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第七章
第九話 控え室での出来事(ライバルたち編)
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~大和主流視点~
天皇賞・春が開催される日がやってきた。俺は控え室へと向かい、そして扉を開ける。
控え室の中には解説担当の虎石と大気釈迦流、そして周滝音が居た。まだ集合時間まで余裕があるからか、他校の生徒は来ていない。
「お、大和主流が来たね。生徒会役員が風紀委員よりも遅く来て良いのかな?」
俺よりも早く来たことに対してマウントを取りたいのか、周滝音は小馬鹿にするような口調で問い質してくる。
「別に生徒会役員は、風紀委員よりも先に来なければならないと言う校則は一切ない。別にお前たちより遅く来ても何も問題ないのだが?」
「大和主流の言う通りだ。しょうもないことに首を突っ込んでいると、風紀委員としての品位が損なわれてしまう。お前のせいで俺の評価まで下がってしまうだろうが」
「まさかの身内からの裏切り! でもある意味正論だから反論できない」
風紀委員長からの言葉にショックを受けたようで、周滝音はその場で項垂れる。
これ以上は、こいつらの相手をしている訳にはいかない。
壁に背を預け、時間が過ぎていくのを待つ。
しばらくすると、他校の生徒たちも次々とやってきた。G Iレースに出走する馬と契約している霊馬騎手だけあって、身に纏うオーラと言うか雰囲気が全然違う。
中にも目を見張るのは本当に学生なのか? と思ってしまう程の大男だ。露出している肌には傷だらけであり、勝負服越しにも膨らんでいる筋肉が、過酷な筋トレを熟していることを物語っていた。
「あの人、来る場所を間違えているんじゃない? どこからどう見ても世紀末に登場していそうな雰囲気だよ」
「確かに場違いな人物のようにも見えるが、勝負服を着ている。間違いなく、俺たちと同じ霊馬騎手だ」
周滝音と大気釈迦流の話し声が聞こえてくる。すると、2人の会話が聞こえたのか、大男が2人に近付いた。
他の人にも聞こえる音量で話すからだ。これは完全に目を付けられたな。流石にレース前で暴力行為を行えば、一発で出走取り消しの処分が行われる。だから喧嘩になるようなことにはならないと思うのだが。
「お前たち、今俺のことを話していたよな?」
「うおっ! 聞こえていた! でも落ち着け、僕には大気釈迦流と言うメイン盾が居るんだ。最悪の場合は彼の後に隠れれば良い」
「おい、聞こえているぞ。お前、帰ったら風紀委員の仕事を3倍にするからな。それはともかく何か用か? こいつがお前のことを見て話題に上げていたことを気にしているのなら、こいつに土下座をさせる。だが、それで納得いかないと言うのであれば、レース終了後に喧嘩を買ってやってもいいぞ」
大男と大気釈迦流が互いに睨み合う。
「お前は……違うな? なら、こっちか?」
一度大気釈迦流を見ていた彼は、今度は周滝音に視線を向ける。
「お前……名は何だ?
「ヒッ! 言っておくが、ジャギーとは契約していないからな!」
「いや、あの馬はレースに一度も出走していないだろうが」
周滝音の言葉に大気釈迦流が冷静にツッコミを入れる。まぁ、あいつが言いたいことも分からなくはない。
「相手に名を尋ねるときはまず自分から名乗るのが礼儀だろう。お前の名前は何だよ。どうせ里野拳士郎とか名村拳士郎とか、橋野拳士郎とかその辺だろう?」
「確かに自分から名乗るのが礼儀だな。俺の名前は叢林衣嚢。真名と同じく、契約している愛馬はジャングルポケットだ」
「ジャングルポケットだって!」
周滝音が大男の名を叫び、咄嗟に顔を彼らに向けた。
あの男が契約している愛馬はジャングルポケットか。なら、ある意味アグネスタキオンとは因縁の仲でもあるな。
「えー、それでは時間になりましたので、出走する愛馬の顕現をお願いします」
虎石が愛馬を出現させるように促し、俺はダイワメジャーを顕現させた。
「なるほど、今回出走する馬は、スピードシンボリ、ハクリヨウ、タマモクロス、メジロデュレン、ダイワメジャー、カミノクレッセ、マンハッタンカフェ、ジャングルポケット、アグネスタキオン、リンカーン、メイショウサムソン、トウカイトリック、エアシャカール、ビートブラック、ウインバリアシオンですね」
それぞれの愛馬を顕現したその後、一頭の馬がアグネスタキオンに近付く。あの馬は、ジャングルポケットか。
『アグネスタキオン、この時を待っていたぜ。皐月賞の借りはここで返す!』
