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第六章

第二十二話 序盤からの攻防

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 ゲートが開き、俺はトウカイテイオーに走る合図を送る。

『ゲートが開きました。おっと! 1番ゲートのラガーレグルスがバッドステータスを発動した模様。ゲートから出ることができません! 生前の再放送となりました』

『お知らせします。1番のラガーレグルスは競走中止となりました』

『それ以外はまずまずの揃ったスタートとなっています。先頭ハナを取ったのはナゾ。続いてロゴタイプ、その後をクリンチャー、この3頭がレースを引っ張る形となりました』

『ここで最初の坂を駆け登ります』

『3馬身程離されて、トウカイテイオー、その後ろをハクタイセイ、並んでイシノサンデーが続いており、ここでサクラスピードオーが追い上げてきた。今、トウカイテイオーと並ぶ!』

『サクラスピードオーは、生前2番人気であったものの、7着で終わると言う苦い経験がありますからね。今回こそは優勝してみせる意気込みを感じさせる走りです』

『1馬身程離されてアルアイン。ダイタクリーヴァとシンコウカリドが並走。その後ろをミスキャスト、そしてトップコマンダーとダンツフレーム、が追いかける形となっています。そしてその外側をペルシアンナイトが追走。2馬身差でエアシャカールとゴールドシップが殿と言う形での競馬となりました』

 トウカイテイオーが最初の坂を駆け登り、第1コーナーに差し掛かる。

 まだ序盤だけあって、誰もアビリティを使用してはいない。やっぱり、レースが荒れるのは中盤から終盤にかけてか。

「今回のレースは強豪揃いナゾ? 渋っていては、勝機を逃してしまうナゾ? ナゾ、やるナゾ?」

名馬の伝説レジェンドオブアフェイマスホース! ナゾの謎ザ・ミステリーオブナゾ!』

 何!

 前方からナゾが名馬の伝説レジェンドオブアフェイマスホースの名を叫ぶ声が耳に入った。ナゾの得意脚質は逃げだ。逃げ切りを狙うために速度を上げるのか。

 そう思っていたが、ナゾが速度を上げることはない。

 不発……な訳がないよな。でも、どうして何を起きない?

『なぁ、東海帝王トウカイテイオウ?』

「どうした? トウカイテイオー」

『どうして、お前は俺と同じ名前なんだ? 謎だ?』

 はぁ?

 トウカイテイオーはいったいどうしたんだ? 今はそんな会話をしている暇はないだろう?

「お前、何を言っているんだよ。今はそんなくだらない会話をしている場合ではないんだぞ!」

『すまない。どうしても気になってしまってだな。この謎を解明しないと、レースに集中できそうにない』

 まずいな。レースに集中できないと負ける可能性が高まってしまう。仕方がない。ここは話してレースに集中してもらう。

「それはお前と契約するためだ。同じ馬名だと、召喚する際に縁が深まり、成功する可能性が高くなるからだ」

『なるほど、そうなのか。これで疑問が解消された』

 どうやら納得してくれたようだな。これでレースに集中してくれる。

『なぁ、東海帝王トウカイテイオウ? どうして、競走馬はレースに走らせるんだ? 謎だ? この疑問が解消されないとレースに集中できない』

「またかよ! 競馬が初めて誕生したのは、古代ギリシャの時代からだ。その頃は戦車競馬と呼ばれ、2頭の馬で二輪の車両チャリオットを引かせて競っていた。古代オリンピックの種目にもなっていたんだ。その名残が続いて色々と形を変えて、今の競馬になったんだ」

 簡単に纏めてトウカイテイオーの疑問に答える。

 これで、今度こそレースに集中してくれれば良いのだが。

『なぁ、東海帝王トウカイテイオウ? どうして俺の血を受け継ぐトウカイテイオー産駒は姿を消したんだ?』

 またかよ! しかも、今度は話題が重い!

 いったいトウカイテイオーはどうしてしまったんだよ。

『なぁ、どうして俺は、生前2着だったんだ? 謎だ? この疑問が解消されないとレースに集中できない』

「知るかよ! お前の能力不足だったんじゃないのか!」

『なぁ、どうして中山競馬場は中山なんだ? 謎だ? この疑問が解消されないとレースに集中できない』

「はぁ? お前はいきなり何を言っているんだよ」

 どうやら、他の馬たちも同じ状況のようだ。そうなってくると、トウカイテイオーが知りたがりの幼子のように色々と聞いてしまうのは、ナゾの名馬の伝説レジェンドオブアフェイマスホースの影響によるものだと思っていた方が良いだろう。

 どんな効果なのかは想像することしかできないが、おそらく知力を低下させ、思ったことを疑問にして口に出させる。そして騎手と競走馬の判断力を鈍らせ、速度を低下させることもできる能力。

 仮定での話だが、強力な能力となっていることは確かだ。

『ここでナゾが後続を突き放す! 2番手との差は5馬身程となりました。そしてナゾの独走状態のまま、第2コーナーを曲がっていきます』

 ナゾが第2コーナーを曲がってしまったか。早くこの状態を解かないと、このままでは逃げ切られてしまう。

『『『『『謎だ? 謎だ? 謎だ? 謎だ? 謎だ? 謎だ? 謎だ? 謎だ? 謎だ? 謎だ? 謎だ?』』』』』

 競走馬全員による『謎だ?』コールが至るところから聞こえてくる。

 カオスだし、うるさい。本当に集中できないぞ。くそう。いつもだったらトウカイテイオーが打開策を考えてくれるのに、頼みの綱がこれでは彼に頼ることは困難だ。

 早くこの解決策を見出さなければ、ナゾの独走のままゴールされてしまう。

 何かあるはずだ。この状況を変える一手がどこかに。

 思考を巡らせ、俺はこの状況を打開する方法を思案する。
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