128 / 136
第八章
第五話 帝王は苫小牧からは逃げられない
しおりを挟む
観光大使から苫小牧のパンフレットなどを貰い、俺は教室に入った。
「帝王、おはよう」
「クロ、おはよう」
幼馴染と朝の挨拶を交わすと、彼女は俺の持っているパンフレットに視線を向けていることに気付く。
「あ、これか? さっきティッシュ配りをしている人から貰ったんだよ」
「あ、あの霊馬学園の? 私の時は貰えなかったけど?」
「どうやら、俺が苫小牧のことをあまり認知していないことに対してあまり良く思っていないようでな。強制的に渡されたんだ」
「へぇーそうなんだ? 苫小牧に行くの?」
「何でそうなる?」
突然のクロの言葉に困惑する。
どうしてパンフレットを貰っただけで、わざわざ北海道にまで行って、旅行をする発想になる?
「だって、そのパンフレット、お得な割引券が付いているじゃない」
クロに指摘され、初めてこのパンフレットに割引券が付いていることに気付く。
飛行機代、新幹線代などの移動費、宿泊先の旅館、苫小牧の観光スポットなどのお店などが、全て半額の値段になると言うものだ。
そして『半額で旅行ができるのに、苫小牧に行かないなんて選択肢はないよね!』と文字が書かれている。そして『差額の金は国からの補助金です。雇用保険料を使っている訳ですから、この機会に苫小牧に行かないなんてあり得ないですよね。このパンフレットにもお金がかかっています』と書かれている。
圧力が凄い。まるで強制的に苫小牧を観光させようとしているじゃないか。
確かに企業で働いている人が払っているお金を使わせてもらっていることになる。
でも、やり方が汚い。これでは人質を取られているようなものだ。
「と言ってもな。期限はゴールデンウィーク中じゃないか。今から予定を立てても急だし、それに1人で旅行って寂しいじゃないか」
苫小牧に行く気になれなかった俺は、適当な理由を捏ち上げる。
『1人じゃないよ。私も居るじゃない。ヌイグルミならお金がかからない。タダで旅行することができる』
「いや、お前と一緒に居るくらいなら1人で観光した方がマシだ」
『何でだよ! 私と一緒じゃ不満なの!』
ハルウララが怒り口調で言ってくるが、彼女のことだ。勝手にどこかにほつき歩いて探し回ることになって、観光を楽しめないのが目に見えている。
「だったら、私も帝王と一緒に苫小牧に行ってあげるよ」
俺が1人で旅行をしたくないと言うと、クロが自分も付いてくると言い出す。
だけど、彼女は連休に予定があったはず。
「クロは、ゴールデンウイークに予定があるんじゃなかったのか?」
「あ、あれね。偶然にも数分前にキャンセルすることになったのよ」
「そ、そうか」
偶然にも数分前に予定がなくなるとは災難だな。それにしても困ったな。クロが行く気になっているのに、どうやって断ろうか。
「話しは聞かせてもらったわ。苫小牧への旅行、わたしも参加させてもらうわ」
どうやって断ろうかと考えを巡らしていると、大和鮮赤までが会話に混ざってきた。
いや、何を言っているんだよ。確か連休は、大和主流と実家に帰るって話だったよな?
「大和鮮赤は、確か大和主流と実家に帰るって言っていなかったか?」
「そうだけど、つい数分前に事情が変わって、あたしだけが残ることになったのよ。だから連休はフリーな訳」
自分だけが残ることになったと告げると、彼女はタブレットを取り出し、何かを操作し始める。
そしてブツブツと独り言を言い出すが、声が小さかったので俺には聞こえなかった。
「これでよし……疑うと言うのなら、兄さんに聞いてもらっても良いわよ」
「いや、わざわざそんなことはしないって」
大和主流に訊くように促すと言うことは、事実なのだろう。それにしても、数分前に予定がキャンセルすることになるなんて、そんな偶然があるものだな。
そんなことを思っていると、脳裏にあるアイディアが思い浮かんだ。
「そんなに行きたいのなら、2人で行って来れば? そうすれば、この割引券も無駄にならないし、苫小牧に貢献することもできる」
我ながら何て良いアイディアだ。これなら、割引券やパンフレットを無駄にしないし、苫小牧の経済発展にも貢献ができる。
「それはダメよ。だって、これは帝王が貰ったのだから、その責任は果たすべき」
「お祭り娘の言う通りだわ。どうしてあの人がこのパンフレットをあなたに渡したと思うの? あなたに苫小牧の良さを知ってもらいたいからでしょう? なら、あなたが行かないでどうするの?」
正論を述べられ、俺は反論することができなくなる。
『前門の虎、後門の狼にならぬ、前門のクロ、後門の大和鮮赤の状態に、帝王がピンチ! 果たしてこの状況を打破することはできるのか!』
今の俺に降り掛かっている状況を楽しんでいるのか、ハルウララが突然実況を始める。
「いや、どう見たって俺の負けだろう。分かったよ。俺も行けば良いのだろう」
小さく息を吐き、連休は彼女たちと旅行をすることになった。
余談だが、その後に明日屯麻茶无にも旅行の件を知られ、偶然彼女も予定がなくなったと言うことで4人で旅行をすることになった。
偶然って意外にも続くものなんだな。
「帝王、おはよう」
「クロ、おはよう」
幼馴染と朝の挨拶を交わすと、彼女は俺の持っているパンフレットに視線を向けていることに気付く。
「あ、これか? さっきティッシュ配りをしている人から貰ったんだよ」
「あ、あの霊馬学園の? 私の時は貰えなかったけど?」
「どうやら、俺が苫小牧のことをあまり認知していないことに対してあまり良く思っていないようでな。強制的に渡されたんだ」
「へぇーそうなんだ? 苫小牧に行くの?」
「何でそうなる?」
突然のクロの言葉に困惑する。
どうしてパンフレットを貰っただけで、わざわざ北海道にまで行って、旅行をする発想になる?