『君、誰だっけ?』
威勢良く言葉を連ねるジャングルポケットに対して、アグネスタキオンが返した言葉は、誰? の一言だった。
『ジャングルポケット様だ! この俺様を忘れたとは言わせないぞ!』
『ジャングルパケット君? ああ、僕に2馬身以上差を付けられて負けた馬が、そんな名前だったような?』
『ジャングルポケットだ! 何がパケットだよ! 『パ』じゃなくって『ポ』! パピプペポの『ポ』だ!』
『ダンツフレーム君に因縁を付けられるならまだしも、3着だったジャングルバケット君に因縁を付けられてもね。格の違いを見せつけたはずなのに、まだ懲りないのか?』
『だからジャングルポケットだ! お前、わざと言い間違えをしているだろうが!』
『落ち着け、ジャングルポケット、アグネスタキオンも揶揄うなよ』
2頭が言葉を交わしている中、1頭の青鹿毛の馬が近付く。
『お前はマンハッタンカフェか。お前もこいつに負けているだろうが』
『確かにアグネスタキオンには負けた。だけど、それは事実だ。でもたった1戦しかしていないから、そこまで固執してはいない。当時世代最強馬、故障して二度と走れない体になっていなければ、おそらく三冠馬になっていたかもしれない幻の名馬の一角だ。でも、それは生前での話。霊馬となった今では、生前の記録など参考程度にしかならない。生前勝てなくとも今勝てば良いだけの話だ』
『確かにお前の言う通りだな。生前お前を超えると言う目標を果たせなかった以上、今回こそ勝ってみせる』
「あまり時間がないので、皆さんの愛馬を下見所に連れて行きますね。厩務員の皆さん、お願いします」
虎石が呼びかけると、厩務員の人たちがやってきた。俺も担当の人にダイワメジャーを預ける。
今回、あいつらでやりあってくれれば、俺が勝つ可能性も出てくるだろう。
天皇賞・春が開催される日がやってきた。俺は控え室へと向かい、そして扉を開ける。
控え室の中には解説担当の虎石と大気釈迦流、そして周滝音が居た。まだ集合時間まで余裕があるからか、他校の生徒は来ていない。
「お、大和主流が来たね。生徒会役員が風紀委員よりも遅く来て良いのかな?」
俺よりも早く来たことに対してマウントを取りたいのか、周滝音は小馬鹿にするような口調で問い質してくる。
「別に生徒会役員は、風紀委員よりも先に来なければならないと言う校則は一切ない。別にお前たちより遅く来ても何も問題ないのだが?」
「大和主流の言う通りだ。しょうもないことに首を突っ込んでいると、風紀委員としての品位が損なわれてしまう。お前のせいで俺の評価まで下がってしまうだろうが」
「まさかの身内からの裏切り! でもある意味正論だから反論できない」
風紀委員長からの言葉にショックを受けたようで、周滝音はその場で項垂れる。
これ以上は、こいつらの相手をしている訳にはいかない。
壁に背を預け、時間が過ぎていくのを待つ。
しばらくすると、他校の生徒たちも次々とやってきた。G Iレースに出走する馬と契約している霊馬騎手だけあって、身に纏うオーラと言うか雰囲気が全然違う。
中にも目を見張るのは本当に学生なのか? と思ってしまう程の大男だ。露出している肌には傷だらけであり、勝負服越しにも膨らんでいる筋肉が、過酷な筋トレを熟していることを物語っていた。
「あの人、来る場所を間違えているんじゃない? どこからどう見ても世紀末に登場していそうな雰囲気だよ」
「確かに場違いな人物のようにも見えるが、勝負服を着ている。間違いなく、俺たちと同じ霊馬騎手だ」
周滝音と大気釈迦流の話し声が聞こえてくる。すると、2人の会話が聞こえたのか、大男が2人に近付いた。
他の人にも聞こえる音量で話すからだ。これは完全に目を付けられたな。流石にレース前で暴力行為を行えば、一発で出走取り消しの処分が行われる。だから喧嘩になるようなことにはならないと思うのだが。
「お前たち、今俺のことを話していたよな?」
「うおっ! 聞こえていた! でも落ち着け、僕には大気釈迦流と言うメイン盾が居るんだ。最悪の場合は彼の後に隠れれば良い」
「おい、聞こえているぞ。お前、帰ったら風紀委員の仕事を3倍にするからな。それはともかく何か用か? こいつがお前のことを見て話題に上げていたことを気にしているのなら、こいつに土下座をさせる。だが、それで納得いかないと言うのであれば、レース終了後に喧嘩を買ってやってもいいぞ」
大男と大気釈迦流が互いに睨み合う。
「お前は……違うな? なら、こっちか?」
一度大気釈迦流を見ていた彼は、今度は周滝音に視線を向ける。
「お前……名は何だ?
