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第七章
第八話 天皇賞・春 控え室での出来事(京都競馬場編)
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~周滝音視点~
天皇賞・春の日がやってきた。僕は大気釈迦流と一緒に控え室に来る。しかし、部屋の中には誰も居らず、僕たちだけだった。
「大気釈迦流、いくら何でも1時間前集合って早くない? まだ誰も居ないのだけど?」
「遅刻するよりはマシだろう」
「そうだけど、世間一般的に考えて5分~10分前に着くのが普通じゃない……いや、君の思考は普通じゃなかったね。今更だけど」
小さく息を吐き、今更ながら幼馴染が普通じゃないことを思い出す。
「まだ時間があるのだ。せっかくだから天皇賞・春のコースの復習でもしておくか」
大気釈迦流がタブレットを取り出して操作すると、空中ディスプレイが表示され、京都競馬場が映り出した。
「天皇賞・春は、京都競馬場で行われる。阪神や中山と同じで内回りと外回りが存在しており、2つのコースは第3コーナーで分岐し、第4コーナーで合流する作りとなっている。そして第2コーナーの奥には、向こう正面に連なる長い直線が設けられてある。だが、今回の天皇賞・春ではこの長い直線は使われない」
「使用されるのは、1800メートルの外回りと、1600メートルの内外、そして1400メートルの砂の場合だったね」
「京都競馬場の名物と言えばなんだ? 周滝音答えろ」
「どて煮! それと焼き鳥&唐揚げも美味しいよね!」
「バカもん! 誰が名物料理のことを聞いた! さっきまでコースの話をしていただろうが! 京都競馬場の名物とも言えるコースのポイントを聞いているんだ!」
あ、そっちね。てっきり名物料理のことを聞いているのかと思っていたよ。
右手を後頭部に当て、失敗を誤魔化すように笑う。
「京都競馬場の名物と言えるコースと言えば、第3コーナーの坂だね。外回りのコースの場合は高低差4.3メートル、内回りは3.1メートルあって、向こう正面の半ばから第3コーナーにかけて駆け上がり、第4コーナーにかけて下がっていく……だったよね?」
「そうだ。勾配がつけられてあるのは第3コーナー付近だけ、それ以外は平坦なコースとなっている。第3コーナーに小高い丘があるイメージだな。最初の頃はゆっくり上がり、ゆっくり下がる戦法が鉄則だと言われていたが、時代と共に変化し、下り坂で惰性をつけて、平坦な直線を向くと言う戦法がセオリーとなっている」
彼からの話を聞いて思うのだけど、どうしてポイントとなる箇所を僕に教えてくれるのだろうか?
「今回は君も出るのに、どうしてそんなことを教えてくれるの? 幼馴染だから?」
僕は思わず疑問に思ったことを彼に訊ねる。すると、大気釈迦流は真剣な目で僕のことを見てきた。
「そんなこと決まっているだろう。こんなことを教えたところで、俺の勝率には影響しないと判断したからだ」
敵に塩を送ったところで痛手にはならないと堂々と言う彼に対して、思わず苦笑いを浮かべてしまった。
うん、そんなところだろうと正直思っていたよ。本当に倒したいライバルだと思っていたら、相手が有利になることなんて普通は言わないからね。
「そんなことよりも話を進めるぞ。坂の頂上付近となる残り800メートル地点からペースが上がるレースが多いが、3000メートルを超えるレースでは、自然と勢いがつく。1周目の坂を下り、スタンドからの大歓声を浴びる観客席側と続く場面で、折り合いを乱さすにスタミナを温存できるかが重要なポイントだ」
「やっぱりスタミナか。アビリティはスタミナ回復系も入れておいた方が良さそうだね。因みに大気釈迦流はどんなアビリティを使うの?」
「言う訳がないだろうが。まぁ、スタミナを回復する系のアビリティは、最低1つは持っていた方が良い。だからそれは使う」
「それ以外は?」
「だから言う訳がないだろうが! 俺が敢えて言うことは、勝率に影響を与えないものだけだとさっき言っただろう!」
少々感情的になったのか、大気釈迦流は語気を強める。
チッ、どうせなら使用するアビリティまで聞きたかったのに、本当にけちんぼうだ。
まぁ、逆に教えられないと言うことは、知られるとまずいようなアビリティを使うってことだね。絞り込むのは難しそうだけど、何とかなるだろう。
アビリティを編集して今回のレースに役立ちそうなものを設定する。
「まぁ、こんなものかな? 勝てるか分からないけれど、それなりにやるしかない。正直に言って、勝てる自信はないのだけど」
今回出走するメンバーが来るのを待っていると、扉が開かれて解説担当の虎石が中に入ってきた。
「あれ? お二人とも早い到着ですね」
「うん、このバカが控え室に行くと言い出して、1時間前集合をしていたよ」
僕は大気釈迦流を指差す。すると幼馴染は僕を睨んできた。
あ、彼のことをバカって言ったから怒っちゃった?
