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第七章
第一話 鏡越しのメイデス
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~テオ視点~
ルナさんに化けたマネットライムを倒した俺は、メリュジーナを拘束している鎖を外す。
「ありがとうご主人様。わたしとしたことが油断していた。ルナを守れなくって済まない」
「いや、こうなることを予測できなかった俺の落ち度でもある。メリュジーナが気にすることはない」
拘束から逃れて自由を取り戻すと、メリュジーナはスライムの残骸に視線を向ける。
「それにしても、ご主人様が言った通りに精巧に化けていたね。マネットライムが自らスライムの体になるまでは、気付かなかった。でも、どうしてあんなに本人そっくりに化けることができたのかが不思議だよ」
「あれは、あのモンスター独特のものだからな。マネットライムは、身体の一部を蚊の針と同じ構造に変化できるんだ。これにより、80ミクロンサイズの針で肉体を刺して神経に侵入。そして脳に移動すると記憶を司る海馬から、記憶や遺伝子情報を己の核にインプットさせることができる。それにより、情報を奪ったものに変身することができるってわけだ」
「そんな作りになっていたんだね。数百年生きているけど、マネットライムのことは何ひとつ知らなかったよ。さすがご主人様だね」
「いや、メリュジーナはあの国から出たことがないのだから、知らなくて当たり前だ」
マネットライムは基本的には俺たちが生まれ育った国には生息していないスライム。だから知らなくて当たり前だ。
とにかく、いち早くルナさんを助けに行かないと。
マネットライムはグレイ当主にルナさんを引き渡したと言っていた。グレイ当主は魔物と繋がっていることになる。
敵の狙いが何なのかは分からないが、魔物と繋がっていることが分かった以上は、グレイ当主も危険人物扱いだ。一刻も早く、ルナさんを助けに行かなければ。
でも、グレイ家当主は今どこにいる? マネットライムから教えてもらった情報は、ルナさんは彼のもとに居ると言うことだけ。正確な居場所までは教えてもらっていない。
うん? この気配は?
今後の行動について思考を巡らせていると、どこからかモンスターの気配を感じた。
「そこか! ファイヤーボール!」
魔法を発動して火球を生み出し、気配を感じた場所に放つ。
すると、隠れていたモンスターが飛び出してきた。
「鏡の……モンスター?」
中央は鏡であり、フレーム部分は骨で作られているモンスターだ。見ていて禍々しいものを感じる。
飛び出してきたモンスターは、攻撃をしてこようとする気配を感じさせない。
「ご主人様、このモンスター」
「ああ、どうやら連絡用のモンスターのようだな」
念のために構えた状態で警戒を緩めないようにしていると、鏡の中から一人の女性が映り出す。
彼女は口を開き、その動きに合わせて声が伝わってきた。
『妾の名は、メイデス』
「あ、これはどうもご丁寧に、メイさん」
『妾の名はメイではなくメイデス!』
ご丁寧にも自己紹介から始めてくれたので、こちらも謙って丁寧に答えたのにも関わらず、鏡越しの女性はいきなり怒り出す。
「あのう。さっきから何で自分の名前を連呼しているのですか? 2回言われなくとも分かっていますよ。もしかして発音が悪かったですか?」
『ふざけるな! 【メイです】ではなく【メイデス】だ! デスまでが名前! ちゃんと妾の発音を聞かぬか!』
「何! メイデスだと!」
鏡越しの女性が、マーぺたちに龍玉を奪わせた張本人であることに気付き、警戒する。
『顔付きが変わったな。どうやらようやく理解したと思える』
『あ、やっぱりメイデス様だ! お久しぶりです』
突然パーぺの声が聞こえ、そちらに顔を向ける。すると、鳥籠の中に入っているパーぺが鳥籠を押して転がしながらこちらにやってきた。