「ヒッ! 言っておくが、ジャギーとは契約していないからな!」
「いや、あの馬はレースに一度も出走していないだろうが」
周滝音の言葉に大気釈迦流が冷静にツッコミを入れる。まぁ、あいつが言いたいことも分からなくはない。
「相手に名を尋ねるときはまず自分から名乗るのが礼儀だろう。お前の名前は何だよ。どうせ里野拳士郎とか名村拳士郎とか、橋野拳士郎とかその辺だろう?」
「確かに自分から名乗るのが礼儀だな。俺の名前は叢林衣嚢。真名と同じく、契約している愛馬はジャングルポケットだ」
「ジャングルポケットだって!」
周滝音が大男の名を叫び、咄嗟に顔を彼らに向けた。
あの男が契約している愛馬はジャングルポケットか。なら、ある意味アグネスタキオンとは因縁の仲でもあるな。
「えー、それでは時間になりましたので、出走する愛馬の顕現をお願いします」
虎石が愛馬を出現させるように促し、俺はダイワメジャーを顕現させた。
「なるほど、今回出走する馬は、スピードシンボリ、ハクリヨウ、タマモクロス、メジロデュレン、ダイワメジャー、カミノクレッセ、マンハッタンカフェ、ジャングルポケット、アグネスタキオン、リンカーン、メイショウサムソン、トウカイトリック、エアシャカール、ビートブラック、ウインバリアシオンですね」
それぞれの愛馬を顕現したその後、一頭の馬がアグネスタキオンに近付く。あの馬は、ジャングルポケットか。
『アグネスタキオン、この時を待っていたぜ。皐月賞の借りはここで返す!』
『君、誰だっけ?』
威勢良く言葉を連ねるジャングルポケットに対して、アグネスタキオンが返した言葉は、誰? の一言だった。
『ジャングルポケット様だ! この俺様を忘れたとは言わせないぞ!』
『ジャングルパケット君? ああ、僕に2馬身以上差を付けられて負けた馬が、そんな名前だったような?』
『ジャングルポケットだ! 何がパケットだよ! 『パ』じゃなくって『ポ』! パピプペポの『ポ』だ!』
『ダンツフレーム君に因縁を付けられるならまだしも、3着だったジャングルバケット君に因縁を付けられてもね。格の違いを見せつけたはずなのに、まだ懲りないのか?』
『だからジャングルポケットだ! お前、わざと言い間違えをしているだろうが!』
『落ち着け、ジャングルポケット、アグネスタキオンも揶揄うなよ』
2頭が言葉を交わしている中、1頭の青鹿毛の馬が近付く。
『お前はマンハッタンカフェか。お前もこいつに負けているだろうが』
『確かにアグネスタキオンには負けた。だけど、それは事実だ。でもたった1戦しかしていないから、そこまで固執してはいない。当時世代最強馬、故障して二度と走れない体になっていなければ、おそらく三冠馬になっていたかもしれない幻の名馬の一角だ。でも、それは生前での話。霊馬となった今では、生前の記録など参考程度にしかならない。生前勝てなくとも今勝てば良いだけの話だ』
『確かにお前の言う通りだな。生前お前を超えると言う目標を果たせなかった以上、今回こそ勝ってみせる』
「あまり時間がないので、皆さんの愛馬を下見所に連れて行きますね。厩務員の皆さん、お願いします」
虎石が呼びかけると、厩務員の人たちがやってきた。俺も担当の人にダイワメジャーを預ける。
今回、あいつらでやりあってくれれば、俺が勝つ可能性も出てくるだろう。
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