全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜

仁徳

文字の大きさ
上 下
98 / 122
第七章

第十二話 どうしてこうなったのかを教えよう

しおりを挟む
~テオ視点~




 ストライクに見せかけていたメリュジーナがこちらに来ると、俺は認識阻害の魔法を解く。

「テオ君!」

 その瞬間、隣に居る人物が俺であることに気付き、ルナさんが抱き付いてくる。

 久しぶりの再会で嬉しいのは分かる。だけど、そんなに引っ付かれると、胸が当たってそっちに意識が向いてしまいそうだ。

 シリアスのシーンなので煩悩を振り払い、アバン子爵たちを見る。

「お前、本物のストライクをどこに隠した!」

 アバン家の闇を暴露され、怒りに顔を歪ませているアバン子爵が指を向け、息子の所在を訊ねてくる。

「ストライクなら、この屋敷の物置きに閉じ込めているよ。ついでに暫く目を覚さないように睡眠魔法を使っている。けれど、そろそろ効力がなくなって目覚めている頃かもしれないな」

 彼の質問に答えると、さらにアバン子爵は怒りで頬を吊り上げた。

「どうして我がアバン家の裏の仕事を知っている。お前に漏らしてしまったことは、動物をモンスターに変え、それを販売していることだけだぞ。魔族に渡していることは一言も言っていない!」

「それはそうだよ。だって開示されていない情報は、俺がこの屋敷内に来て潜入していたときから調べていたんだから」

「何だと!」

 既に屋敷内におり、事前に調べていたことを話すと、アバン子爵は驚愕する。

「俺がこの屋敷に来たとき、認識阻害の魔法を使った。これにより、お前たちは俺の都合の良い人間に見えるようにしていたのさ。時には使用人、またある時にはストライクやアバン子爵に見えるようにした。そのお陰で部屋に侵入するのは楽だったぞ。合鍵を手に入れることだってできた」

「くそう! どうして屋敷に辿り着くことができた! この島には方向感覚を狂わせる結界が張っていたんだぞ! 辿り着くことなど不可能だ!」

 怒りの形相でアバン子爵が声を上げる。

 なるほど、あの森には方向感覚を狂わせる結界があったのか。

 脳内にある嗅内皮質には、帰巣シグナルが発信されている。人は目的地に到達するには、まず自分の向いている方向と、移動すべき方向を知らないといけない。

 哺乳類には頭方位細胞と呼ばれる神経細胞があり、この細胞は現在面している方角のシグナルを送り、人が方角を知る手助けをしている。

 このシグナルの質によって、方向が理解できるのかに差が生まれるのだが、結界内に入るとこれらのバランスが崩れてしまうって訳か。

ご主人様マスター、結界内に入っただけで簡単に方向音痴になるものなの?」

 突然メリュジーナが訊ねてくる。

 先ほど心の中で呟いたことをそのまま口に出したところで、彼女が理解できる訳がないよな。

「えーとだな、結界内に入ると、脳から分泌される物質が少なくなるんだ。それによって身体と脳にズレが生じてしまう。そのせいで方向音痴でなくとも、信じられないほどの方向音痴にさせられてしまうって訳だ」

「なるほど、方向音痴にする結界か。何だかダサいね」

「そこの女! 私の研究の成果をダサいと言いやがって!」

 俺が分かりやすく簡単に説明した結果、彼の結界が彼女にとってダサい認定をされてしまった。

 でも、これって結構凄い結界なのだけどな。マーペとパーぺを繋ぐ魔力線がなければ、俺も森の中を彷徨っていたかもしれない。

 まぁ、この件に関しては隠し通していても良いだろう。変にパペット人形の存在を口走ってしまうのも良くない。

 そう言えば、屋敷を調べている最中にマーペの姿が消えたな。もしかしたらパーぺと合流しているかもしれない。

 俺たちが対峙している間に何か仕掛けてくるかもしれないことを考慮すると、油断できない状況下だ。

 それにメイデスがこちらに向かっている以上、ルナさんの安全が保証された訳ではない。

「お前の結界は凄かったぞ。でも、俺の方が一枚上手だったな。残念ながら俺には通用しなかった」

 相手を褒めつつも自分が上であることをアピールする。

 こうすれば、ズタズタにされた彼のプライドの少しは回復するだろう。

「アバン子爵、あの男が言っていたことは本当なのですか!」

「うるさい! お前は黙っていろ!」

 グレイ男爵がアバン子爵に真相を問うと、頭に血が昇っていた彼は、ルナさんの父親を突き飛ばす。

「お父様!」

 ルナさんが俺から離れて父親の元に駆け寄ろうとする。だが、俺は彼女の手を握って阻止した。そして目で訴えて首を横に振る。

 彼女の気持ちは分かる。でも、今あちら側に行かせる訳にはいかない。

 何だか嫌な予感がしてきた。

「くそう! くそう! くそう! お前のせいで、私の計画が台無しではないか! こうなったら、この場にいる全員を殺して、私のおこないは闇に葬ったままにしてやる! 目覚めろ! ストライク!」

 アバン子爵が声を上げたその瞬間、屋敷の一部の天井部分が吹き飛んだ。

 あの場所は俺がストライクを連れ込んだ場所。

 吹き飛んだ屋根のところから、本物のストライクが飛び出し、そのまま屋根の上に着地する。

 外見はストライクそのものだが、肌の色が鼠色に変色しており、眼球も黒い。魔族を連想させる容姿となっていた。

『ちち……うえ……これは……いったい? 僕の体に……何が……起きているのですか?』

 どうやら彼自身も自分の身に起きていることが理解できていないみたいだ。

「ストライクよ。お前には私の細胞を移植させていた。それにより徐々に人間の細胞を食べ、代わりに魔族の細胞へと生まれ変わる。お前はこれより魔族と生まれ変わったのだ」

「何だと!」

 アバン子爵の言葉に驚く。彼の細胞を移植した結果、ストライクが魔族になった。つまり、アバン子爵の正体は魔族!

「アバン子爵、お前、魔族だったのか!」

「貴族ごっこはもうお終いだ! アバン子爵なんて人物は数年前に既に死んでいる! 私が殺したからな!」

 アバン子爵に成り代わっていた男が指をパチンと鳴らす。その瞬間やつの姿が変わっていく。

 ストライクと同じように肌の色が代わり、眼球も黒く染まる。

『私の名はカオス。その名の通り、この世界に混沌を齎そうと考えている魔族さ』
しおりを挟む
script?guid=on
感想 97

あなたにおすすめの小説

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...