139 / 149
第八章
第十六話 嘘だろう!そんなバカな!
しおりを挟む
~新堀学園長視点~
『ここで3番手だったホッコータルマエが一気に追い抜く! エスポワールシチーを躱し、先頭に躍り出た!』
「いっけー! ホッコータルマエ!」
ワシは本日行われるかしわ記念のレースを見て、単勝がけをしていたホッコータルマエを全力で応援していた。
「いっけー、いけいけゴーゴー、タルマエ! おっせー、押せ押せ、押せ押せタルマエ!」
まるで甲子園の応援の如く、いつもよりも声を上げる。
このまま行けば、ホッコータルマエが1着を取って馬券が的中し、更に帝王が敗北してワシの経営する学園に転入する。まさに良いことずくしだ。
ホッコータルマエとハルウララの差は2馬身、ハルウララ如きが0.4秒の差を縮めて勝ちに行くことは不可能だ。
ホッコータルマエとは格が違うのだよ。生まれながらにして持った転生の才能がな。
このまま行けば間違いなくホッコータルマエの勝利でゴール板を駆け抜ける。そう思っていた。
だが、ゴール直前に、ホッコータルマエに騎乗している観光大使がいきなり落馬をしやがった。
「はぁ?」
思わず声が漏れてしまう。衝撃の出来事に、開いた口が塞がらなかった。
あいつ何をしている? どうしてゴール直前で落馬なんかした?
ゴール板に鼻がとどいた段階で落馬したのなら、まだ許される。だが、ゴール板に届くまえに落馬したのであれば、失格となってしまう。
「くそう。こうなったら最悪の事態を考えた方が良い。馬券が外れたとしても、帝王を負けさせろ!」
最悪の事態を考え、大きく息を吸い込む。そして息を吐くと同時に言葉を吐いた。
「いっけー、いけいけゴーゴー、シチー! おっせー、押せ押せ、押せ押せシャア!」
ホッコータルマエが失格となった場合のことも考慮し、今度はエスポワールシチーとシャアを応援する。
「かしわ記念3勝の実力を見せろ! エスポワールシチー! 生前の無念を晴らす時だ! まだ勝負は決まっていないぞ! シャア!」
ワシは2頭の馬を全力で応援した。
だが、ワシの応援は彼らには届かなかった。
画面越しにも分かる。僅かの差でハルウララが前に出ていた。
『エスポワールシチー、ハルウララ、シャアの3頭が並んでゴールイン! しかし僅かにハルウララが前に出ました。さぁ、判定の結果はどっちになるのか、ホッコータルマエか、それともハルウララか』
実況者の言葉で確信した。ハルウララが2着(仮)となった。ホッコータルマエに騎乗している観光大使が、落馬していたタイミングでゴール板にとどいていなければ、失格となる。
頼む、今回ばかりは普段信用していない神にも祈らせてもらう。ホッコータルマエが1着であってくれ!
『えーゴール前の写真判定の結果、ホッコータルマエに騎乗していた騎手がゴール前で落馬していたことが判明しました。そのため、順位を一つ繰上げ、ハルウララが1着となります。払い戻しの際はお気をつけください』
「くっそー!」
ホッコータルマエが失格となったアナウンスを聞き、声を張り上げて頭を掻き毟る。
「観光大使! テメー! どうして落馬なんてものをしやがった! 落馬しなければ勝っていただろうが!」
怒りの感情が爆発して思わず声を張り上げる。今回の敗北は納得できない。勝っていた勝負を自ら投げ出す様なものだ。
直ぐにタブレットを操作して公式サイトにアクセスし、先程のレースを見返す。
そしてホッコータルマエに騎乗している観光大使が落馬するタイミングで一時停止し、スロー再生で何が起きたのかを確認する。
目を大きく見開き、些細なことも見逃さないようにした。すると、あることに気付く。
こいつ、何か布切れの様なものを取ろうとしていないか? まさか、あの布切れを取ろうとして落馬しやがったのか?
「ふざけるな! たかが布切れ1枚のために、ワシの馬券を紙屑にした上で、帝王の転校の邪魔をしたと言うのか!」
衝撃の事実に、再び声を荒げる。
「これは許されない行為だ。観光大使には、戻ってきたら、6日間の停学処分だな」
本当は30日間の停学処分と行きたいが、それはさすがにやり過ぎだろう。他の関係者から苦情が来るかもしれない。
あれが事故による落馬であれば仕方がないとワシも思う。だが、あれは故意による落馬だ。競馬界において、故意の落馬は八百長疑惑を発生させてしまう。
変な噂が立ってワシが動き辛くなるのは避けたい。だからこそ、6日間の停学処分とし、騎乗停止させるしかない。
これは仕方がないことだ。別に馬券を外し、帝王の転校を阻まれた腹いせにやっていることではないのだ。
あくまでも世間的な問題に発展させないための処置にしか過ぎない。
「くそう。せっかく抽選を弄って帝王を勝率0パーセントの枠番にしたと言うのに、台無しではないか。だが、過ぎたことを悔やんでも仕方がない。次に切り替えるとしよう」
次に帝王が出走するのは東京優駿か。だが、その前には優駿牝馬があるな。まずはそっちのレースを楽しみながら、いかにして帝王を叩きのめすのかを考えるとしよう。
『ここで3番手だったホッコータルマエが一気に追い抜く! エスポワールシチーを躱し、先頭に躍り出た!』
「いっけー! ホッコータルマエ!」
ワシは本日行われるかしわ記念のレースを見て、単勝がけをしていたホッコータルマエを全力で応援していた。
「いっけー、いけいけゴーゴー、タルマエ! おっせー、押せ押せ、押せ押せタルマエ!」
まるで甲子園の応援の如く、いつもよりも声を上げる。
このまま行けば、ホッコータルマエが1着を取って馬券が的中し、更に帝王が敗北してワシの経営する学園に転入する。まさに良いことずくしだ。
ホッコータルマエとハルウララの差は2馬身、ハルウララ如きが0.4秒の差を縮めて勝ちに行くことは不可能だ。
ホッコータルマエとは格が違うのだよ。生まれながらにして持った転生の才能がな。
このまま行けば間違いなくホッコータルマエの勝利でゴール板を駆け抜ける。そう思っていた。
だが、ゴール直前に、ホッコータルマエに騎乗している観光大使がいきなり落馬をしやがった。
「はぁ?」
思わず声が漏れてしまう。衝撃の出来事に、開いた口が塞がらなかった。
あいつ何をしている? どうしてゴール直前で落馬なんかした?