「周滝音、人に指を向けてはいけないだろうが」
そっちかい!
天皇賞・春の日がやってきた。僕は大気釈迦流と一緒に控え室に来る。しかし、部屋の中には誰も居らず、僕たちだけだった。
「大気釈迦流、いくら何でも1時間前集合って早くない? まだ誰も居ないのだけど?」
「遅刻するよりはマシだろう」
「そうだけど、世間一般的に考えて5分~10分前に着くのが普通じゃない……いや、君の思考は普通じゃなかったね。今更だけど」
小さく息を吐き、今更ながら幼馴染が普通じゃないことを思い出す。
「まだ時間があるのだ。せっかくだから天皇賞・春のコースの復習でもしておくか」
大気釈迦流がタブレットを取り出して操作すると、空中ディスプレイが表示され、京都競馬場が映り出した。
「天皇賞・春は、京都競馬場で行われる。阪神や中山と同じで内回りと外回りが存在しており、2つのコースは第3コーナーで分岐し、第4コーナーで合流する作りとなっている。そして第2コーナーの奥には、向こう正面に連なる長い直線が設けられてある。だが、今回の天皇賞・春ではこの長い直線は使われない」
「使用されるのは、1800メートルの外回りと、1600メートルの内外、そして1400メートルの砂の場合だったね」
「京都競馬場の名物と言えばなんだ? 周滝音答えろ」
「どて煮! それと焼き鳥&唐揚げも美味しいよね!」
「バカもん! 誰が名物料理のことを聞いた! さっきまでコースの話をしていただろうが! 京都競馬場の名物とも言えるコースのポイントを聞いているんだ!」
あ、そっちね。てっきり名物料理のことを聞いているのかと思っていたよ。
右手を後頭部に当て、失敗を誤魔化すように笑う。
「京都競馬場の名物と言えるコースと言えば、第3コーナーの坂だね。外回りのコースの場合は高低差4.3メートル、内回りは3.1メートルあって、向こう正面の半ばから第3コーナーにかけて駆け上がり、第4コーナーにかけて下がっていく……だったよね?」
「そうだ。勾配がつけられてあるのは第3コーナー付近だけ、それ以外は平坦なコースとなっている。第3コーナーに小高い丘があるイメージだな。最初の頃はゆっくり上がり、ゆっくり下がる戦法が鉄則だと言われていたが、時代と共に変化し、下り坂で惰性をつけて、平坦な直線を向くと言う戦法がセオリーとなっている」
彼からの話を聞いて思うのだけど、どうしてポイントとなる箇所を僕に教えてくれるのだろうか?
「今回は君も出るのに、どうしてそんなことを教えてくれるの? 幼馴染だから?」
僕は思わず疑問に思ったことを彼に訊ねる。すると、大気釈迦流は真剣な目で僕のことを見てきた。
「そんなこと決まっているだろう。こんなことを教えたところで、俺の勝率には影響しないと判断したからだ」
敵に塩を送ったところで痛手にはならないと堂々と言う彼に対して、思わず苦笑いを浮かべてしまった。
うん、そんなところだろうと正直思っていたよ。本当に倒したいライバルだと思っていたら、相手が有利になることなんて普通は言わないからね。
「そんなことよりも話を進めるぞ。坂の頂上付近となる残り800メートル地点からペースが上がるレースが多いが、3000メートルを超えるレースでは、自然と勢いがつく。1周目の坂を下り、スタンドからの大歓声を浴びる観客席側と続く場面で、折り合いを乱さすにスタミナを温存できるかが重要なポイントだ」
「やっぱりスタミナか。アビリティはスタミナ回復系も入れておいた方が良さそうだね。因みに大気釈迦流はどんなアビリティを使うの?」
「言う訳がないだろうが。まぁ、スタミナを回復する系のアビリティは、最低1つは持っていた方が良い。だからそれは使う」
「それ以外は?」
「だから言う訳がないだろうが! 俺が敢えて言うことは、勝率に影響を与えないものだけだとさっき言っただろう!」
少々感情的になったのか、大気釈迦流は語気を強める。
チッ、どうせなら使用するアビリティまで聞きたかったのに、本当にけちんぼうだ。
まぁ、逆に教えられないと言うことは、知られるとまずいようなアビリティを使うってことだね。絞り込むのは難しそうだけど、何とかなるだろう。
アビリティを編集して今回のレースに役立ちそうなものを設定する。
「まぁ、こんなものかな? 勝てるか分からないけれど、それなりにやるしかない。正直に言って、勝てる自信はないのだけど」
今回出走するメンバーが来るのを待っていると、扉が開かれて解説担当の虎石が中に入ってきた。
「あれ? お二人とも早い到着ですね」
「うん、このバカが控え室に行くと言い出して、1時間前集合をしていたよ」
僕は大気釈迦流を指差す。すると幼馴染は僕を睨んできた。
あ、彼のことをバカって言ったから怒っちゃった?
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