2人に指示を出し、ワタクシも鞭を握ります。

「食らいやがれ!」

 レオが剣を上段に構えると、渾身の一撃をスライムに与えました。ですが、ジェル状の身体が両断されることはなく、肉体に食い込む程度で終わったようです。

「そんな! 刃が通らない!」

「レオ離れて! ファイヤーボール」

 エリナがレオに離れるように言うと、魔法で火球を生み出して攻撃します。

 火球が直撃した瞬間、スライムは悲鳴を上げることなく、無言で燃えました。

『フフフ、やはりこの程度の実力か。せっかくの技がもったいない。では、余興はここまでとしよう』

 燃えながら、スライムは形を変えました。その姿はワタクシがよく知っている人物です。

「スライムが俺になった」

 そう、スライムはレオの形になったのです。

「変化の能力を持っているスライム! こいつはマネットライムだ!」

 レオがスライムの種族名を言います。

 マネットライムは、スライム界のストラテジスト。ストラテジストは軍師と言う意味を持ち、知能が高い魔物に与えられる階級なのです。

「まさかマネットライムだったとはな。だけど、Sランクとなった俺たちには丁度いいぐらいの相手だぜ! 食らえ、一閃突き」

 彼は勇敢に魔物に向って技を放ちました。

『では、こちらも、一閃突き!』

 レオの恰好をしたマネットライムが同じ技を使います。マネットライムは相手の技を真似するスライム。レオの技を使っても、何も不思議ではありません。所詮は真似事、本物の鍛え上げられた技には、勝てるはずがありませんわ。

「ガハッ!」

 そう思っていた瞬間、レオが吐血しました。

 魔物の速度が彼を上回っていたのです。その光景を見た瞬間、ワタクシは目を大きく見開きました。

 なにせ、一閃突きはレオの得意技。瞬く間に相手に近づき、貫くことができるもっとも早い剣技。

 肉体はジェル状であるため、肉体が貫かれることはなかったようですが、相当なダメージを受けています。

「エリナ……回復ポーションを」

「そんなの用意しているわけがないでしょう!」

 そうでした。ワタクシたちはまともな準備をしないで、この洞窟に来てしまいました。Sランクのワタクシたちであれば、スライムを簡単に倒すことができる。その思い上がりがあったせいで、今のようなことになっています。

 このままではレオがやられてしまう。

 そう思い、ワタクシは隠し持っていたポーションを取り出し、彼に飲ませることにしました。

「レオ。これを飲んでください」

「ありがとうございます……マリー様」

 小瓶の蓋を開けて中の液体を飲ませます。すると、その瞬間彼は立ち上がりました。

「ありがとうございます。お陰で助かりました」

「エリナ、撤退します。急いで逃げますわよ」

「わかりました!」

 このままではワタクシたちは全滅してしまう。そう判断したので、皆で逃げることにしました。

『逃がすか!』

「きゃ!」

 全速力で走っていたつもりですが、魔物が身体を伸ばして、ワタクシの足首を掴んだようです。バランスを崩し、その場で転倒してしまいます。

「痛い」

 手の平の皮が剥け、ケガしてしまいました。

「レオ! エリナ! 助けてください!」

 2人に声をかけ、彼らを見ます。

 レオにはポーションをあげました。きっと助けてくれます。

 彼らは1回振り返り、ワタクシの状況を把握します。ですが、2人は戻ってくることはなく、そのまま走り去って行きました。

「そんな!」

 まさかの行動に信じられなくなり、心臓の音が早くなるのを感じます。

『おやおや、仲間の2人は君を見捨てたようだね。まぁ、賢明な判断だ。助けようとするのなら、俺に殺されることになる』

 マネットライムが、ジェル状の肉体を引き摺りながらこちらにやってきます。

『さぁ、今からお前を食べるとしよう。まずはお前の着ている服を溶かし、裸体にした後に肉を溶かしてやる。自分の肉がなくなり、骨が剥き出しになった瞬間に叫ぶ声が、俺は好きだ』

 ワタクシはこれから死ぬ、死ぬ、死ぬ。死という言葉が頭の中で駆け巡り、恐怖で口角を上げてしまいます。

 死にたくない、死にたくない、死にたくない。どうしてワタクシがこんな目に遭わないといけないのですか。ワタクシはチームのリーダーとして、やるべきことをしただけだと言うのに。

『では、いただきまーす』

「いやー!」
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