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第六章
第二十話 新堀学園長トウカイテイオーを応援する
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~新堀学園長視点~
「ただいま返し馬が終わったところですが、今回出走する馬たちは、殆どが実績のある馬たちですね。皆さんの予想は終わったでしょうか?」
女子アナが司会進行を行い、ワシたちに声をかける。ワシは今、ウイニングホースと言うテレビ番組に出演しているのだ。
本当は面倒臭いので、辞退したいところであったが、この番組のディレクターは霊馬学園に寄付金をしてくれるスポンサーだ。なので、断ることができずに、渋々参加しておる。
女子アナの言葉に、ワシは無言で頷く。
「どうやら皆さんの予想は終わったようですね。では、まず新堀学園長からお願いします」
予想を発表するように促され、ワシはフリップボードを出す。
「ワシの予想はトウカイテイオーですね。今の開始馬を見た感じも元気よく走っていますし、馬体もしっかりしているので、きっと良いレースをしてくれるでしょう」
苦笑いを浮かべ、テーブルで隠れている自身の腕を抓った。
こうしていないと、うっかり本音を言ってしまいそうになる。
番組が始まる前、ワシはディレクターに今回の皐月賞はゴールドシップが勝つと予想していることを告げた。
だが、あやつはそれだと番組が面白くないと言い、トウカイテイオーの馬券を買うように強要してきたのである。
たく、寄付をしてくれているディレクターの番組でなければ、本当の予想を言っていたのに。
しかも腹立たしいことに、予想だけではなく、馬券までトウカイテイオーを買わされてしまった。馬券の内容は応援馬券、単勝と複勝のダブル効果を持ち、初心者にはオススメの馬券だ。
だが、この馬券には、その馬のことを応援しているよ。ファンだから頑張ってね! などの意味も含まれている。
このワシが! 嘘でも! トウカイテイオーのファンで! 応援しているなど! 虫唾が走る!
「お、新堀学園長はやはり息子さんの騎乗するトウカイテイオーが勝つと」
「ええ、親バカだと思われますが、やはり息子には活躍して欲しいですからね」
「いえいえ、そんなことはないと思いますよ。では、他の方の予想はどうでしょうか?」
女子アナが他の出演者の予想を訊ねる。
くそう。今にも発狂しそうだ。こうなったら、裏でゴールドシップの単勝を買うか。ククク、このレースは100パーセントゴールドシップが勝つように仕組んでいる。例えトウカイテイオーが有利にレースを進めても、第四コーナーを曲がったところでゴールドシップが追い抜くだろう。
「ガハハハハ!」
「新堀学園長、私の予想がそんなに可笑しいのですか? そんなに大声で笑うほどダメな予想をしているのでしょうか?」
出演者の男性がワシのことを睨んできた。どうやら声に出して笑ってしまったらしい。
「あ、いや……別にあなたの予想を笑った訳では」
生放送だと言うのに、場の雰囲気が悪くなった。
ゲッ! ディレクターがワシのことを睨んでいる。まずい。早く何とかしないと寄付金が!
~東海帝王視点~
『馬場状態が悪いな。これは少しばかり走り難いかもしれない』
芝の上を駆け抜けている中、トウカイテイオーがポツリと言葉を漏らす。
そう言えば、クロの説明で皐月賞の馬場は悪いと言っていたな。やっぱり、多少なりとも走りに影響が出そうだ。
そんなことを思いつつ、開始馬が終わったところでポケットに向かおうとする。すると1頭の馬が近付いて来た。
芦毛で頭に黒いマスクを被っており、額には英語でGold Shipと描かれてある。
ゴールドシップだ。
『そこの馬、君トウカイテイオーだよね。メジロマックイーンに負けて泣かされた馬』
『メジロマックイーンに負けたことは事実だが、泣かされていねーよ!』
いきなりの暴言に、トウカイテイオーが声を荒げる。
感情が乱されて声を上げるトウカイテイオーって珍しいな。余程無敗の夢を絶たれたことを気にしているようだ。
『今のは冗談だって。まぁ、メジロマックイーンと同じで最終的に勝つのは俺だから、負けても泣かないでね』
捨て台詞を吐くと、ゴールドシップはこの場から離れ、ポケットへと向かって行った。
『だから泣いていない!』
彼の背中に吠えるようにして言葉を投げ付けるトウカイテイオーの首筋をなで、落ち着くように促す。
「落ち着け、これもあいつの作戦だ。挑発して冷静な判断ができないようにさせる作戦に決まっている」
『絶対にゴールドシップには負けない。そしてあいつを泣かす』
だめだこりゃ、メジロマックイーンの話題が出て興奮してしまっている。レース発走までに冷静になってくれれば良いのだが。
冷静になるように願いつつ、ポケットの中に入ると、他の馬たちと同様にぐるぐると歩かせる。
しばらくの間鼻息が荒かったトウカイテイオーだったが、10周以上周りながら歩くと落ち着きを取り戻してくれた。
さて、そろそろ開始時間だな。
レース発走時刻が近づき、俺は手綱を操ってトウカイテイオーをポケットの外に出す。
その瞬間、頬に水滴のようなものが落ちた。頬に手を当てると、それは間違いなく水だ。
