全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜

仁徳

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第四章

第五話 盗まれた龍玉

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 宝物庫を見張っていた兵士が、何者かに襲われたと聞き、心臓の鼓動が早鐘を打つ。

 もしかして、あのモンスターが言っていたことはこれだったのか。

「何が盗まれた!」

 王様が問い質すと、宝物庫に向かった兵士は首を横に振る。

「申し訳ありません。仲間が倒れているのを見て、急いで戻って来たので、まだ確認をしておりません」

「そうか。なら一刻も早く、宝物庫に向かうとしよう」

 王様たちが急ぎ宝物庫へと向かい、彼の後を追う。

 宝物庫と思われる扉の前に来ると、2人の兵士が横たわっていた。扉は破壊されており、ここからでも中の物を視認することができる。

「おい、大丈夫か」

 倒れている兵士に近付き、声をかける。

 返事がない。脈の方はどうだ?

 手首を握り、脈を測る。すると心臓の動きに合わせて、血液が押し出されているのを感じることができた。

 兵士は死んでいない。気を失っているだけか。

「私は宝物庫の中身を確認してくる」

 王様が宝物庫の中に入ろうと足を前に踏み出した。その瞬間、宝物庫の奥から何かが飛び出して来た。

『国宝の龍玉はこの俺、パーぺと』

『この僕、マーペが頂いたよ!』

 宝物庫の奥から飛び出して来たのは、黒子の両手に嵌められていたあのパペット人形たちだった。

 2体は赤い玉を抱えている。あれが俺たちの求めていた龍玉か。

 パペット人形が動いていることに驚くが、今思えばおかしな点があった。2体が歌い出した時『2人合わせてパペットーズ♪ 小さな野望から大きな野望まで♪ 実現してみ~せる~♪』の部分が、声がふたつ聞こえていた。

 つまり、あの黒子は本体だと誤認させるフェイクで、本体はあのパペット人形たちだったのだ。

 このままでは龍玉を奪われてしまう。

「逃さないわよ! ファイヤーボール!」

 ルナさんがパーぺとマーペに向けて火球を放つ。だが、彼女の火球はすんなりと躱されてしまった。

「ルナ、何をしているんだよ。ここはわたしが食い止める。アイスランス!」

 続けてメリュジーナが氷の槍を放つも、モンスターの小さい体に当たることはなかった。

『兄ちゃん、こいつらさっきから僕たちの逃走を邪魔してくるよ!』

『こうなっては仕方がない。こいつらの身動きを封じて、その隙に逃げるぞ』

『『オペレーションエモーショナル』』

 モンスターが魔法と思われる言葉を発した瞬間、突然笑いが込み上がってきた。

「ワハハハハハ!」

「アハハハハハ!」

「ギャハハハハ!」

 王様や兵士、そしてルナさんたちまでもが一斉に笑いだし、お腹を抑えて苦しそうにしている。

 俺も必死に笑いを堪えているが、腹筋が痛い。

 モンスターの魔法を直訳すると、感情の操作。つまり、喜怒哀楽の楽しいと言う感情を操作されてしまい、何も起こっていないのに、脳が面白いと錯覚させられていると言うことだ。

 人は、笑うと免疫のコントロール機能を司っている脳幹に興奮が伝わり、情報伝達物質のペプチドが活発に生産される。

 しかしモンスターの魔法を受けると、強制的にペプチドが活発化され、それにより脳が面白いと錯覚している状態にさせられているのだろう。

『今だよ兄ちゃん!』

『おう、さっさと逃げてあの方にこれをお渡しするのだ!』

 笑い声が響く中、パペット人形たちは颯爽さっそうと逃げて行く。

 そうはさせるか。

「ブレインセラピー!」

 笑いそうになるのを堪え、魔法を発動させる。

 脳に異常が起きたときに使用する回復魔法を発動し、脳を正常化させる。すると、俺だけではなく、王様たちも笑うのを止めた。

 しかし、笑った影響は持続しているようで、彼らはお腹を抑えている。今は満足に体を動かせる状態ではないみたいだ。

 今動けるのは俺しかいない。

 モンスターを追いかけ、後ろ姿を捉える。

「待て!」

『うそ! 1人だけ追いかけて来ているよ! 兄ちゃん!』

『そんなバカな! 俺たちの魔法は完璧のはず! やっぱりあのお方の言ったとおりだな。なら、次の段取りといこう』

『次の段取りって? 僕何も聞いていないよ?』

 前方にいる2体の会話が聞こえてくるまで距離を詰めた。このまま行けば追い付く。

 そう確信した瞬間、1体のパペット人形がこちらに吹き飛ぶ。

『お前を犠牲にすることだ。俺はこの龍玉をあの方に届ける。お前は足止めしてくれ』

『酷いよ兄ちゃん! 僕を踏み台にするなんて! 手柄は2体で分け合う約束だったでしょう!』

 そんな会話が耳に入る中、1体のパペット人形が俺の顔面にぶつかる。

 一瞬視界が塞がれてしまい、目の前が真っ暗になった。

 顔面にぶつかったパペット人形を引き剥がし、廊下の奥を見る。しかしもう1体のパペット人形の姿は見当たらなかった。

「どこに逃げやがった。エコーロケーション!」

 探査魔法を発動して音波を放つ。しばらくして返ってくる音をキャッチするも、モンスターらしき反応はなかった。

「逃げられたか」

 拳を強く握りしめる。

 逃げられてしまったが、まだ終わった訳ではない。まだ追いかけるチャンスは残されている。

 顔面にぶつかったパーぺを掴み、口角を上げる。

「さぁ、尋問の時間だ」
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