全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜

仁徳

文字の大きさ
上 下
29 / 122
第二章

第十四話 よくも顔どころか体全体に泥を塗ってくれやがったな!

しおりを挟む
~イルムガルド視点~



「くそがああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 俺ことイルムガルドは、エレファントエンペラーの突進を受け、空中に舞いながら叫び声を上げる。

 数秒浮遊した後、重力に引っ張られた俺の体は地面の上に落下した。受け身をまともに取ることが出来ずに、背中を強打して一瞬呼吸が止まってしまう。

「イルムガルドさん大丈夫ですか!」

 ユリウスが駆け寄り声をかける。

 モンスターの突進が当たらなかったのか。運の良いやつめ。

「今、回復してあげますね。ヒール!」

 ユリウスが両手を翳すと青白い光が発生してた。

 体の痛みが引いていく。こいつ、回復役としては使えそうだな。

「勝手な行動をするな! お前のせいで、モンスターの攻撃を受けてしまったじゃないか!」

「勝手に石を投げたのは謝ります。ですが、僕の石は当たらなかったです。むしろイルムガルドさんが大声を上げたのが原因ですよ。なので、見つかった責任は僕にはありません」

 正論を言われ、思わず口を噤む。しかし、ガキに言われたと言う事実が大人のプライドを傷付けられた。

「何を言う! お前が勝手な行動をしたから、咄嗟に叫んでしまったんじゃないか! こうなってしまった元凶はお前だ! お前が悪い!」

 全責任をユリウスに押し付け、彼を睨み付ける。

 ユリウスは信じられないものを見たかのような驚きの表情を浮かべていた。

 だが、そんなことなどどうでもいい。今はエレファントエンペラーを倒すのが先決だ。

 立ち上がって周辺を見る。討伐対象のモンスターが、前足を蹴りながら今にも走り出しそうにしていた。

 まるでイノシシの突進じゃないか。さっきは運良くやつの刃物に当たらなかったから良かった。だが、再び突進を食らってしまえば、今度こそあの斧のような鼻で切り裂かれるかもしれない。

『パオオオオオオオオオオォォォォォォォォォン!』

 エレファントエンペラーが声を上げ、再度突撃してくる。

 今度は斧の形をしている鼻を左右に振っていた。

 今ならギリギリで躱せる。

 敵の攻撃から逃れようと地を蹴って草原を走ろうとする。

 しかしいきなり足が掴まれ、転倒してしまう。

「グヘッ」

 顔面から地面にぶつかり痛みが走った。

 地面に倒れた状態で後方を見る。するとユリウスが俺の足首を掴んでいた。

 こいつ、文字通りに足を引っ張りやがって!

「ダメです。起き上がっては」

「この! 邪魔しやがって!」

 感情的になり、ユリウスに対しての怒りが強くなった。やつの拘束から逃れようと、掴まれていない方の足で何度も彼の頭を蹴る。

 だが、どんなに蹴られようとも、ユリウスは掴んでいる手を離そうとはしない。

「好い加減にしろ! お荷物が!」

 モンスターとの距離が縮まる中、何度も蹴りを入れる。するとようやく観念したようで、握っていた手を離す。

「今の内に距離を空ける」

「ダメ! 起き上がっては!」

 ユリウスの言葉を無視して立ち上がったその時、エレファントエンペラーは目前にまで迫っていた。

 運良く斧のような鼻に当たることはなかったものの、再び吹き飛ばされてしまう。

 ドボン!

 吹き飛ばされた先は沼だった。だけどこの沼は普通の沼ではなく、泥沼だったのだ。

 全身泥塗れとなり、水分を吸った衣服が重い。

 歩き難い泥沼の中を歩き、岸に上がる。

 くそう! くそう! くそう! 貴族の俺に文字通り泥を塗りやがって! あのユリウス、もう許さねぇ!

 怒りを爆発しそうになるところを必死に我慢しながら、モンスターがいる場所に向かう。

 ユリウスは地面に倒れた状態で、エレファントエンペラーを攻撃していた。

 何をやっているんだ?

「イルムガルド、遅くなった。ようやくここまで戻ってこれた。どうして全身泥塗れなんだ?」

「イルムガルドどうしたの? 泥パックにしてはやりすぎじゃない?」

 俺と同様に最初の突進で吹き飛ばされた2人が戻ってくる。

「誰が戦闘中に美肌を求めるか! 全てユリウスのせいだ!」

 地面に横になりながらの戦っているユリウスを指差しながら声を上げる。

「あの子、あんなところで何やっているのかしら?」

「あいつ運が良いな。あんなに近いのに踏み付けられていないぞ」

 1人で戦っているユリウスを見て2人が言葉を漏らす。だが、今はそんなことなどどうでもいい。あいつが足止めをしてくれている今がチャンスだ。

「メルセデス! エレファントエンペラーの足元に攻撃だ!」

「でも、今攻撃したらあの子にも当たってしまうわよ」

「そんなことは言われなくとも分かっている! あいつは所詮使い捨ての道具だ。どうなろうと構うものか」

「分かったわ。ファイヤーボール!」

 メルセデスが放つ火球がモンスターに向かって放たれる。火球は狙い通りにエレファントエンペラーの足元に当たり、周囲を燃やす。

『パオオオオオオオオオオォォォォォォォォン!』

「ワハハハハハ! ざまぁ! 俺を泥沼に飛ばした罰だ! ユリウス共々燃えてしまえ!」

 燃えるエレファントエンペラーは悲鳴を上げながら草原を走っていく。

 モンスターが燃えながら草原を駆け回ると、次々と草花に燃え移り、笑っていられる状態ではなくなった。

 なんて事だ。このままでは俺たちまで炎に囲まれてしまう。

「シモン、メルセデス、逃げるぞ」

「ええ、そうね」

「だな。俺たちだけでどうにかできる状況ではない」

 逃げることを決めると、視界の端でエレファントエンペラーが倒れるのが見えた。

 どうやら炎で焼かれて倒れたようだな。

 モンスターは倒したのだ。草原の一部が燃えたくらいで、俺が罪に問われることはないだろう。

 燃え続ける炎を背に、俺たちは一目散に走って町へと帰還する。
しおりを挟む
script?guid=on
感想 97

あなたにおすすめの小説

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...