全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜

仁徳

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第七章

第三話 アバン子爵の息子、屈辱を受ける

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 アバン子爵の別邸のある小島に辿り着いた俺たちは、アバン子爵の関係者たちから手荒い歓迎を受けた。

 次々に飛んで来る魔法を躱し、砂浜に着地すると男が声を上げる。

「お前たち、一体何者だ! ここが我らアバン子爵の保有する島だと分かっての侵入か!」

 男は赤い短髪に青い瞳をしており、顔立ちの整ったイケメンだ。首にはネックレス、指には指輪と言った高価な装飾品を身に付けている。

 もしかして、この男がアバン子爵の息子か。

「もう一度問うぞ。お前たちは何者だ? 五秒以内に答えなければ敵と見做して排除する」

 アバン子爵の息子と思われる男がこちらに指を差し、答えるように要求してくる。

 五秒も時間をくれるなんて余裕だな。それだけあれば、俺が魔法を使ってこの場にいる彼らを一瞬で行動不能にすることなんてできるのに。

ご主人様マスター、こいつらは時間以内に答えなければ排除するって言っているけど、わたしたちが近付いただけで攻撃をしてきた。最初からわたしたちのことを敵扱いしているよ。だからわたしがこいつらを逆に排除しても良い?」

「それはダメだ。メリュジーナだと手加減できないだろう。モンスター相手ならともかく、人間相手では命を奪う危険性もある」

「お前たち! 何をこそこそと話し合っている! 今から五秒数えるからな!1、2、3――」

 まだ彼がカウントダウンを始めていなかったので、俺たちは話し合っていた。しかし男がカウントし始めた以上は、呑気に話し合っている場合ではない。

 素直に話したところで信じてくれる保証はないだろうし、ここは落ち着いて話し合いができる環境作りから始めた方が良さそうだな。

「4、5! 五秒経ったぞ! 何も答えない以上、お前たちは敵だ。これより――」

「スリープ!」

「お前……たち……を……あれ? なんだか……眠く」

 アバン子爵の関係者たち全員に睡眠魔法を放ち、脳内に睡眠物質を増幅させる。それにより脳が眠るように指示を出し、彼らは眠ってしまった。

「これでよし。取り敢えずは抵抗しないようにするか。リストレイント」

 続けて拘束魔法を唱える。

 これは氷の拘束魔法であるシャクルアイスとはまた違った魔法だ。始めて使ってみたが、果たしてどんな感じで身動きを封じるのだろうか?

 魔法が発動し、アバン子爵の関係者たちが次々と拘束される。

 しかしその光景を見た瞬間、思わず顔を引き攣ってしまう。

ご主人様マスター、いくらなんでもこれはどうかと思うよ」

「すまない。俺も始めて使った魔法だからこんなにたくさんの種類があるとは思わなかった。こんなことになるなんて、さすがの俺でも予想できなかったよ」

 拘束魔法により、アバン子爵の関係者たちは全員拘束することに成功した。しかし捉える方法が問題だったのだ。

 縄で手足を縛っていたり、網で捉えられたり、鉄の牢のようなものに入れられている者はまだマシだ。しかし、アバン子爵の息子と思われる男は、亀甲縛りをされており、口には猿轡さるぐつわを噛まされている。

 まさかこんなにバライティ豊富だとは思わなかった。もしかしたらこの魔法は、ランダムで発動するのかもしれないな。

「んん! んんん! ん~んん!」

 どうしようかと悩んでいると、アバン子爵の息子だと思われる男が目を覚ましたようで、声を上げた。しかし猿轡があるせいで何を言っているのかが分からない。

 なんだか可哀想だし、猿轡くらいはとってやるか。

 男に近づき、彼の口を拘束している猿轡を取り外す。

「おのれ! 子爵の息子であるこの僕に、なんてことをしてくれるんだ!」

「悪いな。俺たちは元々から対話をするつもりだったのだが、お前が攻撃的だったから抵抗できないようにさせてもらった」

「だからと言って、どうして僕だけこんな辱めを受けるようなことをする!」

「それはすまないと思っている。あの魔法はランダムなんだ。運が悪かったと思ってくれ」

「絶対に許さない! 僕は子爵の息子なんだぞ! 貴族に対してこんなことをする愚民は粛清だ! 貴族の力を思い知れ! うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 アバン子爵の息子が声を上げると、彼の肉体が異常に膨れ上がる。すると、抑えきれなくなった縄が千切れ、拘束魔法は効力を失った。

 筋肉増強系の魔法か? いや、無詠唱であったとしても、魔法名を口に出していない。でも、だからと言ってアイテムの類いを使った形跡は見当たらない。

 もしかして時間差で発動する魔法を事前に使っていたのか。

「クハハハハ! どうだ! この鍛え上げられた筋肉を! 僕は強い! 最強だ!」

 確かに今の彼は攻撃力も防御力も上がっていそうだな。まぁ、筋肉量が増えただけなら、サルコペニアを使って筋肉の量を激減させれば良いだけの話だ。やつの筋肉が元通りになったところでぶん殴れば、大人しくなるだろう。

「サルコペニア!」

 魔法を発動してアバン子爵の息子の体を弱体化させる。筋肉の元となる筋タンパク質の分解が、筋タンパク質の合成を上回せる。それにより筋肉の量を減少させた。

 魔法の影響を受け、先ほどまで膨れ上がった筋肉が萎んでいく。

「そんなバカな! 僕の筋肉が!」

「そんなに筋肉が欲しいなら、魔法に頼らずに自分で鍛えれば良いだろうが! エンハンスドボディー」

 強化魔法を使い、脳のリミッターを外して一時的に限界に近い力を引き出す。

 アバン子爵の息子に拳を叩き込むと、彼は吹き飛ばされて砂浜を転がって行く。

 まぁ、俺も魔法に頼ってはいるが、この魔法は本来制御されている眠った力を引き出す魔法だからな。つまり、俺自身の力と言っても間違いはないだろう。

「ゴホッ、ゴホッ、ガハッ」

 ダメージを受け、苦しそうにしている男に近付く。あそこまで苦しんでいれば、もう抵抗しようとする気なんて起きないだろう。

「お前、アバン子爵の息子と言ったな」

「ああ、僕の名はストライク・アバンだ。お前は……いったい何者なんだ?」

「魔族から仲間を守りに来たただの旅人だ。お前……ルナさんのことはどう思っている?」

「ルナ? ああ、一応僕の婚約者とかなっているあの女か。別にあんな女のことなどどうでも良い。父上が決めた婚約である以上は、形的には彼女と婚約はする。だが、その後は愛人扱いだろうな。聞いた話しだと、僕との婚約が嫌で逃げ出し、世界を旅していたとか言うではないか。そんな女性らしくない女なんか願い下げだね。まぁ、欲求が溜まった時くらいは処理役として使って上げても……ぶへぇ!」

 男の言葉をこれ以上聞きたくなかったので、彼の顔面を殴る。すると強化された肉体による影響か、彼の顔は歪み、殆どの歯が折れたり外れたりしていた。

「よ……よくもぼきゅにこんなひふちをしてくれひゃな。ゆ、ゆるひゃない」

 歯がなくなっているので何て発音しているのか分からない。しかし、俺に対して憎悪の目を向けていることは分かった。

 彼が腕を震えさせながら指をパチンと鳴らした瞬間、彼らが乗っていた船が爆発したかと思うと、爆炎の中からモンスターが現れた。

 羊のような角を持ち、モフモフの毛に包まれている。顔はどちらかと言うと犬に近く、鋭い牙や爪があった。

「きゃふぱーふ、あいふらをたほふんだ」
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