その姿はまるで、回し車の中で走って運動をするネズミのように見えた。
そう言えば、港町に放置していたな。あいつ、いつの間に籠を倒して転がす技術を身につけやがったんだ。
『って、どうして急にグルグル回るのさ! 僕はメイデス様のところに行きたいのに!』
途中までこちらに向けて真っ直ぐに進んでいたが、途中で重心が変わってしまったようだ。いくら走っても同じところをグルグルと回るだけで、1ミリも進む気配がない。
微笑ましい光景ではあるが、今はマーペに構っている暇はない。
とりあえずは、あのアホモンスターは無視して話しを進めるとするか。
「メイデス! グレイ当主はどこに居る。答えろ!」
鏡越しの彼女を睨み付け、グレイ当主の居場所を問い詰める。
『その目、確かにハルトと似ておる。マネットライムの報告通りにハルトの生まれか代わりなのだろう。妾はこの時が来るのを待っていた』
「話しを逸らすな! 俺の質問に答えろ!」
話しをすり替えようとするメイデスに向けて声を上げ、強引に話題を引き戻す。
『少しくらい前置きがあっても良かろうに。女のピンチに駆け付けようとするその姿勢も、ハルトに似ておる。まぁ、良いだろう。攫われたピンチ姫は、アバン子爵の別邸にいる。だが、それも時間の問題よな』
「どう言うことだ」
『もう少し、お前の実力と言うものを知りたい。なのでそのルナとか言う女を、妾が攫うことにした』
「それはいったいどう言うことだ! マネットライムがグレイ当主と繋がっていた以上、誘拐もお前の仕業ではないのか!」
『マネットライムがグレイ当主に引き渡しのは妾の指示ではない、あやつが勝手にしたことだ。あやつなりに別の思惑があったのかもしれないな。それじゃ、通信はここまでとしよう。どちらがピンチ姫を救出することができるのか楽しみじゃな』
鏡に映し出された女性が消えると、鏡のモンスターはこの場から走り去って行く。
早く、アバン子爵の別邸に向かわないと。ルナさんがまた攫われることになる。
ルナさんに化けたマネットライムを倒した俺は、メリュジーナを拘束している鎖を外す。
「ありがとうご主人様。わたしとしたことが油断していた。ルナを守れなくって済まない」
「いや、こうなることを予測できなかった俺の落ち度でもある。メリュジーナが気にすることはない」
拘束から逃れて自由を取り戻すと、メリュジーナはスライムの残骸に視線を向ける。
「それにしても、ご主人様が言った通りに精巧に化けていたね。マネットライムが自らスライムの体になるまでは、気付かなかった。でも、どうしてあんなに本人そっくりに化けることができたのかが不思議だよ」
「あれは、あのモンスター独特のものだからな。マネットライムは、身体の一部を蚊の針と同じ構造に変化できるんだ。これにより、80ミクロンサイズの針で肉体を刺して神経に侵入。そして脳に移動すると記憶を司る海馬から、記憶や遺伝子情報を己の核にインプットさせることができる。それにより、情報を奪ったものに変身することができるってわけだ」
「そんな作りになっていたんだね。数百年生きているけど、マネットライムのことは何ひとつ知らなかったよ。さすがご主人様だね」
「いや、メリュジーナはあの国から出たことがないのだから、知らなくて当たり前だ」
マネットライムは基本的には俺たちが生まれ育った国には生息していないスライム。だから知らなくて当たり前だ。
とにかく、いち早くルナさんを助けに行かないと。
マネットライムはグレイ当主にルナさんを引き渡したと言っていた。グレイ当主は魔物と繋がっていることになる。
敵の狙いが何なのかは分からないが、魔物と繋がっていることが分かった以上は、グレイ当主も危険人物扱いだ。一刻も早く、ルナさんを助けに行かなければ。
でも、グレイ家当主は今どこにいる? マネットライムから教えてもらった情報は、ルナさんは彼のもとに居ると言うことだけ。正確な居場所までは教えてもらっていない。
うん? この気配は?
