全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜

仁徳

文字の大きさ
上 下
11 / 122
第一章

第十一話 どうして証が赤い糸になる

しおりを挟む
 フェアリードラゴンの尻尾に巻きつかれ、身動きを封じられた。

 ドラゴンが大きく口を開け、鋭利な牙を見せる。このまま食い殺すつもりか。

 だけどその前に抜け出してやる。

『お待ちしておりましたご主人様マスター。強く、賢く、素晴らしいお方にお仕えすることができ、光栄です』

「え? ご主人様マスター?」

『あなた様は見事わたしを倒し、試練を突破しました。あなた様こそ、わたしが求めていたお方です』

「ちょと、どう言うことなの? 試練って何? あなた、この神殿に住み着いた悪いドラゴンではないの?」

 フェアリードラゴンの口から聞かされる意味不明な言葉を聞いて、ルナさんも駆け寄ってくる。

『わたしが悪いドラゴン? なんのこと? わたしはお仕えする方をずっと待っていただけですが?』

 最初にも違和感を覚えていたけど、やっぱり話が噛み合っていないな。

「私たちは高難易度の依頼として、あなたの討伐を頼まれているのよ」

 ルナさんがショルダーバッグ型のアイテムボックスから、ボロボロの依頼書を取り出してフェアリードラゴンに見せる。

『おや、懐かしいものをお持ちですね。わたしが100年前にギルドマスターにお願いして、作っていただいたものではないですか。しかも虫食いで穴だらけ。確かにこれなら、わたしを討伐する内容だと思ってしまっても仕方がありませんね』

 100年前って言うと、当然勤務中に居眠りをしていたあのギルドマスターは生きてはない。つまり、何年もの間放置されてしまい、引き継ぎの際に説明がされていなかったのだろう。だからあんなにボロボロの状態になって、勘違いをしていたと言う訳だ。

『本当の内容はこうです。【神殿に住むドラゴンは試練をクリアして、己を倒すような主を求めている。やつを討伐することができれば、ドラゴンの主となり、その証を授けてもらうことができる。それは喜ばしいものだ】と言う内容だったはず』

 ドラゴンの話しを聞きながら、虫食いの部分を頭の中で照らし合わせてみる。

 うん、内容的にはおかしな部分はないな。

「それにしても、急に性格って言うかキャラが変わったか? 口調や一人称も変わっているよな」

「あ、アレはただ単にキャラ付けだよ。あっちの方が試練のドラゴンぽいかなと思って。こっちの方が本当のわたしです」

「そうなんだね。でも、どうしようか? これだと任務失敗になってしまうよね?」

『なら、わたしが直接町に行って事情を話そうか? 新しいギルドマスターが何か文句を言ってきたら潰すから』

「それだけはやめてくれ。お前が町に来たら大騒ぎになる」

『それなら、わたしの尻尾にあるリボンを持って行ってよ。それが試練を乗り越えた者に与えるわたしとご主人様マスターとの赤い糸だから』

 尻尾にあるリボンに手を伸ばしたいところだが、生憎と俺はメリュジーナの尻尾に巻きつかれている。だから取ることができない。

「なぁ、早くこの尻尾から解放しくれよ。じゃないとリボンを取れない」

「えー、ご主人様マスターはわざと捕まったままではないの? 先ほどの戦いを見る限り、簡単に抜け出せるかと思うのだけど?」

「まぁ、そうなんだけど面倒臭いんだよ。魔法の効果が切れたから、また発動しないといけない。無駄に魔力を消費したくない」

『なるほど、わかった』

 メリュジーナが尻尾の力を緩めて解放すると、俺は先端にあるリボンに手を伸ばして取り外す。

 とりあえずはこれをギルドマスターに見せるか。あの男の性格からして、信じようとはしないと思うがな。

『試練を乗り越えた証を渡したところで、ご主人様マスターのお名前をお聞きしても良い? 確かあの女がテオと言っていたけど?』

「ああ、俺の名はテオだ」

「テオ様ですね。とても良いお名前です。では、ご報告したらまたこの神殿に来てください。ご主人様マスターを好きなところに連れて行って上げますので」

「ああ、そうさせてもらう」

 フェアリードラゴンのメリュジーナと別れ、俺たちは依頼達成の報告をしにギルドに戻ることにした。





 ギルドの扉を開けて中に入ると、フロントを見渡す。するとギルドマスターの姿が見えた。

「よぉ! ギルドマスター」

「うん? なんだお前か。まだ神殿に行っていなかったのか。怖くなったのならこの町から出て行け。あれ以外でお前にさせてやる依頼なんかないからな」

 ギルドマスターに声をかけると、彼は俺たちが神殿に行っていないと思い込んだようだ。この町から出て行けと言ってくる。

「ああ、この町からは出て行くさ。でも、その前に報酬の方は貰っておかないと」

「報酬だと?」

「ああ、神殿のドラゴンは倒した。だから報酬をくれ」

「ダハハハハ! とうとう金に困って気でも狂ったか。そんな嘘に騙される俺ではない」

 事実を告げると、ギルドマスターは腹を抱えて笑い出す。だけどこの反応は想定内だ。

「本当よ! テオ君はドラゴンを倒したのだから!」

「何を言っておる。そんな嘘は通用しない。お前が生きてここにいる。それはつまり、お前たちが神殿に行っていない証拠だ。あのドラゴンの試練に挑戦したものは全て死んでおる」

 ギルドマスターは過去の歴史から推察して物事を語る。しかし、それは妄想の範囲でしかない。

 とりあえずはメリュジーナから貰ったリボンを見せてみるか。

 ポケットに手を突っ込み、赤いリボンを彼に見せる。

「これがドラゴンを倒したときの戦利品だ」

「それは……」

 神殿のドラゴンの試練を乗り越えた証を提出した瞬間、ギルドマスターの顔色が悪くなった。

 動揺しているようで、眼球が小さく上下左右に動いており、眼振を起こしている。

 この反応と言い、さっきの言葉といい、やっぱりギルドマスターは、メリュジーナの試練のことを知っている。だけど知らないふりをして、俺に依頼を受けさせた。

 どうせ勝てるはずがない。そう思っていたのに、俺は試練をクリアしてその証拠を提出した。

 彼の精神的ダメージは相当なもののはず。

「そ、そそ、そんな……ばか……な。本当にあのドラゴンを……倒したと言うのか」

「だからさっきからそう言っているじゃないの! テオ君はあのドラゴンを倒してその証を貰ってきたわ」

 再びルナさんが嘘ではないことを告げると、ギルドマスターは苦虫を噛み潰したかのような顔をした。

 そんな時、ギルドの扉が勢い良く開かれると鎧を来た男が姿を見せる。

「た……助けてくれ……このままではイルムガルドどころか……この町が滅びる」
 
しおりを挟む
script?guid=on
感想 97

あなたにおすすめの小説

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...