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第六章
第七話 説得作戦
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ルナさんに夜這いをされた翌日、俺たちはテーブルを囲んで朝食を食べていた。
昨日、あんなことがあったのにも関わらず、ルナさんは普段通りに振る舞っている。
良かった。どうやら彼女の中で吹っ切れたものがあったみたいだ。
「今後の方針だけど、マーペはどうしたら良いと思う?」
『僕! どうしていきなりそうんなことを聞くのだよ!』
鳥籠の中に入れられている人形は、まさか自分に話を振られるとは思っていなかったらしく、慌て出す。
「そう。一応お前の意見も聞いておこうかと思ってな」
『いやー。別に君たちが何をしようとしても、別に良いけどね。でも、この場に留まってくれた方が助か……いや、何でもない。君たちの好きにすれば。ルナのことを先に解決したければすれば良いし。メイデス様のところに向かうのも良し』
何か敵側の方針が変わっていないかを確認するために、不意を突いて訊ねてみたが、今のところは特に変わった様子はないようだ。
メイデス側は、俺たちをこの場に留まらせたい状況に陥っている。接触することが敵側として不都合なのか、それとも足止めのためかは分かっていない。
これからどう行動をしようにも、メイデス側の動きを知ってから動いた方が良いだろうな。
マーペが怪しい動きをしていないか、常に観察していた方が良さそうだ。
頭の中で考え事をしつつ、ルナさんに視線を向ける。
「ルナさん。俺は君のことを一番に考えた場合、やっぱりこのまま父親との関係が悪化したままでは良くないと思う。だからもう一度会って、説得するべきだ」
「そんなの無理だよ。私が散々言っても耳を傾けてくれなかったの、テオ君も見たでしょう。何度言っても無駄よ」
「それは分からないよ。1回や2回では無理でも、3回、4回って説得すればルナさんの気持ちは絶対に伝わるはずだ」
前世の記憶の更にその記憶になってしまうけど、三顧の礼と言うものがある。歴史上の人物がとある人物に2回謁見を申し込んだが、全部拒否され、3度目にようやく許しを得たと言う実話だ。
別の伝承によっては、3回目ではなく、4回目で許されたとされてもいるが、今はそんな細いことはどうでも良い。
ルナさんの顔をジッと見る。
「分かったわ。テオ君がそこまで言うのなら信じてみるよ。もう一度お父様に会って、私は婚約したくないことを伝えてみる」
真剣な表情で彼女を見詰めていたからか、ルナさんは小さく息を吐くと、俺の作戦に乗ってくれた。
いくら反発し合っていると言っても、親と言うのは子どもの幸せを願っているはず。ルナさんの言葉はきっと父親に伝わるはずだ。まぁ、実の両親から捨てられ、義父からも捨てられた俺が言えたことではないかもしれないがな。
ルナさんに父親を説得する方針で行くことにすると、マーペの様子が変だった。
おや? マーペの様子が?
