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第八章

第十一話 魔王完全体計画

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~魔王視点~

 パペット人形型のモンスターであるパーぺとマーペに連れられ、我は洞窟の中を歩いている。

『この奥にカオスの研究所があるよ。カオスがアバン子爵に成り代わっていた時に使っていた屋敷の方は、人間たちが処分しているかもしれないからね。だからこっちに案内した』

 パーぺが洞窟の方に案内した理由を語るも、我にはよく分からぬ。だが、カオスが人間どもと戦い、敗れて住処を追い出されたのは想像がついた。

 カオスが敗れるとはな。この500年の間に、人間共も少しは骨があるやつが生まれるようになったのか。

 そんなことを思いつつも、先を歩く。すると開けた場所に出た。どうやらここは研究用の動物などを飼っている部屋のようだが、とにかく異臭がきつい。

 檻の中にいる動物の殆どが死んでおり、腐敗臭が強かった。

 カオスのやつ、動物の死体をそのまま放置しているのか? いや、もしかしたらゾンビ系のモンスターのを生み出す実験最中なのかもしれないな。

 まぁ、何にしても、とにかく今は1秒でも早くこの場から離れたい。

 足早に歩き、檻の空間から出て行くと、鉄製の扉があった。

『この先にカオスの研究の成果が書かれてある資料があるんだ』

 パーぺの説明を聞きながら扉を開ける。

 鉄製と言うこともあって扉は重かったが、どうにか開けることができた。

 人間の肉体とは不便なものだ。鉄製の扉を開けるだけでも一苦労するとは。

 扉を開けて中に入ると、数多くの本棚に本が収納されてある部屋に出た。

 机の上には資料と思われる紙の束が山積みにされており、学者の部屋を彷彿させる。

 しかし辺りを見渡しても、カオスの姿は見当たらない。

『カオスのやつがいないな』

『そ、そうですね。どこに行ったのでしょうか? あの男は?』

 ポツリと言葉を漏らすと、メイデスが顔色を青ざめさせた状態で、返答する。

 メイデスのやつ、我がパーぺに案内をさせてから顔色が優れないな。何か隠しているのか?

『メイデスよ。何か我に隠していることでもあるのか?』

『め、滅相もございません。妾が魔王に隠し事など』

『『クスクス、クスクス』』

 慌てた様子でメイデスが否定すると、パーぺとマーペが笑いを堪えているのが視界に入る。

 やはり我に何かを隠しているな。魔界の王である我に隠し事をするような者には死を与えるところではある。だが、こやつは我を復活させた功績がある。よって、今のところでは不問とするとするか。

『メイデスよ。貴様は我を復活させた功績がある。よって今のところは不問とし、裁きはせぬ。だが、もし大事なことを我に隠しているときは……分かっておるよな?』

『は、はい。分かっておられます。ですが、魔王様にとっては気にするほどでもないつまらぬこと。なので、敢えて報告を控えていました。魔王様の貴重なお時間を無駄に浪費させないためにも』

『そうか。メイデスがそこまで言うのであればつまらぬことだな。なら、我も気にする必要はない』

 メイデスから視線を外し、再び部屋を見渡す。

 さて、我の肉体を魔族にすることを可能にする資料はどこにある?

 近くにある紙に目を通してみるも、難しいことが書かれていると言うことしか分からない。

 シンプルに【人間の肉体を魔族に変える実験結果の資料集】と書かれてあれば、直ぐに分かるのだがな。

『パーぺ、マーペ、カオスの残した資料はどこにあるのですか?』

『はいはい。任せてくれ。マーペ、礼のものを持って来い』

『分かったよ、兄ちゃん』

 メイデスが資料を持って来るように促すと、マーペは資料の山の中から探し始める。

『はい、これだよ兄ちゃん』

『ご苦労……メイデス様、こちらが資料になります』

『なるほど、そうすれば良いのですね』

『メイデスよ、我にも教えろ、その紙には何と書かれてあった』

 紙に書かれてある内容が気になり、彼女に説明するように促す。

『人間を魔族に変えるには、魔族の細胞を人間の肉体に移植する必要があります。そうすれば、魔族の細胞が侵食を始め、魔族の体に変わると、これには書かれてあります』

『なるほど、魔族の細胞か。ではメイデスよ。早く貴様の細胞を我に移植せよ』

『魔王様! 今何とおっしゃいましたか!』

『だから貴様の細胞を我に寄越せ。これ以上は繰り返させるな』

『本当に妾の細胞で良いのですか?』

『くどい! 我は直ぐにハルトの生まれ変わりを倒さなければならない。他の魔族を探す時間が惜しいのだ』

『わ、分かりました。移植手術を行いますので、今から魔王様に睡眠魔法と麻痺魔法をかけます』

 我にデバフをかけると言い、少し困惑する。

『どうして我が状態異常にさせられなければならない!』

『落ち着いてください魔王様。あなた様の肉体は人間、起きている状態では激痛を感じてしまいます。最悪失神することになるかと』

 メイデスの説明を聞き、ようやく納得する。

 確かにこの肉体では耐えられないであろうな。玉座を殴っただけであれほどの痛みを感じてしまうほどだ。ここは彼女の指示に従うとしよう。

『分かった。ではやってくれ』

『畏まりました』

 メイデスにお願いをすると眠気が襲い、体の感覚がなくなってきた。

 今の我は簡単にも状態異常を受けるほどに弱い。だが、目が覚めれば我は魔族の王として相応しい肉体に生まれ変わる。

 今から目覚めるのが楽しみだ。
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