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第八章
第四話 観光大使の宣伝
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季節は4月から5月に移り変わり、後数日でゴールデンウィークに突入する。
当然学園の敷地にあった桜は花を散らせ、緑の葉だけが残っている。
「5月か。まだ入学してから1ヶ月も経っていなかったんだな」
この学園に通うことになってから、濃い日々を送っている。
入学初日に大和鮮赤から勝負を申し込まれたり、義父が乗り込んで、俺を連れ戻そうとしたり、断ったことがきっかけで刺客を送り付けられたり、トウカイテイオーを召喚したことで、ハルウララと仲違いをしたり、本当に様々なことが起こった。
「さて、そろそろ校舎に向かうとするか」
ハルウララを連れ、部屋から出ると男子寮から外に足を踏み入れる。
太陽の日差しを浴びながら校舎へと向かっていくと、男性の声が耳に入ってきた。
「おはようございます。今日も素晴らしい天気ですね。こんな日は、芝は良でとても走りやすいでしょうが、砂は馬場がパサついているので、走りづらいのですよね」
生徒会か風紀委員が朝の挨拶運動でもしているのだろうか?
最初はそんなことを思っていた。しかし近付いてみると、声をかけている男は1人だけだった。しかも、俺たちとは違う制服を着ている。
「あの制服、霊馬学園の制服じゃないか」
義父が経営している学園の生徒が、どうしてトレイセント学園に? もしかして、義父の刺客か?
いや、まだ次の出走メンバーは決まっていない。刺客と決めつけるのは早計だ。しかし、刺客ではなかった場合、どうして他校の学生がこんな時間に学園の敷地内にいる?
普通に考えれば、生徒会や風紀院が集まって、事情聴取的なことをしていてもおかしくはない。
だが、そのようなことにはなっていないところを見ると、彼の行動はこの学園では問題視されていないと言うことになる。と言うことは、許可を得ているのだろうか?
仮に許可を得ていたとしても、安心はできない。一応、警戒しつつも近付くか。
彼の横を通り過ぎないと、校舎には入れないからな。
他校の生徒を訝しみつつも、彼に近付く。
「おはようございます」
「お、おはようございます」
挨拶をされたので、取り敢えず挨拶を返す。
変に目を付けられないうちに、この場から去って昇降口に入ろうと思っていると、目の前に腕を出された。彼の手にはポケットティッシュが握られている。
「良かったらどうぞお使いください」
「あ、ありがとう」
礼を言って受け取ったポケットに視線を向ける。
ポケットティッシュの底敷には『北海道の観光名所みんな大好き苫小牧』と言う文字が書かれ、1頭の馬が載っていた。鹿毛の馬体にオレンジと緑のストライプのマスクの特徴をみるに、この馬はホッコータルマエだろう。
「ありがとうございます。良ければお時間を取らせませんので、アンケートに答えていただけませんか?」
男が満面の笑みを浮かべてくる。
しまった。これは罠だったか。
ティッシュ配りを見ると、タダだからと言ってつい貰ってしまう。だけど、受け取った瞬間に契約成立となり、相手の質問に答えないといけなくなる。
普段は面倒臭いから敢えて貰わないようにしていたが、油断した。まさか学園内でお店のようなことが起きてしまうなんて。
今更受け取ったものを返す訳にはいかない。こうなったら、アンケートに答えようじゃないか。
アンケート用紙を受け取ると、内容に目を通す。
北海道出身であるかや、苫小牧を認知しているかなど、北海道や苫小牧をメインにした内容だった。
あまり時間に余裕がないので、素早く書き、アンケート用紙を彼に渡す。
「ありがとうございます。私は苫小牧の観光大使を務めております。二つ名を観光大使と申します。苫小牧、苫小牧をどうぞ宜しくお願いします」
笑みを向ける観光大使に苦笑いを浮かべ、そのまま昇降口に向かう。
「ちょっと待ってください」
待つように言われ、俺の足は止まる。そして油の切れたブリキのオモチャの様に、ゆっくりと振り向く。
「まだ何か?」
「いえ、アンケートの内容を見た感じだと、あなたは苫小牧についてあまり認知をされていない様ですね。これはいけません。苫小牧を知らないなんて、人生の半分を損しております。こちら、私が作ったパンフレットになります。宜しければ一度読んで頂けると大変嬉しいです」
観光大使が俺の手に一つのパンフレットを持たせる。
「あ、ありがとう。もし行きたいと思えたら、みんなにもこのパンフレットを見せてみるよ」
「それは本当ですか! ぜひ、お友達ともお話しの上で、旅行の際に北海道を訪れる時には、苫小牧にお越しください。観光大使の名にかけて、満足していただけることをこの命にかけて誓いましょう」
自身の胸を軽く叩き、堂々と言葉を連ねる彼に対し、苦笑いを浮かべる。
いや、一生懸命なのは伝わってきたが、命をかけるとか、流石に重すぎるだろう。
そんなことを思っていながら、無事に昇降口の中に入ることができた。
『ねぇ、帝王。本当に苫小牧に行くの?』
これまで無言で事の顛末を見守っていたハルウララが声をかけてきた。
「どうだろう? 別にゴールデンウイーク中に旅行に行く予定はないからな。それに今から誘ったところで、みんな予定があるだろうし」
一応軽く目を通して、このパンフレットはゴミ箱行きだろうな。普通、北海道と言えば、札幌とか函館とかが一番旅行として楽しめる様な気がする。
競馬場もあるしな。
当然学園の敷地にあった桜は花を散らせ、緑の葉だけが残っている。
「5月か。まだ入学してから1ヶ月も経っていなかったんだな」
この学園に通うことになってから、濃い日々を送っている。
入学初日に大和鮮赤から勝負を申し込まれたり、義父が乗り込んで、俺を連れ戻そうとしたり、断ったことがきっかけで刺客を送り付けられたり、トウカイテイオーを召喚したことで、ハルウララと仲違いをしたり、本当に様々なことが起こった。
「さて、そろそろ校舎に向かうとするか」
ハルウララを連れ、部屋から出ると男子寮から外に足を踏み入れる。
太陽の日差しを浴びながら校舎へと向かっていくと、男性の声が耳に入ってきた。
「おはようございます。今日も素晴らしい天気ですね。こんな日は、芝は良でとても走りやすいでしょうが、砂は馬場がパサついているので、走りづらいのですよね」
生徒会か風紀委員が朝の挨拶運動でもしているのだろうか?
