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第五章
第九話 宿屋の事情と真の黒幕
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「宿屋のババァって、女将さんのことか?」
野盗の男の言葉を聞き、俺は訊ね返す。
「そうだ。あのババァには赤い髪の女の情報を集めさせている。情報を集め次第、俺たちに報告する様になっていたんだ」
「どうして女将さんがそんなことをするのよ。あの人、悪い人には見えなかったわ」
「そうだよ。わたしの冗談にもノリツッコミをしてくれるような人なんだよ。あんな人が悪党と手を組むなんて考えられない」
情報の提供者が宿屋の女将さんだと聞き、ルナさんとメリュジーナが猛反論する。
彼女たちの言う通りだ。少し不審に思ったことはあったが、あの女将さんが悪党だとは思えない。これにはきっと何か事情があるはずだ。
「どうして女将さんはお前たちに情報を提供した。それを教えろ」
「それはあのババァの孫娘を俺たちが攫ったからだ。孫を返して欲しければ赤髪の女の情報を寄越せ。目的の人物が見つかり次第、お前の孫は返してやるとな。そしたらあのババァは鬼、いや悪魔となった。孫娘のために平気で無関係な赤髪の女の情報を寄越し、俺たちに襲わせた。本当に人間と言うのは無関係なやつには冷たいよ……ブヘッ!」
言葉の途中であったが、男に対して怒りが募り、我慢ができずに一発顔面を殴る。
「なるほど、つまりお前たちのアジトに乗り込めば、女将さんの孫娘がいるのだな」
「テオ君、早くそのアジトに行こうよ」
「女将さんの孫娘を助け出そう」
「そうだな」
「ハハハ……残念……だったな。俺たちのアジトに向かっても……赤髪の女たちはいない……とある人物に既に渡しているからな」
「何だと!」
野盗の言葉に衝撃が走った。
孫娘を始め、多くの赤髪の女性は既に何者かの手に渡っている。
「言え! その人物は誰だ!」
「さぁな? 名前は聞いていない。俺たちはそいつから雇われただけだ。もし、連れてきた赤髪の女の中から探し求めている人物がおれば、莫大な報酬を支払ってくれると話しを持ちかけられたから、それに乗っただけだ」
「そいつとは次にいつ会う約束をしている! 特徴は!」
「今日の正午だ。港町の波止場で会う約束になっている。名前は知らないが、茶髪のアイビーカットで、恰幅が良い男だったな。軍服が似合いそうな男だったさ」
茶髪のアイビーカットに、恰幅が良くて軍服が似合いそうな男、その特徴に当て嵌まる人物を俺は知っている。だけど、あの男がこの国に来ているのか。でも、どうしてあいつが野盗と協力して、誘拐なんてしているんだよ。
もしかしたら別人かもしれない。だけど知人と特徴が酷似しているだけに、そいつの犯行によるものだと思い込んでしまう。
どっちにしろ、真実を確かめるためにはそいつをこの目で見るしかない。
「テオ君、攫われた人たちを助けに行こうよ」
「ご主人様、わたしもこの話しを聞いて黙ってはいられない。即刻そいつを倒して、孫娘さんたちを助けようよ」
「ああ、そうだな」
『えー、本当にそれで良いの? その選択肢で合っている?』
女将さんの孫娘を助ける。そう感情が昂っていると、いきなりマーペが水を差して来た。
『僕は反対だな。道草を食っている暇はないんじゃない? 君たちは龍玉を取り戻すのでしょう? だったら余計な感情に流されないで、目的を達成するべきじゃないの?』
マーペが反対の意見を述べて来る。
こいつの目的は、俺をメイデスのところに連れて行くことだ。だから冷静なように見せ掛けて、必死に止めようとしている。
こいつの言う通り、時間は残されていないかもしれない。だけどもし、誘拐の黒幕が知人であったのなら、見過ごす訳にはいかない。
「即効でこの問題を解決すれば良いだけの話しだ。最悪の場合、メリュジーナがいる」
「ああ、わたしの羽があれば、飛んで距離を短縮することができる。ご主人様なら、大丈夫だ。わたしは信じている」
「私もテオ君ならどうにかしてくれると思う。これくらいやり遂げた上で、メイデスから龍玉を取り戻せると、私も信じている」
3対1で誘拐犯から赤い髪の女の子たちを助けることを決めると、野盗たちを縄で高速して身動きを封じ、その場に放置する。
正午になる前に港町に到着し、待ち合わせとなっている波止場の近くに来た。
周辺を見渡し、待ち合わせとなっている人物を探す。
いた。あの男だ。
野盗の情報通り、茶髪の髪をアイビーカットにしており、恰幅がよく、軍服が似合そうな容姿をしている。
更に近づき、彼の顔がはっきりすると、拳を強く握りしめる。
やっぱりお前だったのか。シモン!
