全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜

仁徳

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第二章

第十一話 今度裏切ったら只では済まさないからな!

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~イルムガルド視点~



「ここは……どこだ?」

 俺ことイルムガルドは、目が覚めると視界がぼやけながらも辺りを見渡す。

 ここは俺の屋敷か? タンスに壁時計、インテリアまで俺の部屋にあるものだ。

 おかしい。俺はピサロとか言う人型のモンスターと戦い、メルセデスたちに裏切られたはずだ。

 自分の足で屋敷まで戻って来た記憶がない。つまりは誰かが俺を助けて、この屋敷に連れて来てくれたと言う訳だ。

 なかなか粋なことをしてくれるじゃないか。今度そいつに会った時は、礼をしなければな。そいつのお陰で、メルセデスやシモンを問い詰めることができる。

 起き上がると、どこにもケガをしていないことに気付いた。

「まるでモンスターハウスの洞窟に向かう前の状態じゃないか。屋敷で雇っている使用人の中にも、回復魔法が使える人物はいる。だが、これほどの回復力がある上級魔法を習得してはいない」

 つまりは、俺を運んでくれたやつは相当な人物だ。

「是非とも俺の手駒として欲しいな」

 口角を上げ、脳内で俺を助けた人物を思い描く。

 きっと相当な魔力の持ち主だ。年齢はおそらく若くとも50代だろう。最近の若者は他人に優しくはないからな。そして渋く、俺みたいなイケメンかもしれない。

「さて、取り敢えずはメルセデスたちを見つけて落とし前を付け、その後に俺を助けた人物を探すか」

 今後の方針を決めると、扉が開かれる。廊下側から執事の男が入って来た。

「おお! 旦那様、目が覚められたのですね!」

「世話をかけたな。急で悪いが、俺を屋敷に送り届けた人物は誰だ? どんな容姿だった?」

「旦那様、申し訳ありません。その件については答えられません」

「何だと!」

 思わず声を上げてしまった。

 いや、冷静になれ。きっと言うなと口止めされているのだ。中々の聖人ぶりではないか。知られずに礼をされないまま去って行く。物語に登場する名もない英雄のようだ。

「旦那様は、転移石でこの屋敷に戻って来られました」

 執事の言葉に、羞恥心が込み上がってくる。

 先程まで考えていた事が全て妄想になってしまうのだから。

「旦那様、お顔が赤いですよ。もしかして風邪でも引かれましたか?」

「いや、何でもねぇ。俺は元気だ」

 顔を背け、ぶっきらぼうにポツリと漏らす。

 一部分は妄想になってしまったが、俺を助けてくれた人物がいるのは確かだ。

 そいつの手がかりを探し出し、必ず手駒にしてやる。なぁに、あの洞窟に入っていたと言うことは冒険者だ。金をチラつかせれば、首を縦に振るだろう。

「執事、メルセデスたちの情報はあるか!」

「メルセデス嬢ですか? 確かこの町の食堂で見かけましたな」

「町の食堂だな!」

 勢い良くベッドから立ち上がると、急いで部屋を出る。

 そして屋敷を飛び出し、町の食堂に向かった。





 食堂に辿り着き、窓から中の様子を伺う。

 するとテーブル席に、長い紫の髪の女と茶髪の髪をアイビーカットにしている男の姿が見えた。

 居た! メルセデスとシモンだ。

 2人は食事を終えたばかりのようで、呑気にカップを口につけて談笑している。

 さて、どのタイミングで突撃しようか。

 店に入るタイミングを伺っていると、二人が立ち上がってレジに向かう。

 今から店を出るのか。なら、出入り口で待ち伏せするとするか。

 出入り口に先回りをして、扉の前で2人が出て来るのを待つ。

 しばらくして扉が開かれると、メルセデスとシモンが外に出たが、俺と目が合った瞬間、時が止まったかのように動きを止める。

 俺が目の前で待機していたことなど予想していなかったのだろう。2人は目を丸くしていた。

「イルム……ガルド」

 メルセデスが声を振り絞ってようやく俺の名を口にする。

「よぉ、2人とも元気そうで何よりだ。ちょっとツラを貸してもらうぞ」

「あ、ああ」

「分かったわ」

 2人が返事をすると、人気のない裏路地に連れて行く。

 ここは丁度スラム街との境目になっており、特別な理由がない限りは、人が来ることはない。

 ここなら、何をやっても見られることはないだろう。

「さぁ、聞かせてもらおうか。どうして俺を裏切った?」

「裏切ったなんてとんでもない。俺たちは助けを求めようとして、一旦避難しただけだ!」

 ここに来るまでにある程度言い訳を考えていたようで、俺の質問にシモンが直ぐに返事をした。

「そうか。そうか。そうだったのか、それは悪かったな。どうやら勘違いをしていたようだ」

 勘違いをしていたことを謝罪すると、2人の表情が緩む。

「そんな訳があるか! とっくにネタは上がっているんだよ!」

 声を上げると、2人の顔が再度引き攣る。

「何が救助を呼ぶためだ! あの時、俺はお前に助けてもらおうと手を伸ばした! だけどお前は俺の手を握らなかった。これは完全に俺への裏切り、いや俺を見殺すための行動だ!」

 声を上げると、つい感情的になってしまった。気がつくとシモンに拳を叩き込んでおり、彼はお腹を押さえて疼くまる。

「おえ! おええええええぇぇぇぇぇぇぇ!」

 食事をしたばかりにも関わらず、腹に強い刺激を受けたシモンは、そのまま胃の中のものをぶち撒ける。

 まったく、貴族ともあろう者がこんな場所で嘔吐をするとは情けない。少し、罰を与えてやろう。

「ふん!」

「グハッ!」

 足を上げると、蹲っているシモンの頭に振り下ろす。

 彼はそのまま頭を地面に付け、顔面吐瀉物としゃぶつ塗れになる。

「うっわ! 汚ねぇなぁ。それでも貴族なのかよ。まるでこじきじゃないか。スラム街に住む連中でも、嘔吐したものを食べようとはしないぞ! ワハハハハハ!」

 乗しかかる圧力に抵抗しようと、シモンは顔を上げようとしているようだ。

 俺の足を押し上げようとする。だが、それ以上の力で押さえ付け、完全には上げさせない。

 この俺を裏切った罰だ!

 羞恥と怒りを感じながら、あの時の行いを後悔しろ!
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