最初はそんなことを思っていた。しかし近付いてみると、声をかけている男は1人だけだった。しかも、俺たちとは違う制服を着ている。
「あの制服、霊馬学園の制服じゃないか」
義父が経営している学園の生徒が、どうしてトレイセント学園に? もしかして、義父の刺客か?
いや、まだ次の出走メンバーは決まっていない。刺客と決めつけるのは早計だ。しかし、刺客ではなかった場合、どうして他校の学生がこんな時間に学園の敷地内にいる?
普通に考えれば、生徒会や風紀院が集まって、事情聴取的なことをしていてもおかしくはない。
だが、そのようなことにはなっていないところを見ると、彼の行動はこの学園では問題視されていないと言うことになる。と言うことは、許可を得ているのだろうか?
仮に許可を得ていたとしても、安心はできない。一応、警戒しつつも近付くか。
彼の横を通り過ぎないと、校舎には入れないからな。
他校の生徒を訝しみつつも、彼に近付く。
「おはようございます」
「お、おはようございます」
挨拶をされたので、取り敢えず挨拶を返す。
変に目を付けられないうちに、この場から去って昇降口に入ろうと思っていると、目の前に腕を出された。彼の手にはポケットティッシュが握られている。
「良かったらどうぞお使いください」
「あ、ありがとう」
礼を言って受け取ったポケットに視線を向ける。
ポケットティッシュの底敷には『北海道の観光名所みんな大好き苫小牧』と言う文字が書かれ、1頭の馬が載っていた。鹿毛の馬体にオレンジと緑のストライプのマスクの特徴をみるに、この馬はホッコータルマエだろう。
「ありがとうございます。良ければお時間を取らせませんので、アンケートに答えていただけませんか?」
男が満面の笑みを浮かべてくる。
しまった。これは罠だったか。
ティッシュ配りを見ると、タダだからと言ってつい貰ってしまう。だけど、受け取った瞬間に契約成立となり、相手の質問に答えないといけなくなる。
普段は面倒臭いから敢えて貰わないようにしていたが、油断した。まさか学園内でお店のようなことが起きてしまうなんて。
今更受け取ったものを返す訳にはいかない。こうなったら、アンケートに答えようじゃないか。
アンケート用紙を受け取ると、内容に目を通す。
北海道出身であるかや、苫小牧を認知しているかなど、北海道や苫小牧をメインにした内容だった。
あまり時間に余裕がないので、素早く書き、アンケート用紙を彼に渡す。
「ありがとうございます。私は苫小牧の観光大使を務めております。二つ名を観光大使と申します。苫小牧、苫小牧をどうぞ宜しくお願いします」
笑みを向ける観光大使に苦笑いを浮かべ、そのまま昇降口に向かう。
「ちょっと待ってください」
待つように言われ、俺の足は止まる。そして油の切れたブリキのオモチャの様に、ゆっくりと振り向く。
「まだ何か?」
「いえ、アンケートの内容を見た感じだと、あなたは苫小牧についてあまり認知をされていない様ですね。これはいけません。苫小牧を知らないなんて、人生の半分を損しております。こちら、私が作ったパンフレットになります。宜しければ一度読んで頂けると大変嬉しいです」
観光大使が俺の手に一つのパンフレットを持たせる。
「あ、ありがとう。もし行きたいと思えたら、みんなにもこのパンフレットを見せてみるよ」
「それは本当ですか! ぜひ、お友達ともお話しの上で、旅行の際に北海道を訪れる時には、苫小牧にお越しください。観光大使の名にかけて、満足していただけることをこの命にかけて誓いましょう」
自身の胸を軽く叩き、堂々と言葉を連ねる彼に対し、苦笑いを浮かべる。
いや、一生懸命なのは伝わってきたが、命をかけるとか、流石に重すぎるだろう。
そんなことを思っていながら、無事に昇降口の中に入ることができた。
『ねぇ、帝王。本当に苫小牧に行くの?』
これまで無言で事の顛末を見守っていたハルウララが声をかけてきた。
「どうだろう? 別にゴールデンウイーク中に旅行に行く予定はないからな。それに今から誘ったところで、みんな予定があるだろうし」
一応軽く目を通して、このパンフレットはゴミ箱行きだろうな。普通、北海道と言えば、札幌とか函館とかが一番旅行として楽しめる様な気がする。
競馬場もあるしな。
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