魔力を封じる鳥籠の中にいるパペット人形が呆然としていた。
もしかして。
鳥籠を掴み、中にいるマーペを取り出すとパペット人形の中に腕を突っ込む。
『マーペ、聞こえるか?』
『聞こえるよ、兄いちゃん。それで何の用?』
『お前は今どこに居る?』
『えーとねぇ。港町だよ。シモンが野盗と待ち合わせに使っていた』
『そうか……おい、マネットライム! 聞こえたか? 奴らは港町にいる』
『ああ、聞こえた。準備ができ次第、そちらに向かうとするか』
2対の念話を盗み聞きしていると、念話に第三者が介入してきた。
マネットライムだと! こいつは厄介なモンスターが新たに現れたな。
マネットライムは、その名の通りマネをするモンスターだ。とある条件を満たすと、人に姿を化けるどころか、記憶や化けた本人が使えていた魔法やスキルを使うことができる。スライムの中では上位に君臨するモンスターだ。
こいつが次の相手だと考えると、気を付けなければいけない。
『俺は、グレイ当主の相手をしている。マーペとの連絡の方は任せた』
マネットライムと思われるモンスターの言葉を聞いた瞬間、思わず椅子から立ち上がる。
「ど、どうしたの? テオ君。いきなり立ち上がって」
「いきなり立ち上がったからびっくりしちゃったよ」
「あ、ごめん。パーぺの位置が変わったような気がしたけど気のせいだった」
驚かせてしまった2人に嘘を付き、もう一度椅子に座り直す。
ルナさんのお父さんがマネットライムの側にいる。こいつはやばい。説得するどころの話ではなくなったぞ。
グレイ当主に危険が迫っていることを知るも、今の俺にはどうすることもできない。
マーぺを腕から外して鳥籠の中に入れ、状況を整理する。
パーぺはマーペと連絡を取って、こちらの居場所を知られた。そしてパーぺの背後にはマネットライムがいる。そのマネットライムはグレイ当主と既に接触している。
やつがルナさんの父親の記憶や肉体をコピーしてしまえば、次に会うグレイ当主が本物なのか、それとも偽物のマネットライムが化けた姿なのか完全に分からなくなる。
マネットライムが化けた姿は見分けることが不可能。何せ本人の記憶をコピーすることができる。
見破るために良く使われる質問や癖を見極めるなどと言ったこともできないほど、やつの変身能力は最強クラス。変身と言った能力だけで言えば、全モンスターの中でもトップと言えるだろう。
こうなって来ると、対策としては全スライム系モンスターに共通する弱点をつくしかないな。
仮にグレイ当主が記憶などをコピーされなかったとしても、他の人物に化けた姿で俺たちに接触してくることも当然考えられる。
可能性は低いが、次に姿を見るメリュジーナやルナさんだって、本人である確証はない。
やつがこの港町に来たら、直ぐに倒さなければならない。人々は疑心暗鬼に陥り、町は大混乱となってしまう。
最悪のケースに陥れば、人同士が殺し合いに発展してこの港町から人の姿が消えることだって考えられる。
「俺、ちょっと出かけてくる」
「それならついでに買って来てくれないかな? そろそろ調味料や食材がきれそうなの」
「分かった。何を買ってくれば良いの?」
「ちょっと待ってね。紙にメモるから」
ルナさんから買い物リストを受け取り、俺は部屋を出て行く。
昨日、あんなことがあったのにも関わらず、ルナさんは普段通りに振る舞っている。
良かった。どうやら彼女の中で吹っ切れたものがあったみたいだ。
「今後の方針だけど、マーペはどうしたら良いと思う?」
『僕! どうしていきなりそうんなことを聞くのだよ!』
鳥籠の中に入れられている人形は、まさか自分に話を振られるとは思っていなかったらしく、慌て出す。
「そう。一応お前の意見も聞いておこうかと思ってな」
『いやー。別に君たちが何をしようとしても、別に良いけどね。でも、この場に留まってくれた方が助か……いや、何でもない。君たちの好きにすれば。ルナのことを先に解決したければすれば良いし。メイデス様のところに向かうのも良し』
何か敵側の方針が変わっていないかを確認するために、不意を突いて訊ねてみたが、今のところは特に変わった様子はないようだ。
メイデス側は、俺たちをこの場に留まらせたい状況に陥っている。接触することが敵側として不都合なのか、それとも足止めのためかは分かっていない。
これからどう行動をしようにも、メイデス側の動きを知ってから動いた方が良いだろうな。
マーペが怪しい動きをしていないか、常に観察していた方が良さそうだ。
頭の中で考え事をしつつ、ルナさんに視線を向ける。
「ルナさん。俺は君のことを一番に考えた場合、やっぱりこのまま父親との関係が悪化したままでは良くないと思う。だからもう一度会って、説得するべきだ」
「そんなの無理だよ。私が散々言っても耳を傾けてくれなかったの、テオ君も見たでしょう。何度言っても無駄よ」
「それは分からないよ。1回や2回では無理でも、3回、4回って説得すればルナさんの気持ちは絶対に伝わるはずだ」
前世の記憶の更にその記憶になってしまうけど、三顧の礼と言うものがある。歴史上の人物がとある人物に2回謁見を申し込んだが、全部拒否され、3度目にようやく許しを得たと言う実話だ。
別の伝承によっては、3回目ではなく、4回目で許されたとされてもいるが、今はそんな細いことはどうでも良い。
ルナさんの顔をジッと見る。
「分かったわ。テオ君がそこまで言うのなら信じてみるよ。もう一度お父様に会って、私は婚約したくないことを伝えてみる」
真剣な表情で彼女を見詰めていたからか、ルナさんは小さく息を吐くと、俺の作戦に乗ってくれた。
いくら反発し合っていると言っても、親と言うのは子どもの幸せを願っているはず。ルナさんの言葉はきっと父親に伝わるはずだ。まぁ、実の両親から捨てられ、義父からも捨てられた俺が言えたことではないかもしれないがな。
ルナさんに父親を説得する方針で行くことにすると、マーペの様子が変だった。
おや? マーペの様子が?
