93 / 136
第六章
第十八話 控え室でのやりとり
しおりを挟む
作戦会議が終わり、俺は騎手の控え室へと向かった。扉を開けて中に入ると、半分以上の騎手がおり、その中には馬の耳のフードを被っている先輩の姿もあった。
「なぞなぞ博士、どうしてここに?」
「なぞなーぞ♡ どうしてここにとは、とんだご挨拶だナゾ? 今回のレースに出走するからに決まっているナゾ?」
声をかけると、なぞなぞ博士は猫のように手を丸めて片足で立ち、例の謎のポーズを取った。すると、丈が合っていないようで、手を前に突き出した勢いで、袖が伸び、彼女の手を隠す。
勝負服まで袖を長くしているのかよ。制服の時の丈の長さは、わざとだったんだな。
「前回私が出したなぞなぞは覚えているナゾ?」
前回出したなぞなぞ。それって確か、俺となぞなぞ博士が初めて会った時に出されたなぞなぞだったよな。えーと、確か。
「入口は1つ、出口は3つある騎手が身に付けているものは何かと言うものだったよな?」
「そうだナゾ? これまで連勝している君は、今回も1着を取れる未来の出口にたどり着けるか見物だナゾ? 当然、私も1着を取れるように全力を出すから、OP馬だからと言って侮って貰っては困るナゾ? 油断していると、私が足元を掬うナゾ?」
念を押して油断するなとなぞなぞ博士は忠告してくる。今回優勝を競い合う敵とは言え、後輩思いの一面が出ているなと思った。
なぞなぞ博士と軽い雑談をしているが、他の騎手たちは無言のままジッと目の前を見つめている。
みんなレースに向けて集中しているのだろう。
そんなことを思っていると、扉が開き、大気釈迦流が入ってきた。
「大気釈迦流」
「一応年上なんだぞ。先輩を付けろ。まぁ良い。この前、お前に今回のレースは勝率95パーセントと言ったが、アレは訂正させてもらう」
訂正と言う言葉を聞き、俺は生唾を飲み込む。
まさか、100パーセントに仕上げたと言うのか。
「今回のレース、俺が勝率96パーセントの確率で勝たせてもらう」
1パーセント上げたと言う言葉を聞き、俺はズッコケそうになった。
たった1パーセントかよ。それなら、わざわざ報告する必要はないんじゃないのか?
いや、確かに95パーセントから96パーセントに引き上げるのも難しいのかもしれないが、俺だったらわざわざ言わない。
「そうか。なら、俺は4パーセントと言う訳だな」
「いや、お前の勝率はたったの1パーセントだ。そして勝率2パーセントはゴールドシップ、それ以外が纏めて1パーセントと言う結論に達した」
彼が淡々と言葉を述べると、控え室に居る騎手たちが一斉に大気釈迦流を睨み付ける。
それもそうだろう。自分の勝率が1パーセント以下だと言われて喜ぶ騎手はいない。
いや、これも彼の作戦なのだろう。レース前から挑発することで、騎手の集中力を切らせる狙いがあるかもしれない。
「そうか、なら1パーセントの確率で勝たせてもらう。ここまで大見えを切ったのだ。もし負けたのなら、相当な恥をかくことになるな」
「そうナゾね。1パーセント以下の私が優勝すれば、大穴どころではないナゾ? もし、私が勝ったら、罰ゲームとしてパンツ1枚でVR競馬場を走ってもらうナゾ?」
「ふん、良いだろう。万が一にでも、お前が優勝するようなことになれば、その罰ゲームを受け入れてやる。だが、これだけは言っておこう。お前が勝つことはないと言う確証はある」
大気釈迦流の挑発めいた言葉に対し、なぞなぞ博士は睨み付けるが、大気釈迦流は涼しい顔のままだ。
張り詰めた空気のまま、次々と残りの騎手たちが控え室の中に入ってきた。
「悪い、悪い。スマホゲームをしていたら、時間ギリギリになってしまった。めんご」
最後の騎手である黄金船が控え室の中に入って謝る。言葉では謝っているが、軽く舌を出してふざけた態度を取っているので、本当に悪いとは思っていないのだろう。
まぁ、時間ギリギリではあるが、間に合っている。
「それでは、メンバーが集まりましたので、皆さんは今回騎乗する名馬を呼び出してください」
解説担当の虎石に促され、俺はトウカイテイオーをこの場に顕現させる。
「なるほど、今回出馬する馬は、トウカイテイオー、ナゾ、エアシャカール、ゴールドシップ、ワールドエース、ロゴタイプ、ハクタイセイ、イシノサンデー、サクラスピードーオー、アルアイン、ラガーレグルス、クリンチャー、ペルシアンナイト、ダイタクリーヴァ、トップコマンダー、ダンツフレーム、シンコウカリド、ミスキャストですね。それでは、パドックへと連れて行きます。厩務員の皆さん、お願いします」
虎石が声をかけると、厩務員の人たちが部屋の中に入ってきた。当然、その中にはいつものようにクロが居る。
彼女は俺のところに来ると、トウカイテイオーの手綱を握った。
「それじゃ、トウカイテイオーは連れて行くわね」
「ああ、頼んだ」
トウカイテイオーをクロに任せると、時が来るのを待つ。そして時間となり、俺は下見所へと向かった。
「なぞなぞ博士、どうしてここに?」
「なぞなーぞ♡ どうしてここにとは、とんだご挨拶だナゾ? 今回のレースに出走するからに決まっているナゾ?」
声をかけると、なぞなぞ博士は猫のように手を丸めて片足で立ち、例の謎のポーズを取った。すると、丈が合っていないようで、手を前に突き出した勢いで、袖が伸び、彼女の手を隠す。
勝負服まで袖を長くしているのかよ。制服の時の丈の長さは、わざとだったんだな。
「前回私が出したなぞなぞは覚えているナゾ?」
前回出したなぞなぞ。それって確か、俺となぞなぞ博士が初めて会った時に出されたなぞなぞだったよな。えーと、確か。
「入口は1つ、出口は3つある騎手が身に付けているものは何かと言うものだったよな?」
「そうだナゾ? これまで連勝している君は、今回も1着を取れる未来の出口にたどり着けるか見物だナゾ? 当然、私も1着を取れるように全力を出すから、OP馬だからと言って侮って貰っては困るナゾ? 油断していると、私が足元を掬うナゾ?」
念を押して油断するなとなぞなぞ博士は忠告してくる。今回優勝を競い合う敵とは言え、後輩思いの一面が出ているなと思った。
なぞなぞ博士と軽い雑談をしているが、他の騎手たちは無言のままジッと目の前を見つめている。
みんなレースに向けて集中しているのだろう。
そんなことを思っていると、扉が開き、大気釈迦流が入ってきた。
「大気釈迦流」
「一応年上なんだぞ。先輩を付けろ。まぁ良い。この前、お前に今回のレースは勝率95パーセントと言ったが、アレは訂正させてもらう」
訂正と言う言葉を聞き、俺は生唾を飲み込む。
まさか、100パーセントに仕上げたと言うのか。
「今回のレース、俺が勝率96パーセントの確率で勝たせてもらう」
1パーセント上げたと言う言葉を聞き、俺はズッコケそうになった。
たった1パーセントかよ。それなら、わざわざ報告する必要はないんじゃないのか?
いや、確かに95パーセントから96パーセントに引き上げるのも難しいのかもしれないが、俺だったらわざわざ言わない。
「そうか。なら、俺は4パーセントと言う訳だな」
「いや、お前の勝率はたったの1パーセントだ。そして勝率2パーセントはゴールドシップ、それ以外が纏めて1パーセントと言う結論に達した」
彼が淡々と言葉を述べると、控え室に居る騎手たちが一斉に大気釈迦流を睨み付ける。
それもそうだろう。自分の勝率が1パーセント以下だと言われて喜ぶ騎手はいない。
いや、これも彼の作戦なのだろう。レース前から挑発することで、騎手の集中力を切らせる狙いがあるかもしれない。
「そうか、なら1パーセントの確率で勝たせてもらう。ここまで大見えを切ったのだ。もし負けたのなら、相当な恥をかくことになるな」
「そうナゾね。1パーセント以下の私が優勝すれば、大穴どころではないナゾ? もし、私が勝ったら、罰ゲームとしてパンツ1枚でVR競馬場を走ってもらうナゾ?」
「ふん、良いだろう。万が一にでも、お前が優勝するようなことになれば、その罰ゲームを受け入れてやる。だが、これだけは言っておこう。お前が勝つことはないと言う確証はある」
大気釈迦流の挑発めいた言葉に対し、なぞなぞ博士は睨み付けるが、大気釈迦流は涼しい顔のままだ。
張り詰めた空気のまま、次々と残りの騎手たちが控え室の中に入ってきた。
「悪い、悪い。スマホゲームをしていたら、時間ギリギリになってしまった。めんご」
最後の騎手である黄金船が控え室の中に入って謝る。言葉では謝っているが、軽く舌を出してふざけた態度を取っているので、本当に悪いとは思っていないのだろう。
まぁ、時間ギリギリではあるが、間に合っている。
「それでは、メンバーが集まりましたので、皆さんは今回騎乗する名馬を呼び出してください」
解説担当の虎石に促され、俺はトウカイテイオーをこの場に顕現させる。
「なるほど、今回出馬する馬は、トウカイテイオー、ナゾ、エアシャカール、ゴールドシップ、ワールドエース、ロゴタイプ、ハクタイセイ、イシノサンデー、サクラスピードーオー、アルアイン、ラガーレグルス、クリンチャー、ペルシアンナイト、ダイタクリーヴァ、トップコマンダー、ダンツフレーム、シンコウカリド、ミスキャストですね。それでは、パドックへと連れて行きます。厩務員の皆さん、お願いします」
虎石が声をかけると、厩務員の人たちが部屋の中に入ってきた。当然、その中にはいつものようにクロが居る。
彼女は俺のところに来ると、トウカイテイオーの手綱を握った。
「それじゃ、トウカイテイオーは連れて行くわね」
「ああ、頼んだ」
トウカイテイオーをクロに任せると、時が来るのを待つ。そして時間となり、俺は下見所へと向かった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
タイムワープ艦隊2024
山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。
この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる