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第六章

第二十六話 皐月賞決着

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東海帝王トウカイテイオウ視点~





 最終直線に入った。だが、俺は柵側にある水溜りで、トウカイテイオーの速度が落ちることを懸念して外側を走らせた。しかしそんな中でも、ゴールドシップとエアシャカールは柵側を走り、速度を落とすことなく直線を突っ切る。

 更に直線に入っても、アルアインやイシノサンデーが名馬の伝説レジェンドオブアフェイマスホースを使用し、追い抜かれてしまう。

 2位だったものが、現在7位まで順位を落としてしまっている。

「序盤のリードを保つ見込みが甘ったナゾ? さすが皐月賞馬が集められた皐月賞だナゾ? 5着以内入賞できればラッキーナゾね」

 隣を並走しているナゾに騎乗しているなぞなぞ博士が、ポツリと呟くのが聞こえてきた。

 ナゾは序盤に必殺技を使用してしまっているため、もう使うことはできない。だが、トウカイテイオーはまだ発動させてはいない。

 逆転するチャンスはまだあるはずだ。

 先頭を走るエアシャカールが左右に斜行している。その影響で2番手以降は思うように追い抜けない状況だ。

 エアシャカールが斜行している範囲で考えれば、大外を走れば追い抜けるかもしれない。それを実現するには、トウカイテイオーも名馬の伝説レジェンドオブアフェイマスホースを発動させるしかない。

「トウカイテイオー、お前も名馬の伝説レジェンドオブアフェイマスホースを使え!」

『あー、悪いんだが、それは無理だ』

「え?」

 必殺技を使うことができないと即答され、思わず声が漏れてしまった。

「必殺技が使えないってどう言うことだよ!」

『俺の名馬の伝説レジェンドオブアフェイマスホースには条件がある。それを満たすことができないと、発動しない』

 必殺技を使用するのに条件があると告げられ、俺は絶望の淵に立たされた。

 現在の順位を考えると、例え残りのアビリティを使用したとしても、5着以内入賞するのがやっとだ。1着を取れなければ俺の負けで、義父の経営する霊馬学園に編入することになってしまう。

 くそう。こんな時にそんな真実を告げてほしくなかった。

『悪い、俺も伝えそびれた。だが、皇帝の息子として無様な走りをする訳にはいかない。なんとかして5着以内に入ってみせる』

 入賞してみせると言うが、それではダメなんだ。1着を取れなければ。

「くそう。トウカイテイオーの必殺技が使えれば、まだ可能性があると言うのに……うん? 必殺技? そうだ!」

 どうして忘れていたのだろうか。トウカイテイオーには、もう一つの必殺技があるじゃないか。

 大和鮮赤ダイワスカーレットから貰った絆アビリティ、先頭への拘りオブセッションウィズバトルが!

 使えるかどうかは不明だ。だけど、これに賭けるしかない。

 トウカイテイオーをエアシャカールの斜行範囲外にまで移動させ、準備を完了させる。

『200メートルを切った! 先頭はエアシャカールのまま、最後の坂を駆け登る!』

「絆アビリティ! 先頭への拘りオブセッションウィズバトル!」

 絆アビリティ名を叫び、トウカイテイオーに鞭を入れる。その瞬間、彼の速度が一気に上がり、考えられない速度で追い上げをみせる。

『先頭はエアシャカール! しかしここで外側からトウカイテイオー! 凄まじい末脚で駆け上がってくる!』

 実況担当の中山が、俺が順位を上げたことを告げると、大気釈迦流エアシャカールがこちらを見る。彼の表情は驚きに満ちていて、思わず口角を上げてしまった。

「やっと追い付いた。これもお前の計算の内か?」

 煽るような言葉を投げかけた後、俺はゴールに視線を向ける。

 ダイワスカーレットは、生前1着か2着しか取っておらず、生涯連対と言う偉業を成し遂げた。そんな彼女の伝説が必殺技の効果は1番を取る力を発揮するだ。終盤で使用すれば、どんな不利でも覆すことができる。

 アプリゲームだったら、絶対に星5の人権持ちとなるだろう。

 自動能力オートアビリティの【登山大好きっ子】が発動しているので、最後の坂でも速度を落とすことはない。

 最後の坂を越えて、平坦なコースに戻った。けれど、油断はできない。このまま一気に叩き込む!

「アビリティ発動! 闘魂注入!」

 最後のアビリティを使用し、トウカイテイオーに鞭を入れる。

 任意能力アービトラリーアビリティ【闘魂注入】こいつは最後の直線で使用すると、疲弊した馬に気合いを入れ直し、根性を上げて最後まで走り切る力を発揮することができる。

『先頭はトウカイテイオー! しかし、後続も追い上げてきた! 2番手のエアシャカール、3番手のゴールドシップが距離を詰め、トウカイテイオーはリードを失う! 更に後方からイシノサンデーが上がってきた! 四天王の意地を見せるか! 横一杯に広がり、ここでナゾも追い上げて来る!』

 僅かに獲得したリードも殆どない状態となった。やっぱり二冠馬同士の争いとなると、実力は殆ど変わらないのかもしれない。だけど、勝負に負ける訳にはいかない俺のこのレースにかける想いや覚悟は、他のやつらよりも上だ。

「帝王の維持を見せろ! トウカイテイオー!」

『うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!』

『ゴールイン! 大混戦となった皐月賞、勝ったのはトウカイテイオー! 2着以降は写真判定と言う大混戦となりました』

「え? 何? 何が起きたの? トウカイテイオーがダイワスカーレットの技を使った?」

「そんな風に見えたけど?」

 ゴール板を駆け抜け、観客席側ホームストレッチから響めきの声が聞こえてきた。

 そう言えば、無我夢中で使ったけれど、絆アビリティって、有効扱いになるのだろうか? もし、イカサマ扱いをされたら、失格となってしまう。

 勝ったのに不安でしょうがない気持ちでいると、アナウンスが聞こえた。

『えー、会場にお越しの皆様も、もしかしたら気付いているかと思いますが、トウカイテイオーがダイワスカーレットの必殺技を使用した件ですが、協議を行うことになりました。話し合いの結果では、順位の入れ替わりが起こりますので、少々お待ちください』

 競技が行われる。そう言われ、俺の鼓動は早鐘を打った。

 もし、失格となってしまっては、俺は負けてしまうことになる。

東海帝王トウカイテイオウ

 心ここに在らずの状態でいると、大気釈迦流エアシャカールが近付いて声をかけてきた。

「約束を覚えているだろうな。もし、失格となった場合はお前の負けだ。風紀委員に入ってもらう……と言いたいところだが、お前は全力を出して俺の計算を上回った。今回は完敗だ。風紀委員に入る件は白紙に戻させてもらう」

 大気釈迦流エアシャカールがそんなことを言うが、今はそれどころではない。どっちにしろ、反則負けとなった場合、俺は転校することになる。

 固唾を飲んで見守ると、再びアナウンスが流れる。

『皆様お待たせしました。協議の結果、有効となりました。よって、今年度の皐月賞優勝馬は、トウカイテイオーに決まりました』

「スゲーぜ! トウカイテイオーがダイワスカーレットの技を使うなんて!」

「いったいどうすれば使えるんだよ! そんなアビリティ売っていなかったよな!」

 観客席側ホームストレッチ側から再び声が上がる。しかし今度は歓声となり、会場全体が盛り上がった。

 今回も危ないレースだったが、どうにか皐月賞を優勝することができた。大和鮮赤ダイワスカーレットから絆アビリティを貰っていなければ、恐らく負けていただろう。

 掲示板には、1着にトウカイテイオーの番号である2の数字が表示されていた。





掲示板の結果

1着2番
    >3/4
2着17番
    >ハナ
3着18番
    >クビ 
4着7番
    >アタマ
5着3番






払い戻し名          払い戻し金
単勝             560ポイント
馬連             2007P
馬単             4874P
三連単            17584P
三連複            2676P
ワイド2-17         453P
   2-18         635P
   17-18        503P
複勝 2番           448P
   17番          520P
   18番          304P

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