全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜

仁徳

文字の大きさ
上 下
93 / 122
第七章

第七話 見つけたよルナ!

しおりを挟む
~メリュジーナ視点~



 ご主人様マスターと別行動を取ったわたしは、外周からルナを探そうとして庭を歩いている。

「それにしても大きな建物だよね。どうして地位の高い人間は、大きな建物に住みたくなるのだろう」

 ポツリと言葉を漏らしながら歩いていると、一階の部屋の中に人影が見えた。

 もしかしてルナだろうか? いや、そんな訳ないようね。ルナは攫われたんだ。普通に考えて、外部から簡単に発見できるところにいるはずがない。

 首を左右に振って一度頭に浮かんだことを否定すると、人影が見えた部屋の扉が開かれ、赤い髪の女性が窓から外の様子を窺う。

 ルナ!

 モテの王道であるクラシカルストレートの髪型に豊満な胸、まつ毛も長く、二重瞼になっているところはどう見てもルナだった。

 間違いない。ルナ本人だ。

 一瞬影武者のような偽物かと思ったが、鼻腔から入ってくる彼女の匂いは、これまで一緒に旅をしたルナ本人のもの。

 まさか簡単に見つかるとは思っていなかっただけに、呆気に取られてしまう。

「ル……」

 声をかけようとした瞬間、ルナがわたしの方を見た。そして敵を見るような眼差しで、視線を送ってくる。

「見張らなくったって、私はこの部屋から脱走したりしないんだからね! 分かったのなら早く私の視界から居なくなって!」

 彼女が言葉を放った瞬間、わたしは大きく目を見開く。心臓の鼓動が激しくなり、頭の中が真っ白になった。

 そうだった。今はご主人様マスターの認識阻害の魔法で、この屋敷の使用人に見えるようになっている。当然その影響を受けるのはルナもだ。

 彼女から敵意を向けられていると、心がとても痛んだ。

 魔法の影響でルナから拒絶の言葉を投げられたからではない。この屋敷に囚われてからの彼女の生活を想像してしまったからだ。

 ルナの態度からして、この屋敷での生活は良いものではなかったのだろう。きっと味方になってくれる人もいなかった。だから使用人に対しても、あんなに冷たい態度を取ってしまったのだろう。

「ルナ、わたしは……」

 思わず自分の正体を明かそうとして言葉に詰まる。

 ルナの目尻から、じわりと涙の雫が流れているのが見えたからだ。

 踵を返してその場を離れる。

 ここで本当は使用人ではなく、メリュジーナであることを明かしても、彼女は信じてはくれないかもしれない。

 仮に半信半疑で信じてくれたとしても、その証拠を見せろと言われては手の打ち用がない。

 ただの変装なら姿を見せることはできるが、今の彼女は魔法の影響で幻覚を見ているようなもの。魔法の使用者ではないわたしは、効果を消し去ることはできない。

 とりあえずは、ルナの居場所を特定できただけでも良しとしよう。

 その場を離れ、玄関側に戻ると扉を開けて中に入る。

 これ以上わたしができることはないだろう。一度ご主人様マスターと合流してから彼の指示に従った方が良い。

 勝手に動いた結果、ご主人様マスターの意図していないことが起きて、作戦がメチャクチャになるのだけは避けたいからね。

 廊下を歩きながらご主人様マスターを探す。

 この屋敷の使用人は、女性はメイド服、男性はスーツ姿で働いているから、一番に目立つ。

 主を探していると、廊下の角から黒い短髪の男性が出てきた。ご主人様マスターだ。

ご主人様マスター!」

「メリュジーナじゃないか。どうだ? 何か分かったことはあるか?」

「ルナの居場所が分かったよ」

「メリュジーナ、ナイス。それで、ルナさんはどこにいる」

「こっちだよ。付いて来て」

 外から見た建物の場所を思い出しながら歩き、目的地に向かって行く。すると扉の前にメイドさんが待機していた。

「あのメイドさんの前にあるあの扉の向こうが、ルナが居た部屋だよ」

「あそこにルナさんが……よし、まずは確認するか」

 ご主人様マスターがルナのいる部屋に近付く。わたしも彼に付いて行った。

「すみません、俺たち新しくこの屋敷で働くことになったものですが、旦那様にまだ挨拶をしていません。なのでご挨拶に来ました」

 言葉を連ねながら、ご主人様マスターが扉のドアノブに手を置く。

「待ってください! そこは旦那様の部屋ではなく、来客のルナお嬢様のお部屋です。旦那様の部屋はこの部屋を真っ直ぐに行って、突き当たりを右に曲がったところにある部屋です」

「あ、そうでしたか。それは大変失礼しました。では、俺たちはこの辺で」

 メイドさんに軽く会釈をすると、ご主人様マスターが教えてもらった方に歩き出す。少し反応が遅れてしまったが、わたしも彼に付いて行く。

「どうしてあそこで引き下がったのさ、ご主人様マスターならあのメイドさんを丸め込んで、あの場から引き離すこともできたはずなのに」

「まぁ、まだ直ぐに行動に出る訳にはいかない。取り敢えず俺の方で種を仕込んできたから、今から作戦を伝える。メリュジーナは俺の指示通りに動いてくれないか?」

「分かった。それで、わたしは何をすれば良いの?」

 今後の行動に付いて訊ねると、彼は顔を近付ける。そして誰かに聞こえないように、小声で話しかけてきた。

 ご主人様マスターが耳元で囁き、吐息のようなものがかかってくるので、くすぐったい気持ちになってしまう。

 今はルナが捕まって大変な時なんだ。吐息が当たっただけでゾクゾクしてしまうような不謹慎な考えをするのはそう。

「分かった。なら明日、そのように動くから」
しおりを挟む
script?guid=on
感想 97

あなたにおすすめの小説

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...