「だって、そのパンフレット、お得な割引券が付いているじゃない」
クロに指摘され、初めてこのパンフレットに割引券が付いていることに気付く。
飛行機代、新幹線代などの移動費、宿泊先の旅館、苫小牧の観光スポットなどのお店などが、全て半額の値段になると言うものだ。
そして『半額で旅行ができるのに、苫小牧に行かないなんて選択肢はないよね!』と文字が書かれている。そして『差額の金は国からの補助金です。雇用保険料を使っている訳ですから、この機会に苫小牧に行かないなんてあり得ないですよね。このパンフレットにもお金がかかっています』と書かれている。
圧力が凄い。まるで強制的に苫小牧を観光させようとしているじゃないか。
確かに企業で働いている人が払っているお金を使わせてもらっていることになる。
でも、やり方が汚い。これでは人質を取られているようなものだ。
「と言ってもな。期限はゴールデンウィーク中じゃないか。今から予定を立てても急だし、それに1人で旅行って寂しいじゃないか」
苫小牧に行く気になれなかった俺は、適当な理由を捏ち上げる。
『1人じゃないよ。私も居るじゃない。ヌイグルミならお金がかからない。タダで旅行することができる』
「いや、お前と一緒に居るくらいなら1人で観光した方がマシだ」
『何でだよ! 私と一緒じゃ不満なの!』
ハルウララが怒り口調で言ってくるが、彼女のことだ。勝手にどこかにほつき歩いて探し回ることになって、観光を楽しめないのが目に見えている。
「だったら、私も帝王と一緒に苫小牧に行ってあげるよ」
俺が1人で旅行をしたくないと言うと、クロが自分も付いてくると言い出す。
だけど、彼女は連休に予定があったはず。
「クロは、ゴールデンウイークに予定があるんじゃなかったのか?」
「あ、あれね。偶然にも数分前にキャンセルすることになったのよ」
「そ、そうか」
偶然にも数分前に予定がなくなるとは災難だな。それにしても困ったな。クロが行く気になっているのに、どうやって断ろうか。
「話しは聞かせてもらったわ。苫小牧への旅行、わたしも参加させてもらうわ」
どうやって断ろうかと考えを巡らしていると、大和鮮赤までが会話に混ざってきた。
いや、何を言っているんだよ。確か連休は、大和主流と実家に帰るって話だったよな?
「大和鮮赤は、確か大和主流と実家に帰るって言っていなかったか?」
「そうだけど、つい数分前に事情が変わって、あたしだけが残ることになったのよ。だから連休はフリーな訳」
自分だけが残ることになったと告げると、彼女はタブレットを取り出し、何かを操作し始める。
そしてブツブツと独り言を言い出すが、声が小さかったので俺には聞こえなかった。
「これでよし……疑うと言うのなら、兄さんに聞いてもらっても良いわよ」
「いや、わざわざそんなことはしないって」
大和主流に訊くように促すと言うことは、事実なのだろう。それにしても、数分前に予定がキャンセルすることになるなんて、そんな偶然があるものだな。
そんなことを思っていると、脳裏にあるアイディアが思い浮かんだ。
「そんなに行きたいのなら、2人で行って来れば? そうすれば、この割引券も無駄にならないし、苫小牧に貢献することもできる」
我ながら何て良いアイディアだ。これなら、割引券やパンフレットを無駄にしないし、苫小牧の経済発展にも貢献ができる。
「それはダメよ。だって、これは帝王が貰ったのだから、その責任は果たすべき」
「お祭り娘の言う通りだわ。どうしてあの人がこのパンフレットをあなたに渡したと思うの? あなたに苫小牧の良さを知ってもらいたいからでしょう? なら、あなたが行かないでどうするの?」
正論を述べられ、俺は反論することができなくなる。
『前門の虎、後門の狼にならぬ、前門のクロ、後門の大和鮮赤の状態に、帝王がピンチ! 果たしてこの状況を打破することはできるのか!』
今の俺に降り掛かっている状況を楽しんでいるのか、ハルウララが突然実況を始める。
「いや、どう見たって俺の負けだろう。分かったよ。俺も行けば良いのだろう」
小さく息を吐き、連休は彼女たちと旅行をすることになった。
余談だが、その後に明日屯麻茶无にも旅行の件を知られ、偶然彼女も予定がなくなったと言うことで4人で旅行をすることになった。
偶然って意外にも続くものなんだな。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
タイムワープ艦隊2024
山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。
この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる