全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜

仁徳

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第七章

第十四話 お前だけは許さない

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 ~テオ視点~



 魔族へと強制的に姿を変えられたストライクを倒し、その亡骸を見つめる。

 彼は最後に礼のようなものを言おうとしていた、彼なりにカオスに対抗していたのだろう。

 ストライクを手駒のように扱った魔族の男に視線を向ける。

『やはり下等生物の人間では、いくら魔族になってもこの程度か。まぁ、それはそれで良いデータが取れた』

 人間を下等生物だと吐き捨て、まるでゴミを見るような目で死体を見つめるカオスの姿を見て、拳を強く握り締める。

「カオス! お前だけは絶対に許さない! 人間や動物、この世に生きる全てをまるで自分の道具のように扱うお前だけは!」

 声を荒げ、カオスを睨み付ける。するとやつはニヤッと口角を上げた。

『この私を許さない? 仲間を殺された時の人間の常套句だな。まぁ、最初から許してもらおうとは思っていないが。ストライクも死んでしまったことだし、面倒臭いが、私自らお前たちを葬ってくれる。感謝するんだな』

 口角を上げたまま余裕の表情で俺たちに視線を向けてくる。

 ストライクの件で怒りが湧き上がってきてはいるが、ここで無策にも突っ込む訳にはいかない。カオスが余裕の態度をみせると言うことは、何かしらの策があるからだ。

 余裕でいられる原因となるものを見極めないと、逆に返り討ちにされるリスクがある。

ご主人様マスターの手をわずわらせるまでもない。食らえ!」

 メリュジーナが飛び出すと、妖精の羽を羽ばたかせて上空に舞い上がる。そして口を窄ませて息を吸い、火炎を吐き出す。

『ぐあああああああぁぁぁぁぁ!』

 火炎が直撃し、炎の中からカオスの悲鳴が聞こえてきた。暫くの間火だるまとなっていたが、やつは魔法を発動したようで上空から滝のように水が降り注ぎ、鎮火させていく。

 水蒸気が辺りに舞い、炎に燃やされていたカオスの状態が分かるようになる。

 熱によって体の細胞が死に、至るところで火傷を負っていた。髪もチリチリとなり、焦げ臭い匂いを漂わせている。

「なんだ。思っていたのよりも強くないね。これなら、わたし1人でも倒せそうだよ。ご主人様マスターは念のためにルナの側にいて。わたしがこいつをあの世に送ってあげるから」

 負傷しているカオスの容態を見て、メリュジーナは勝利を確信している。

 でも、俺には違和感があった。先程の余裕な笑みの正体が気になる。てっきりどんな攻撃も受け付けない、無敵の魔法でも使ってくるのかと思っていたからだ。

 けれど実際には、攻撃を受けてカオス自身は苦しんでいる。

 これはいったいどういうことなんだ?

 考えすぎと言うこともある。もしかしたら答えはシンプルなものなのかもしれない。

 でも、様々なパターンに対応しようと考えると、色々な憶測が頭の中に浮かび上がってしまう。

 もう少し、憶測を絞り込むことができれば良いのだけど。

『はぁ、はぁ、はぁ。ま、まさかドラゴンが紛れ込んでいたとは計算外だった。驚いて避けるタイミングを失ってしまったな。でも、私には通用しないぞ』

「負け惜しみだね。その状態でどうやって戦うって言うんだ」

 勝ちを確信しているのか、メリュジーナはニヤリと笑みを浮かべる。

『そんなもの、元に戻せば良いだけの話しだ』

 カオスが片手を上空に上げる。すると空中に杖が現れ、彼は掴んだ。その瞬間、カオスの肉体が回復を始める。火傷は治り、炎で縮れた髪までもが火炎を受ける前の状態へと戻る。

「そんな! なんて回復力なんだ!」

 ダメージを受ける前の状態まで、肉体が治る光景を目の当たりにしたメリュジーナが、驚きの声を上げる。

 確かに異常な回復力だ。まるで俺のネイチャーヒーリング並みの回復力。でも、何かがおかしい。

 まだ違和感を覚える段階でしかないが、通常の回復魔法とはどこかが違うような気がした。

『さぁ、続きを始めようか。私を倒すことは不可能だということを、君たちの心に刻みこんであげる』

 余裕な笑みを浮かべたまま、カオスが構える。

 まずはあの異常な回復力の正体を見極めることが先だ。先程感じた違和感の正体さえ掴むことができれば、やつの勝ち誇ったような態度を変えることができる。

『さぁ、好きなだけ打ち込んでくるが良い』

「そうか。なら遠慮なくそうさせてもらう。グラビティープラス! 5倍」

 敵が避けることができないように重力の魔法を使い、高速を試みる。

 五倍の重力がカオスにのし掛かり、男はその場で這いつくばる。

『ガハッ!』

 思いっきり顔面を地面に叩きつけ、顔から血が流れた。

 だが、その瞬間俺の魔法はなぜか消えてしまい、男は平然と立ち上がる。

「そんな! ご主人様マスターの魔法が簡単に解除されるなんて!」

 自分の手を見ながら、俺は更に違和感を覚える。

 おかしい。この魔法は、使用者以外は解除できないはずだぞ。重力が五倍になった状態でも耐えた? いや、それでも体に相当な負担を感じるはず。あんな風に平然と立っていられるはずがない。

 やっぱり、やつの不死身に近いカラクリの正体を見付けなければ、ただのイタチごっこになってしまう。

 きっと何かあるはずだ。この戦況を大きく変えるきっかけが。

 思考を巡らせながらカオスを見る。やつの顔を見たその瞬間、大きく目を見開いた。

 やつの顔には、答えが書かれてあるも同然の状態となっていたのだ。

「分かったぞ! お前の異常な回復力の正体が!」
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