全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜

仁徳

文字の大きさ
上 下
105 / 122
第八章

第三話 お母さんと呼びなさい。ママやマミーでも可

しおりを挟む
 メイデスの時空転移魔法により、彼女に連れ去られたはずだった。しかし転移先にはメイデスがおらず、変わりに女王様らしき人物からの抱擁を受ける。

「お帰りなさい。私の可愛い坊や。こんなに大きく成長して母さんは嬉しいわ。見つけ出すのにここまで時間がかかってしまってごめんなさいね」

 女王様が抱きしめながら言葉を漏らすが、俺には現状が分かっておらず、困惑しかない。

「王子様! よくぞご無事でいてくれました!」

「これでこ国の後継問題も解決だ!」

「この国も安泰だぞ!」

 口々に兵士が喜びの声を上げる。

「女王様、久しぶりの再会で喜んでいるところを誠に申し訳ございませんが、王子様は現状が理解していない様子。ここは説明するのが先だと」

 どうするのが正解なのかが分からないでいると、大臣と思われる男性が女王様に声をかける。

「そ、そうでしたね。わたくしたら、嬉しくってつい。テオとそのお仲間様、わたくしに付いて来てください」

 抱擁を止めて踵を返すと、女王様は扉に向かって行く。

 俺たちはお互いに顔を見合わせ、頷くと彼女に続いて扉に向かって歩く。

 女王様が扉を開けて廊下を歩く中、周囲を見渡す。

 何でだろう。初めて訪れた場所にのはずなのに、不思議と懐かしい気がしてくる。

 この感覚、やっぱり俺はこの城で生まれ育った王子なのか?

「着きました。ここが宝物庫になります」

 女王様が扉を開けて中に入るように促す。

 宝物庫に入ると、中には多くの物が置かれてあった。

「何コレ! 数百年生きているけど、見たことがないものばかりだ!」

 宝物庫の中は、今まで見たことがないものばかりだった。しかし、見たことがないはずなのに、俺には分かる。

 掃除機、ガスコンロ、テレビ、マイク。どれもこれも手に取るように分かる。

「本当、まるで御伽話に出てくる魔道具みたい!」

「みたいではなく本物です。この中にあるのは、初代国王であるハルト様が異世界より持ってこられたものばかりです。伝説上では、全て魔道具扱いにされていますがね」

 ルナさんの言葉を聞き、女王様がくすりと笑いながら本物であることを告げる。しかし、もっと重要なことを俺が聞き逃さなかった。

 今、女王様は初代国王がハルトと言った。そして俺は、前世の記憶でハルトの知識や記憶の一部を知っている。

「テオ、これを使って火を出してください。疑ってはいないけれど、正真正銘のわたくしの息子なら、火を出すことできます」

 女王様がライターを持ち出すと、俺に手渡して使ってみるように促す。

 実物を見たのは初めてだ。確かに俺は使い方を知っている。

 手に持ちながら隅々まで観察するとあることに気付いた。

「女王様、悪いですが、火を出すことができません」

 火を出すことができないと告げる。すると女王様は目を細めた。

「ほう、火を出すことができないと言いますか」

 彼女の視線は睨み付けるものではない。何かを見守る暖かさの感じる視線だ。

「このライターはオイルライターですが、肝心のオイルが入っていません。オイルがなければ、発火石であるフリントを回転式のヤスリと擦り合わせても、火花は出ますが、燃料に着火させて火を出すことができません」

 どうしてライターが使えないのか、その原理を答える。すると女王様は暖かい笑みを浮かべながら、手を叩く。

「素晴らしいわ。正解よ。やっぱりあなたは、伝説の転生者物語の元となったハルト様の生まれ変わりである、正真正銘のわたくしの息子だわ。」

「テオ君が転生者物語に出てくる転生者の子孫」

ご主人様マスターがそんなに凄い人物だったなんて」

 やっぱり、俺はこの城の生まれだったんだ。でも、そうなると新たな疑問が生まれてくる。

「あのう女王様」

「お母さん」

「はい?」

「わたくしのことはお母さんと言いなさい。ママでも良いです」

「いやいやいや、そんな訳には!」

 首を左右に振って遠慮する。

 さすがに今日出会ったばかりの人を母と呼ぶのには抵抗がある。

「それじゃあ、妥協してマミーで」

「全然妥協していないではないですか! ただ呼び方を変えただけで意味は同じじゃないですか!」

 相手がこの国を統べる女王であることを忘れ、ノリツッコミを入れる。

「テオ君、せっかくだから女王様のことをお母さんって呼んであげれば?」

「そうだよ。せっかく血の繋がった親と再会したのだから」

 彼女たちは女王様の肩を持ち始める。

「いや、それはちょっと……それよりも教えてくれませんか。どうして俺は、赤子の時に橋の下に捨てられていたのかを」

 呼び方で話しが脱線してしまったが、今1番知るべきことがある。どうして俺は生まれた後に、イルムガルドが収めているあの町に捨てられていたのか、その理由を知る権利がある。

「教えてください。どうして俺は、この国から離れた場所に捨てられていたのですか!」

「嫌です」

 もう一度訊ねると、女王様は笑みを浮かべながら拒否する。

「どうして教えてくれないのですか? 俺が知ってしまうと困ることでも?」

「いいえ、わたくしのことを母と読んでくれないからです。さぁ、わたくしを母さん、若しくはママ、マミーでも可です。呼んでくだされば、わたくしは話して差し上げます」

 捨てられた理由を人質に取られ、歯を食い縛る。

 女王様を母さんと呼ぶのは抵抗がある。だけど、ここで彼女を満足させないと、平行線のままだ。

 真実を知るためには、自分の恥ずかしい気持ちを抑える必要がある。

「わ、分かった。俺はどうして橋の下で捨てられていたのかを知りたい。だから話してください。母さん」
しおりを挟む
script?guid=on
感想 97

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...