全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜

仁徳

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第八章

第十七話 メイデスVSメリュジーナ後編

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~メリュジーナ視点~




 体の中から溢れ出すこれは魔力?

 メイデスのユニークスキルにより、奴隷化させられた人達からの攻撃を避けている中、わたしの体内に変化が起きていることに気付く。

 これまで以上に、魔力の回復速度が上昇している。今なら、元の姿に戻ることができるかもしれない。

 お願い神様、わたしにみんなを助ける力を与えて!

 心の中で叫んだその瞬間、わたしの体が光に包まれる。そして気が付くと目線が高くなっていた。

「ド、ドラゴンだ!」

 農民の1人が叫び、わたしは自身の体を見る。漆黒の鱗に長くて太い尻尾、そして妖精のような羽。間違いない。いつの間にか元の姿に戻れるまでの魔力を回復していたんだ。

 それもそうか。ご主人様マスターたちと冒険を初めて数ヶ月が経っている。普通に考えても、失った魔力は元通りになっているはずだ。

 どうして今までそのことに気付かなかったのだろう。わたしって本当に知力が足りていないな。

『怯むな! 戦え!』

「く、くそおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!」

 メイデスの命令に従い、農民たちが再び迫ってくる。しかし、わたしは羽を動かして上空に移動した。

 これなら彼らの攻撃が当たることはない。それに上空からなら、メイデスだけに攻撃を集中させることができる。

『アハハハハ! わたしはフェアリードラゴンのメリュジーナ! この姿を取り戻した以上、魔族など怖くない』

 メイデスに視線を送りつつ威嚇をする。

 これで少しでも彼女が萎縮してくれれば良い。焦りは冷静さを欠かせ、思考が鈍る。メイデスの隙を突き、一気に接近した後に噛みちぎる。

 あの女を殺せば、契約の効力を失うはずだ。

『奴隷ども、妾の側に来い! 肉壁となれ!』

 声を上げてメイデスが命令を下すと、農民たちが集まってくる。

 これでは、彼らにも危害を与えることになる。まずは彼らをメイデスから引き離さないと。

 えーと、えーと、何かいい方法がないかな?

 きっとご主人様マスターなら、この場の状況を一気に変える策を思いつくだろう。

 でも、ここには彼はいない。わたし1人の力でメイデスを倒す。

 思考を巡らせていると、前にご主人様マスターが話していたことを思い出した。

 そう言えば、前にご主人様マスターが話していたな『魔法やユニークスキルと言うのは、ある程度現象で説明できる。原理さえ分かって入れば、どんなに強力な魔法でも、対処方法はいくらでもある』と言っていた。

 メイデスの奴隷契約の原理っていったい何? どうやって思い通りに指示を送っているの?

 必死になって考える中、空中で羽ばたいて時間を稼ぐ。

『くそう! 上空に逃げるとは卑怯なやつだ。奴隷ども! 2人1組になって片方を上空へと――ろう!』

 メイデスが奴隷たちに何かを指示した。だが、彼らはなぜか支持には従わずに棒立ちしている。

 もしかして!

 頭の中に、ある仮定が浮かび上がる。

 もしかしたら間違っているかもしれない。だけど、もし合っていたのなら、メイデスが自害を命じても防ぐことができるかもしれない。

 ものは試しだ。

『何をやっている!早く――』

 このタイミング!

 メイデスが命令を下すタイミングで両翼を強く動かし、風を生み出す。

 すると、農民たちは何も行動に移さずに棒立ちしていた。

 やっぱりそうだ! 風で彼女の声から出る音を曲げて上げれば、命令を実行しない!

 おそらく彼女のユニークスキルは、声が届いた対象の脳に直接命令を下すもの。なら、声が届かないようにしてあげればいいんだ。

 音は、物体の振動によって生じる圧力波。そのことから物体の振動と言う媒体がなければ音は生まれない。そして空気中の粒子が伝達する方向へと衝突することで音は進む。

 よって、風で音の屈折を作ってやれば、声が耳に届くことはない。

『メイデスのユニークスキルを封じた! 自害をする心配はない! 早く逃げろ!』

「やった! みんな逃げろ!」

『何を勝手に行動しておる! お前たち――』

『だから好き勝手にはさせないって言っているだろう!』

 奴隷たちに命令を下そうとする彼女の言葉が聞こえた瞬間、羽を使って風を生み出し、音を曲げる。

 その間にも農民たちは安全圏へと逃げて行く。

『おのれ! よくも妾の奴隷どもを! こうなったら貴様を妾の奴隷にしてくれる! スレーブ――』

『わたしのご主人様マスターはテオだけだ! 誰がお前なんかに従うか! アイスウォール!』

 魔法を発動し、メイデスの周囲に氷の壁を作る。防御魔法は、使い方によっては相手を閉じ込める拘束魔法にもなり得る。

 予想外の魔法で彼女はユニークスキルの発動を中断させられたはず。このまま一気に終わらせるよ!

 素早く急降下をすると、そのまま氷ごと踏み潰す。

 足の間から割れた氷と一緒に赤い鮮血が噴き出した。

 ゆっくりと足を上げると、彼女は死んではいないが、まともに動ける状態ではないだろう。

『苦しいだろう。わたしは苦しんでいる相手を甚振るような趣味はない。わたしの炎で一瞬で葬って上げるよ』

 口から火炎を吐き、彼女にとどめを刺す。

 これで、メイデスは倒した。早くご主人様マスターのところに戻らないと、それにルナの方も心配だ。

 わたしは龍の体のままご主人様マスターのところに戻る。
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