魔力を封じる鳥籠の中にいるパペット人形が呆然としていた。
もしかして。
鳥籠を掴み、中にいるマーペを取り出すとパペット人形の中に腕を突っ込む。
『マーペ、聞こえるか?』
『聞こえるよ、兄いちゃん。それで何の用?』
『お前は今どこに居る?』
『えーとねぇ。港町だよ。シモンが野盗と待ち合わせに使っていた』
『そうか……おい、マネットライム! 聞こえたか? 奴らは港町にいる』
『ああ、聞こえた。準備ができ次第、そちらに向かうとするか』
2対の念話を盗み聞きしていると、念話に第三者が介入してきた。
マネットライムだと! こいつは厄介なモンスターが新たに現れたな。
マネットライムは、その名の通りマネをするモンスターだ。とある条件を満たすと、人に姿を化けるどころか、記憶や化けた本人が使えていた魔法やスキルを使うことができる。スライムの中では上位に君臨するモンスターだ。
こいつが次の相手だと考えると、気を付けなければいけない。
『俺は、グレイ当主の相手をしている。マーペとの連絡の方は任せた』
マネットライムと思われるモンスターの言葉を聞いた瞬間、思わず椅子から立ち上がる。
「ど、どうしたの? テオ君。いきなり立ち上がって」
「いきなり立ち上がったからびっくりしちゃったよ」
「あ、ごめん。パーぺの位置が変わったような気がしたけど気のせいだった」
驚かせてしまった2人に嘘を付き、もう一度椅子に座り直す。
ルナさんのお父さんがマネットライムの側にいる。こいつはやばい。説得するどころの話ではなくなったぞ。
グレイ当主に危険が迫っていることを知るも、今の俺にはどうすることもできない。
マーぺを腕から外して鳥籠の中に入れ、状況を整理する。
パーぺはマーペと連絡を取って、こちらの居場所を知られた。そしてパーぺの背後にはマネットライムがいる。そのマネットライムはグレイ当主と既に接触している。
やつがルナさんの父親の記憶や肉体をコピーしてしまえば、次に会うグレイ当主が本物なのか、それとも偽物のマネットライムが化けた姿なのか完全に分からなくなる。
マネットライムが化けた姿は見分けることが不可能。何せ本人の記憶をコピーすることができる。
見破るために良く使われる質問や癖を見極めるなどと言ったこともできないほど、やつの変身能力は最強クラス。変身と言った能力だけで言えば、全モンスターの中でもトップと言えるだろう。
こうなって来ると、対策としては全スライム系モンスターに共通する弱点をつくしかないな。
仮にグレイ当主が記憶などをコピーされなかったとしても、他の人物に化けた姿で俺たちに接触してくることも当然考えられる。
可能性は低いが、次に姿を見るメリュジーナやルナさんだって、本人である確証はない。
やつがこの港町に来たら、直ぐに倒さなければならない。人々は疑心暗鬼に陥り、町は大混乱となってしまう。
最悪のケースに陥れば、人同士が殺し合いに発展してこの港町から人の姿が消えることだって考えられる。
「俺、ちょっと出かけてくる」
「それならついでに買って来てくれないかな? そろそろ調味料や食材がきれそうなの」
「分かった。何を買ってくれば良いの?」
「ちょっと待ってね。紙にメモるから」
ルナさんから買い物リストを受け取り、俺は部屋を出て行く。
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