ゴール板に鼻がとどいた段階で落馬したのなら、まだ許される。だが、ゴール板に届くまえに落馬したのであれば、失格となってしまう。
「くそう。こうなったら最悪の事態を考えた方が良い。馬券が外れたとしても、帝王を負けさせろ!」
最悪の事態を考え、大きく息を吸い込む。そして息を吐くと同時に言葉を吐いた。
「いっけー、いけいけゴーゴー、シチー! おっせー、押せ押せ、押せ押せシャア!」
ホッコータルマエが失格となった場合のことも考慮し、今度はエスポワールシチーとシャアを応援する。
「かしわ記念3勝の実力を見せろ! エスポワールシチー! 生前の無念を晴らす時だ! まだ勝負は決まっていないぞ! シャア!」
ワシは2頭の馬を全力で応援した。
だが、ワシの応援は彼らには届かなかった。
画面越しにも分かる。僅かの差でハルウララが前に出ていた。
『エスポワールシチー、ハルウララ、シャアの3頭が並んでゴールイン! しかし僅かにハルウララが前に出ました。さぁ、判定の結果はどっちになるのか、ホッコータルマエか、それともハルウララか』
実況者の言葉で確信した。ハルウララが2着(仮)となった。ホッコータルマエに騎乗している観光大使が、落馬していたタイミングでゴール板にとどいていなければ、失格となる。
頼む、今回ばかりは普段信用していない神にも祈らせてもらう。ホッコータルマエが1着であってくれ!
『えーゴール前の写真判定の結果、ホッコータルマエに騎乗していた騎手がゴール前で落馬していたことが判明しました。そのため、順位を一つ繰上げ、ハルウララが1着となります。払い戻しの際はお気をつけください』
「くっそー!」
ホッコータルマエが失格となったアナウンスを聞き、声を張り上げて頭を掻き毟る。
「観光大使! テメー! どうして落馬なんてものをしやがった! 落馬しなければ勝っていただろうが!」
怒りの感情が爆発して思わず声を張り上げる。今回の敗北は納得できない。勝っていた勝負を自ら投げ出す様なものだ。
直ぐにタブレットを操作して公式サイトにアクセスし、先程のレースを見返す。
そしてホッコータルマエに騎乗している観光大使が落馬するタイミングで一時停止し、スロー再生で何が起きたのかを確認する。
目を大きく見開き、些細なことも見逃さないようにした。すると、あることに気付く。
こいつ、何か布切れの様なものを取ろうとしていないか? まさか、あの布切れを取ろうとして落馬しやがったのか?
「ふざけるな! たかが布切れ1枚のために、ワシの馬券を紙屑にした上で、帝王の転校の邪魔をしたと言うのか!」
衝撃の事実に、再び声を荒げる。
「これは許されない行為だ。観光大使には、戻ってきたら、6日間の停学処分だな」
本当は30日間の停学処分と行きたいが、それはさすがにやり過ぎだろう。他の関係者から苦情が来るかもしれない。
あれが事故による落馬であれば仕方がないとワシも思う。だが、あれは故意による落馬だ。競馬界において、故意の落馬は八百長疑惑を発生させてしまう。
変な噂が立ってワシが動き辛くなるのは避けたい。だからこそ、6日間の停学処分とし、騎乗停止させるしかない。
これは仕方がないことだ。別に馬券を外し、帝王の転校を阻まれた腹いせにやっていることではないのだ。
あくまでも世間的な問題に発展させないための処置にしか過ぎない。
「くそう。せっかく抽選を弄って帝王を勝率0パーセントの枠番にしたと言うのに、台無しではないか。だが、過ぎたことを悔やんでも仕方がない。次に切り替えるとしよう」
次に帝王が出走するのは東京優駿か。だが、その前には優駿牝馬があるな。まずはそっちのレースを楽しみながら、いかにして帝王を叩きのめすのかを考えるとしよう。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
ワイルド・ソルジャー
アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。
世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。
主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。
旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。
ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。
世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。
他の小説サイトにも投稿しています。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜
SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー
魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。
「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。
<第一章 「誘い」>
粗筋
余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。
「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。
ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー
「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ!
そこで彼らを待ち受けていたものとは……
※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。
※SFジャンルですが殆ど空想科学です。
※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。
※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中
※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる