追放騎手の霊馬召喚〜トウカイテイオーを召喚できずに勘当された俺は、伝説の負け馬と共に霊馬競馬界で成り上がる!

仁徳

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第六章

第五話 帝王、事情聴取を受ける

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 なぜ? どうしてこんなことになっているんだ?

 俺のカバンの中には、白いブラジャーが入っていた。

 そうか、きっと女子更衣室が四次元空間となっており、俺の鞄が四次元空間と繋がってブラジャーが迷い込んだんだ。

 って、そんな訳あるか!

 心の中でツッコミを入れつつ、額に右手を押し当てる。

 いったい、どんな原理で俺の鞄の中にブラジャーが入ることになるんだよ。

 冷静に考えれば、誰かが俺の鞄の中にブラジャーを入れたことになる。

 考えられるとすれば、噂の下着泥棒だろう。女子寮の生徒が被害に遭ったと言うし、体育の時間帯に女子更衣室に侵入して盗み出し、誰かに見つかりそうになった。だから咄嗟に俺の鞄の中に隠したと言うのが一番現実味のある話だ。

 心臓の鼓動が早鐘を打つ中、俺は必死になってブラジャーが鞄の中に入っている理由を推測する。

 ひとまず言えることは、誰かが俺の鞄の中にブラジャーが入っていることに気付けば、犯人にされると言うことだ。

 絶対にそれだけは阻止しないといけない。冤罪で逮捕されるなんてシャレにならない。

『帝王! 大変だよ!』

 どうしたものかと頭を抱えていると、ハルウララが教室にやって来た。彼女は頭に嵌めているマスクメンコがない状態だ。

 大変なのは俺の方だって。こんな時にハルウララの相手をしている場合じゃないのに。

『帝王! 私のマスクメンコがないよ! きっと噂の下着泥棒が盗んでいったんだ! 今ごろ『グフフ、こ、これがウララちゃんのマスク! ウララちゃんの匂を嗅ぐだけであそこが元気になってくるよグフフ』とか言って、嘗められたりオカズにされたりしているんだキモイ!』

 ハルウララが途中から声音を変えて変出者を演じる。

「お前のマスクメンコは汚れていたから昨日洗濯に出していただろう? 俺の鞄の中に入っている」

『あ、そうだった! よかったぁ、私のマスクメンコが汚されなくって』

 ホッとしたようにハルウララが俺のところに来ると、鞄の中に入り込もうとしてきた。

「ちょっと待てええええええぇぇぇぇぇぇぇ!」

 鞄の中に入ってマスクメンコを取り出そうとするハルウララを捕まえ、持ち上げる。

『な、何? いったいどうしたの? 急にたかいたかいをして? 私子どもじゃないよ?』

「いや、すまない。鞄の中は、今ごちゃごちゃしていてだな。俺が取り出すから待っていろ」

 心臓の鼓動が早鐘を打ち、収まりそうにない。まだ一時限目だと言うのに。放課後まで乗り切れそうにないぞ。

 ハルウララを机の上に置くと、鞄の中からマスクメンコを取り出してハルウララの頭に嵌める。

『やっぱり、チャームポイントのマスクメンコがないと落ち着かないよ。これで安心した』

「それは良かったな」

 苦笑いを浮かべながら、俺はこれから先どうしようかと悩む。

 ハルウララに相談するか? いや、彼女の場合はどっちに転ぶか分からない。協力的な場合は良いが、ふざけた勢いで俺を犯人にするかもしれない。

 こう言う場合は同性に相談するか? 内巣自然ナイスネイチャなら、ワンチャン強力してくれそうな気がする。雷電頭目ライデンリーダーは音楽用語を使って意味の分からない発言をするから、当てにすることはできない。

 最近知り合った大気釈迦流エアシャカール周滝音アグネスタキオンは、話した瞬間に現行犯逮捕されそうだな。

 次の休み時間にでも、内巣自然ナイスネイチャに相談してみるか。

 授業開始のチャイムが鳴り出した。だが、殆どの女子生徒が戻って来ていない。そして担任教師の愛馬先生も来なかった。

 何かあったのか? なんだか嫌な予感がする。

 しばらくすると、ゾロゾロと女子生徒たちが戻って来た。そして担任の愛馬先生と一緒に、なぜか大気釈迦流エアシャカール周滝音アグネスタキオンまでもが教室に入って来た。

「皆さんにお知らせがあります。クロさんが下着泥棒の被害に遭いました。そしてその犯人はこの教室の生徒の誰かだと言うところまで絞り込むことができました。うう、先生は悲しいです。まさか、先生の受け持つ生徒の中に、変態が紛れ込んでいたなんて。うう」

 愛馬先生はポケットから馬の刺繍の入ったハンカチを取り出すと、涙を拭う。

 クロが下着を盗まれた! つまり、今の彼女はノーブラだと言うのか!

 反射的に振り返って後の席に座っているクロを見た。

 彼女と目が合うと、クロは顔を赤らめながらも睨んできた。

 それもそうか。彼女にとっては恥ずかしいことだもんな。

 直ぐに前を向き直し、視線を先生たちに向ける。

「生徒内に犯人が居ることが分かった以上、風紀委員として見過ごす訳にはいかない。これから個人面談を行う。名簿順に呼ぶから、全員廊下に出ろ」

 大気釈迦流エアシャカールが指示を出す。生徒たちは戸惑いながらも廊下に出た。

 俺が居ない間に鞄を調べられたりしないだろうか。

 心配になりながらも、俺は心の中で神に祈る。

 どうか、俺が冤罪で捕まりませんように。

 最初の生徒が呼ばれて教室の中に入り、数分後に出て来た。

「なぁ、いったい何を聞かれたんだ?」

「普通にアリバイがあるかどうかを聞かれたけど、あの風紀委員長、マジで怖かった。目で殺されるかと思った」

「真の英雄は目で殺すと言うやつか」

 最初に呼ばれた生徒の感想が耳に入る中、俺は居心地の悪さを感じたままだ。

 次々と事情聴取が終わり、俺の番になる。

 教室に入ると、自分の席に座るように言われる。

「次は貴様か。東海帝王トウカイテイオウ。お前は体育の前後の行動を話せ」

「俺は女子生徒が出て行った後、ここで体操服に着替えた。そして授業が終わって疲労困憊だった俺は、しばらく休憩した後に教室に戻った」

 説明している中、大気釈迦流エアシャカールは俺のことを睨みつけてきた。その眼差しは些細なことも見逃さないと言いたげな眼差しを送っている。

 心臓の鼓動が早鐘を打っている。いくら俺の鞄の中にクロのブラジャーが入っていたとしても、盗んだのは俺ではない。犯人ではない以上、平常心で居れば大丈夫なはずだ。

「教室に戻った時は誰も居なかった。俺1人で着替えていると、遅れて他の生徒たちも教室に入って来た」

「なるほど、つまりお前が犯人だな!」

「はぁ⁈」

 驚きと困惑が入り混じった声が思わず出てしまった。

「他の生徒から証言を聞いている。女子生徒たちが揃った後に来たのはお前だった。つまり、女子生徒が居なくなった後に女子更衣室に忍び込み、下着を奪って教室に戻って隠し、そして何食わぬ顔で授業に参加したと言う訳だ」

「どうしてそうなるんだ! 俺はブラジャーを盗んではいない!」

 全然的外れな推理に、俺は感情的になって声を荒げた。

 しかし、大気釈迦流エアシャカールは口角を上げて、ニヤリと笑みを浮かべる。

「かかったな! 俺たちは一言もブラジャーと言っていない。なぜ、盗まれたのがブラジャーだと知っている? 知っている者は被害者と、盗んだ犯人だけだ」

 しまった! つい口を滑らせてしまった。まずい。このままでは犯人にされてしまう。

 大気釈迦流エアシャカール、こいつは何手先も読んでいやがる。
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