今後の行動について思考を巡らせていると、どこからかモンスターの気配を感じた。
「そこか! ファイヤーボール!」
魔法を発動して火球を生み出し、気配を感じた場所に放つ。
すると、隠れていたモンスターが飛び出してきた。
「鏡の……モンスター?」
中央は鏡であり、フレーム部分は骨で作られているモンスターだ。見ていて禍々しいものを感じる。
飛び出してきたモンスターは、攻撃をしてこようとする気配を感じさせない。
「ご主人様、このモンスター」
「ああ、どうやら連絡用のモンスターのようだな」
念のために構えた状態で警戒を緩めないようにしていると、鏡の中から一人の女性が映り出す。
彼女は口を開き、その動きに合わせて声が伝わってきた。
『妾の名は、メイデス』
「あ、これはどうもご丁寧に、メイさん」
『妾の名はメイではなくメイデス!』
ご丁寧にも自己紹介から始めてくれたので、こちらも謙って丁寧に答えたのにも関わらず、鏡越しの女性はいきなり怒り出す。
「あのう。さっきから何で自分の名前を連呼しているのですか? 2回言われなくとも分かっていますよ。もしかして発音が悪かったですか?」
『ふざけるな! 【メイです】ではなく【メイデス】だ! デスまでが名前! ちゃんと妾の発音を聞かぬか!』
「何! メイデスだと!」
鏡越しの女性が、マーぺたちに龍玉を奪わせた張本人であることに気付き、警戒する。
『顔付きが変わったな。どうやらようやく理解したと思える』
『あ、やっぱりメイデス様だ! お久しぶりです』
突然パーぺの声が聞こえ、そちらに顔を向ける。すると、鳥籠の中に入っているパーぺが鳥籠を押して転がしながらこちらにやってきた。
その姿はまるで、回し車の中で走って運動をするネズミのように見えた。
そう言えば、港町に放置していたな。あいつ、いつの間に籠を倒して転がす技術を身につけやがったんだ。
『って、どうして急にグルグル回るのさ! 僕はメイデス様のところに行きたいのに!』
途中までこちらに向けて真っ直ぐに進んでいたが、途中で重心が変わってしまったようだ。いくら走っても同じところをグルグルと回るだけで、1ミリも進む気配がない。
微笑ましい光景ではあるが、今はマーペに構っている暇はない。
とりあえずは、あのアホモンスターは無視して話しを進めるとするか。
「メイデス! グレイ当主はどこに居る。答えろ!」
鏡越しの彼女を睨み付け、グレイ当主の居場所を問い詰める。
『その目、確かにハルトと似ておる。マネットライムの報告通りにハルトの生まれか代わりなのだろう。妾はこの時が来るのを待っていた』
「話しを逸らすな! 俺の質問に答えろ!」
話しをすり替えようとするメイデスに向けて声を上げ、強引に話題を引き戻す。
『少しくらい前置きがあっても良かろうに。女のピンチに駆け付けようとするその姿勢も、ハルトに似ておる。まぁ、良いだろう。攫われたピンチ姫は、アバン子爵の別邸にいる。だが、それも時間の問題よな』
「どう言うことだ」
『もう少し、お前の実力と言うものを知りたい。なのでそのルナとか言う女を、妾が攫うことにした』
「それはいったいどう言うことだ! マネットライムがグレイ当主と繋がっていた以上、誘拐もお前の仕業ではないのか!」
『マネットライムがグレイ当主に引き渡しのは妾の指示ではない、あやつが勝手にしたことだ。あやつなりに別の思惑があったのかもしれないな。それじゃ、通信はここまでとしよう。どちらがピンチ姫を救出することができるのか楽しみじゃな』
鏡に映し出された女性が消えると、鏡のモンスターはこの場から走り去って行く。
早く、アバン子爵の別邸に向かわないと。ルナさんがまた攫われることになる。
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