全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜

仁徳

文字の大きさ
上 下
39 / 122
第三章

第十話 追い詰められたハナマドウジジイ

しおりを挟む
~テオ視点~



 俺たちを欺こうとしていたモンスターが真の姿を見せた。

 一応人の姿を模っているが、体は蔓や蔦でできており、一部分には花も咲いている。

『ワシの名はハナマドウジジイ。とあるお方の命令で、この町を我々モンスターの拠点にするつもりであった。その計画をよくも邪魔してくれたな』

 ハナマドウジジイと名乗ったモンスターは、訊いてもいないことを勝手に話し出す。

 正直、モンスターたちの計画には興味がない。だけど、メリュジーナやルナさんたちに危害を加えようとしたことに関しては、許す訳にはいかない。

『ワシの計画は完璧だったはず。どうしてワシの幻覚にかからなかった?』

「えー、どうしてそんなことをわざわざ教えないといけないんだよ。面倒臭い」

「きっと冥土の土産として欲しいんじゃないのかな? 今からテオくんに倒されるのに、真実を知らないで倒されるのはきっと悔やむと思うよ」

 説明するのを面倒くさがっていると、ルナさんが冥土の土産として欲しいのではとモンスターの気持ちを代弁してくれた。

 なるほど、確かにこれから倒されるんだ。冥土の土産の1つや2つくらいは欲しいだろうな。

「分かった。冥土の土産に教えてあげるよ!」

『誰が冥土の土産だ! あの世に旅立つのはお前たちだ!』

 せっかく話す気になったのにも関わらず、ハナマドウジジイが話の腰を折ってくる。

「せっかく話す気になったのに、話の腰を折らないでくれよ。まぁ、このまま教えないとなると、俺のほうが気持ち悪くなるから話すけどよ」

『だからもう、そんなことなどどうでも良いと言っておるだろうが! 良く考えれば、お前たちを倒せば真実などどうでも良いわい!』

 どうやらモンスターを怒らせたらしく、ハナマドウジジイの体から蔦が放たれる。

 この蔦は、森の中で襲ってきたあの蔦と同じだ。やっぱり俺が思った通りか。

「ファイヤーウォール!」

 蔦が俺の肉体に触れる寸前に魔法を発動し、目の前に炎の壁を出現させる。

『アチチチチ!』

 炎の壁の中に蔦が突っ込み、燃やされると炎が蔦を伝って本体に熱が届く。

「お前が植物のモンスターである以上、炎攻撃には弱い。お前は詰んでいるにも等しい」

『確かにそうだな。だが、これならどうだ!』

 ハナマドウジジイが蔦を操り、ゾンビに見えていた町民の体を巻き付く。

 しまった。俺としたことが、町民を避難させることを忘れていた。

『さぁ、ワシを燃やせば、こいつらも燃えるぞ。良いのか? 罪なき町民を魔女裁判の如く燃やし尽くされるぞ』

「町民を盾にするなんて卑怯よ!」

『ギャハハハハハ! モンスターにとって卑怯とは褒め言葉だ! 恨むのであれば、直ぐに町民を避難させなかったお前たちのポンコツぶりを恨みやがれ!』

 卑劣な行動に、つい拳を強く握ってしまう。

 町民を逃さなかったのは俺の落ち度だ。自分で蒔いた種は自分で刈り取る。

「俺が使える攻撃魔法は炎だけではないぞ! ウォーターカッター!」

 魔法を発動すると空気中の水分が集まり、知覚できる量にまで拡大する。

 そして今度は水の塊が加圧により、直径1ミリほどの厚さに形状を変えると、蔦に飛ばす。

 勢いのある水が蔦に触れた瞬間、蔦が弾けて拘束された町民が解放される。

 だけどこのままでは、再びハナマドウジジイが蔦を使って再び捕まえようとするだろう。その前に町民たちを救出する。

『おのれ! せっかくの盾を解放しやがって! だが、そんなものは再び捉えればいいことだ!』

 ハナマドウジジイの体から、再び蔦が飛び出す。

 お前の行動はバレバレだ! 俺が同じ過ちを犯すと思ったら大間違いだ。

「グラビティープラス!」

『ギャワワ!』

 重力を増やす魔法を発動し、モンスターの周囲だけ重力を3倍にする。すると、ハナマドウジジイは地面に這いつくばり、蔦を操ることができなくなる。

 その間に町民たちが俺たちのところにやって来た。

「ありがとうございます。お陰で助かりました」

 町民たちに礼を言われる中、ルナさんとメリュジーナに顔を向ける。

「ルナさんとメリュジーナはみんなを守ってくれ。多分問題ないと思うが、万が一にでも攻撃を撃ち漏らす可能性もある」

「分かったわ」

ご主人様マスターの命に従い、その命令を遂行してみせる」

 2人が返事をすると、再びハナマドウジジイを見る。

 やつは、ゆっくりと立ち上がってこちらを睨んでいた。

 やっぱりモンスターだけあって耐えるか。年寄りだからと言って、3倍は舐めすぎていたかもしれないな。

 相手が植物で肉体を構成してある以上、臓器を持っているモンスターとの戦闘のようにはいかない。

 心臓を破裂させる即死魔法や、一瞬で気を失わせる失神魔法などは通用しないはず。

 となると、やっぱり1番は炎で燃やすことだよな。

『くそう。こうなったら仕方がない。奥の手を使ってやる! フラワーディジーズよ! 根っ子を経由して森からエネルギーを奪い、ワシに渡せ!』

 ハナマドウジジイが両手を上げると、やつの身体がどんどん大きくなる。

『森よ! ワシに元気パワーを分けてくれ!』

 モンスターの巨大化が収まらない。このままではこの倉庫を突き抜けるかもしれないぞ。

「みんな! 倉庫からなるべく離れるんだ!」

 この場にいる全員に避難するように告げ、俺も急いで倉庫から出る。

 全速力で走り、ある程度倉庫から距離を離して振り返った。

 巨大化したハナマドウジジイは2階建ての建物並みの大きさとなっており、大木のような姿に変わっていた。

『ギャハハハハハ! ワシに奥の手を使わせたことは褒めてやろう。だが、これで貴様も終わりだ!』

 大木となったハナマドウジジイが声を上げ、木の枝が触手のように動きながら俺に襲い掛かってくる。
しおりを挟む
script?guid=on
感想 97

あなたにおすすめの小説

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...