誘拐犯の黒幕は、イルムガルドのチームに所属している騎士爵のシモン・マウーだった。
「あの人が誘拐犯の黒幕か……ねぇ、テオ君、私に考えがあるの。私をあの人のところに連れて行ってくれないかな。私がわざと捕まって、内部から捕まった人を助けようと思うの」
「それはダメだ!」
咄嗟であったが、思わず彼女の作戦を拒否する。
ルナさんを危険な目に遭わせる訳にはいかない。
「ここは俺に任せてくれ」
野盗の男の言葉を聞き、俺は訊ね返す。
「そうだ。あのババァには赤い髪の女の情報を集めさせている。情報を集め次第、俺たちに報告する様になっていたんだ」
「どうして女将さんがそんなことをするのよ。あの人、悪い人には見えなかったわ」
「そうだよ。わたしの冗談にもノリツッコミをしてくれるような人なんだよ。あんな人が悪党と手を組むなんて考えられない」
情報の提供者が宿屋の女将さんだと聞き、ルナさんとメリュジーナが猛反論する。
彼女たちの言う通りだ。少し不審に思ったことはあったが、あの女将さんが悪党だとは思えない。これにはきっと何か事情があるはずだ。
「どうして女将さんはお前たちに情報を提供した。それを教えろ」
「それはあのババァの孫娘を俺たちが攫ったからだ。孫を返して欲しければ赤髪の女の情報を寄越せ。目的の人物が見つかり次第、お前の孫は返してやるとな。そしたらあのババァは鬼、いや悪魔となった。孫娘のために平気で無関係な赤髪の女の情報を寄越し、俺たちに襲わせた。本当に人間と言うのは無関係なやつには冷たいよ……ブヘッ!」
言葉の途中であったが、男に対して怒りが募り、我慢ができずに一発顔面を殴る。
「なるほど、つまりお前たちのアジトに乗り込めば、女将さんの孫娘がいるのだな」
「テオ君、早くそのアジトに行こうよ」
「女将さんの孫娘を助け出そう」
「そうだな」
「ハハハ……残念……だったな。俺たちのアジトに向かっても……赤髪の女たちはいない……とある人物に既に渡しているからな」
「何だと!」
野盗の言葉に衝撃が走った。
孫娘を始め、多くの赤髪の女性は既に何者かの手に渡っている。
「言え! その人物は誰だ!」
「さぁな? 名前は聞いていない。俺たちはそいつから雇われただけだ。もし、連れてきた赤髪の女の中から探し求めている人物がおれば、莫大な報酬を支払ってくれると話しを持ちかけられたから、それに乗っただけだ」
「そいつとは次にいつ会う約束をしている! 特徴は!」
「今日の正午だ。港町の波止場で会う約束になっている。名前は知らないが、茶髪のアイビーカットで、恰幅が良い男だったな。軍服が似合いそうな男だったさ」
茶髪のアイビーカットに、恰幅が良くて軍服が似合いそうな男、その特徴に当て嵌まる人物を俺は知っている。だけど、あの男がこの国に来ているのか。でも、どうしてあいつが野盗と協力して、誘拐なんてしているんだよ。
もしかしたら別人かもしれない。だけど知人と特徴が酷似しているだけに、そいつの犯行によるものだと思い込んでしまう。
どっちにしろ、真実を確かめるためにはそいつをこの目で見るしかない。
「テオ君、攫われた人たちを助けに行こうよ」
「ご主人様、わたしもこの話しを聞いて黙ってはいられない。即刻そいつを倒して、孫娘さんたちを助けようよ」
「ああ、そうだな」
『えー、本当にそれで良いの? その選択肢で合っている?』
女将さんの孫娘を助ける。そう感情が昂っていると、いきなりマーペが水を差して来た。
『僕は反対だな。道草を食っている暇はないんじゃない? 君たちは龍玉を取り戻すのでしょう? だったら余計な感情に流されないで、目的を達成するべきじゃないの?』
マーペが反対の意見を述べて来る。
こいつの目的は、俺をメイデスのところに連れて行くことだ。だから冷静なように見せ掛けて、必死に止めようとしている。
こいつの言う通り、時間は残されていないかもしれない。だけどもし、誘拐の黒幕が知人であったのなら、見過ごす訳にはいかない。
「即効でこの問題を解決すれば良いだけの話しだ。最悪の場合、メリュジーナがいる」
「ああ、わたしの羽があれば、飛んで距離を短縮することができる。ご主人様なら、大丈夫だ。わたしは信じている」
「私もテオ君ならどうにかしてくれると思う。これくらいやり遂げた上で、メイデスから龍玉を取り戻せると、私も信じている」
3対1で誘拐犯から赤い髪の女の子たちを助けることを決めると、野盗たちを縄で高速して身動きを封じ、その場に放置する。
正午になる前に港町に到着し、待ち合わせとなっている波止場の近くに来た。
周辺を見渡し、待ち合わせとなっている人物を探す。
いた。あの男だ。
野盗の情報通り、茶髪の髪をアイビーカットにしており、恰幅がよく、軍服が似合そうな容姿をしている。
更に近づき、彼の顔がはっきりすると、拳を強く握りしめる。
やっぱりお前だったのか。シモン!
誘拐犯の黒幕は、イルムガルドのチームに所属している騎士爵のシモン・マウーだった。
「あの人が誘拐犯の黒幕か……ねぇ、テオ君、私に考えがあるの。私をあの人のところに連れて行ってくれないかな。私がわざと捕まって、内部から捕まった人を助けようと思うの」
「それはダメだ!」
咄嗟であったが、思わず彼女の作戦を拒否する。
ルナさんを危険な目に遭わせる訳にはいかない。
「ここは俺に任せてくれ」
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