そして落下してくる水滴は次第に数が増え、芝を濡らしていく。
「嘘だろう。今日のレースは晴れのはずだ。それなのに、どうしていきなり雨が降り出した?」
「ただいま返し馬が終わったところですが、今回出走する馬たちは、殆どが実績のある馬たちですね。皆さんの予想は終わったでしょうか?」
女子アナが司会進行を行い、ワシたちに声をかける。ワシは今、ウイニングホースと言うテレビ番組に出演しているのだ。
本当は面倒臭いので、辞退したいところであったが、この番組のディレクターは霊馬学園に寄付金をしてくれるスポンサーだ。なので、断ることができずに、渋々参加しておる。
女子アナの言葉に、ワシは無言で頷く。
「どうやら皆さんの予想は終わったようですね。では、まず新堀学園長からお願いします」
予想を発表するように促され、ワシはフリップボードを出す。
「ワシの予想はトウカイテイオーですね。今の開始馬を見た感じも元気よく走っていますし、馬体もしっかりしているので、きっと良いレースをしてくれるでしょう」
苦笑いを浮かべ、テーブルで隠れている自身の腕を抓った。
こうしていないと、うっかり本音を言ってしまいそうになる。
番組が始まる前、ワシはディレクターに今回の皐月賞はゴールドシップが勝つと予想していることを告げた。
だが、あやつはそれだと番組が面白くないと言い、トウカイテイオーの馬券を買うように強要してきたのである。
たく、寄付をしてくれているディレクターの番組でなければ、本当の予想を言っていたのに。
しかも腹立たしいことに、予想だけではなく、馬券までトウカイテイオーを買わされてしまった。馬券の内容は応援馬券、単勝と複勝のダブル効果を持ち、初心者にはオススメの馬券だ。
だが、この馬券には、その馬のことを応援しているよ。ファンだから頑張ってね! などの意味も含まれている。
このワシが! 嘘でも! トウカイテイオーのファンで! 応援しているなど! 虫唾が走る!
「お、新堀学園長はやはり息子さんの騎乗するトウカイテイオーが勝つと」
「ええ、親バカだと思われますが、やはり息子には活躍して欲しいですからね」
「いえいえ、そんなことはないと思いますよ。では、他の方の予想はどうでしょうか?」
女子アナが他の出演者の予想を訊ねる。
くそう。今にも発狂しそうだ。こうなったら、裏でゴールドシップの単勝を買うか。ククク、このレースは100パーセントゴールドシップが勝つように仕組んでいる。例えトウカイテイオーが有利にレースを進めても、第四コーナーを曲がったところでゴールドシップが追い抜くだろう。
「ガハハハハ!」
「新堀学園長、私の予想がそんなに可笑しいのですか? そんなに大声で笑うほどダメな予想をしているのでしょうか?」
出演者の男性がワシのことを睨んできた。どうやら声に出して笑ってしまったらしい。
「あ、いや……別にあなたの予想を笑った訳では」
生放送だと言うのに、場の雰囲気が悪くなった。
ゲッ! ディレクターがワシのことを睨んでいる。まずい。早く何とかしないと寄付金が!
~東海帝王視点~
『馬場状態が悪いな。これは少しばかり走り難いかもしれない』
芝の上を駆け抜けている中、トウカイテイオーがポツリと言葉を漏らす。
そう言えば、クロの説明で皐月賞の馬場は悪いと言っていたな。やっぱり、多少なりとも走りに影響が出そうだ。
そんなことを思いつつ、開始馬が終わったところでポケットに向かおうとする。すると1頭の馬が近付いて来た。
芦毛で頭に黒いマスクを被っており、額には英語でGold Shipと描かれてある。
ゴールドシップだ。
『そこの馬、君トウカイテイオーだよね。メジロマックイーンに負けて泣かされた馬』
『メジロマックイーンに負けたことは事実だが、泣かされていねーよ!』
いきなりの暴言に、トウカイテイオーが声を荒げる。
感情が乱されて声を上げるトウカイテイオーって珍しいな。余程無敗の夢を絶たれたことを気にしているようだ。
『今のは冗談だって。まぁ、メジロマックイーンと同じで最終的に勝つのは俺だから、負けても泣かないでね』
捨て台詞を吐くと、ゴールドシップはこの場から離れ、ポケットへと向かって行った。
『だから泣いていない!』
彼の背中に吠えるようにして言葉を投げ付けるトウカイテイオーの首筋をなで、落ち着くように促す。
「落ち着け、これもあいつの作戦だ。挑発して冷静な判断ができないようにさせる作戦に決まっている」
『絶対にゴールドシップには負けない。そしてあいつを泣かす』
だめだこりゃ、メジロマックイーンの話題が出て興奮してしまっている。レース発走までに冷静になってくれれば良いのだが。
冷静になるように願いつつ、ポケットの中に入ると、他の馬たちと同様にぐるぐると歩かせる。
しばらくの間鼻息が荒かったトウカイテイオーだったが、10周以上周りながら歩くと落ち着きを取り戻してくれた。
さて、そろそろ開始時間だな。
レース発走時刻が近づき、俺は手綱を操ってトウカイテイオーをポケットの外に出す。
その瞬間、頬に水滴のようなものが落ちた。頬に手を当てると、それは間違いなく水だ。
そして落下してくる水滴は次第に数が増え、芝を濡らしていく。
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