全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜

仁徳

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第四章

第六話 パペットの裏にいるもの

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 龍玉を、パペット人形のパーぺに奪われてしまった。だが、運が良いと言って良いのか、幸いにもマーペの方を捕らえることができた。

 いや、正確には兄に裏切られたと言うのが正しいのかもしれない。

 現在パーぺは、尋問のために魔力を封じる鳥籠の中に入れられている。

 そして俺以外の人には部屋から出て行ってもらった。

「さぁ、吐け!」

『おえー!』

 マーペの居場所を聞き出そうとすると、パーぺは嘔吐をしたときの擬音を口走る。しかし人形であるので、当然吐瀉物としゃぶつは出てこない。

「そっちの吐けじゃない! マーペの居場所を教えろと言っているんだ!」

『あ、そっちね! 僕はてっきり、嘔吐しろと言われているのかと思ったよ』

 この人形、ふざけているのか天然なのかどっちだ?

「ふざけているのなら、今度こそその肉体を燃やすぞ」

『わ、分かった !教える! 教えるから! ふざけてすみませんでした! だから燃やさないで!』

 脅しをかけてみると、パーぺはすんなりと屈してくれた。

 簡単に折れるなら、最初からふざけないでくれよ。

「それで、マーペはどこにいる? あの龍玉は何のために持ち出した」

『兄ちゃんはあの方のところに向かった! 龍玉を持ち出したのは、長年蓄えられた魔力を必要としているからだよ!』

 あの方、あの方って誰だ? そう言えば、ハナマドウジジイも言っていたような気がするが、共通する人物なのだろうか?

「あの方とは誰のことだ! 教えろ! でなければ、縫い目の糸を切って、バラバラにするぞ」

『それだけはご勘弁を! あのお方とは、僕らのボス、メイデス様です!』

「メイデス?」

 パペットモンスターの裏にいる存在の名を耳にした瞬間、頭痛を感じる。

 脳裏に過去の映像が浮かび上がる。これは前世の記憶か。

 脳内には白銀のロングヘアーに豊満な胸の女性が映し出される。彼女は片手に鞭を持ち、ボンテージ姿だった。

 そして女の足元には跪いて許しを乞う人々もいる。

 これがメイデスと初めて会った時の記憶か。

 どう見ても普通の女性のようにしか見えなかったけど、500年前の記憶だ。今も生きている以上、彼女はモンスターで間違いない。

「メイデスはどうして龍玉の魔力を欲している?何に使うつもりだ」

『それは知らな……本当だよ! 本当に教えてもらっていないんだ! 僕は兄ちゃんに誘われて一緒に任務をやっていただけなんだ!』

 知らないと言いかけたので、脅しのために火球を生み出してみた。だけど、この反応を見る限りは、嘘を言っていないようにも思える。

 メイデス。彼女のことを思い出せば、何か目的が見えてくるだろうか。

 前世の記憶を思い出してみようとする。しかし必死になって思い出してみようとしても、頭の中に浮かんでこなかった。

 俺のユニークスキル【前世の記憶】は、全ての記憶を所持してはいない。前世で使っていたオリジナルの魔法や、この世界に存在していないものの名称などは分かる。だが、前世の人生に関しては、鍵のようなものがかかっているのか、簡単に思い出すことができない。

 これには何か条件のようなものがあるのだろうか。

 とにかく、これ以上は絞り出しても情報は出てこないだろうな。こうなった以上、パーぺに道案内をしてもらって、メイデスのもとに連れて行ってもらうしかなさそうだ。

「分かった。これで尋問は終わる。お前にはメイデスのところまで案内してもらうからな」

 パペット人形に命じると、パーぺはコクリと頷く。

 パーぺが入っている鳥籠を持ち上げ、部屋の外に出る。廊下には赤い髪をモテの王道であるクラシカルストレートにしている女の子と、水色のロングヘアーの女の子の姿が見えた。

「テオ君どうだった? 何か分かった?」

ご主人様マスター、龍玉の情報は掴めた?」

「一応こいつが持っていた情報は全て絞り出した。メイデスとか言う女が、こいつらに龍玉を奪って来るように命じていたそうだ。今からその女のところに向かう」

 今後の方針を決めると、2人は無言で頷く。

「それじゃあ、今から王様の所に行って別れの挨拶をするか」

 俺たちは王様のところに向かい、この城から出て行くことを伝える。

「そうか。龍玉を取り返しに行くのか。では、テオには変わりに爵位を授けよう。男爵でいかがかな?」

「ありがとうございます。大変光栄であります。ですが、丁重に断らせていただきます」

「テ、テオ君 !どうして断るのよ!」

「そうだよご主人様マスター! 貴族になれる機会なんてそうそうにないんだから。このチャンスを逃せば、次の機会が訪れることはないかもしれないんだよ!」

 即答すると、王様は目を丸くし、ルナさんとメリュジーナは猛反対する。

「王様の申し出はありがたい。だけど、元貴族だからこそ、貴族の裏の世界も知っている。だから、あんまり貴族になりたいとは思えない」

「でも、貴族になったら関所なんかでの待ち時間がなくなるよ! 優先的に手続きを終えられるよ。ご主人様マスター

 メリュジーナが貴族になった時のメリットを言ってくる。

 確かに待ち時間を短縮することはできるが、あの時のは例外だ。そうそう起きない事態である以上、そんなに不安がる必要はない。

「それなら、騎士爵はどうだ? 平民に近くはあるが、一応貴族扱いだ。それなら最低限の貴族の特権を行使することができ、領地などの心配もほとんどする必要はない」

 話しの落とし所を考えていると、王様が騎士爵にならないかと提案してきた。

 騎士爵か。確かにそれならあまり身構える必要はなさそうだな。これ以上断れば、王様の名誉に傷を付けることになるかもしれないし、ここは受け入れることにするか。

「分かりました。では、騎士爵の爵位であれば、喜んで受け入れましょう」

 こうして俺は、騎士爵へと成り上がることになった。
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