追放騎手の霊馬召喚〜トウカイテイオーを召喚できずに勘当された俺は、伝説の負け馬と共に霊馬競馬界で成り上がる!

仁徳

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第三章

第十七話 くそう!どうして思うようにいかない!

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 ~新堀シンボリ学園長視点~

『ゴール! 勝ったのはトウカイテイオー! そして2着はシャコーグレイド! そして安定の3着となったナイスネイチャ! ブロンズコレクター! またしても連続3着だ! いったいどこまで3着更新を続けて行くのか! 4着、5着は写真判定となります』

「おのれ!」

 レース中継を見たワシは、思いっきり机を叩く。

 霊馬競馬で大負けした時も、ここまでの怒りは込み上げてこなかった。そして怒りの原因はナイスネイチャの敗北ではない。愚息がトウカイテイオーに乗ってレースに挑み、そして優勝していることだ。

「くそう! くそう! くそう! どうして愚息がトウカイテイオーに乗っていやがる!」

 ワシは再度机を思いっきり叩いた。

 手に痛みがジーンと伝わって来るが、痛みよりも腸が煮えくり返る思いの方が強かった。

「いったいどうなっているんだ! どうしてハルウララではなく、トウカイテイオーなんかに乗っている!」

 声を上げながら暴れていると、机の上に置いていた小型の鏡が倒れ、視界に入る。

 鏡越しに写っていたワシは、悪鬼のような顔となっており、目が血走っていた。

 本当に腹立たしい。

 イライラが抑えきれないでいると、タブレットに着信が入る。

 ワシは、機嫌が悪い中も応答すると、空中ディスプレイを表示させた。

『うぉ! 新堀シンボリ学園長が悪鬼のような強面になっているッス! 学園長は辞めて、ヤクザにでも転職するッスか?』

「ふざけるな! 誰がヤクザ顔だ!」

『まぁ、作戦が失敗したのだから、機嫌は悪くなるッスね。それより、どうして古い情報を俺に言うッスか! ハルウララとしか契約していないと言うッスから、協力して上げたッスのに、相手がトウカイテイオーだったせいで、また3着ッスよ! 3着を更新し続けるから、3連単の3着予想は、ナイスネイチャ固定と言う固定概念が生まれてしまっている始末ッス! どう責任を取ってくれるッスか! 責任を取って、俺を霊馬学園に編入させてくださいッスよ!』

「ふざけるな! 毎回3着なのは、お前が弱いからだろうが! 馬のせいにするな! それに3着しか取れないようなザコを、ワシの学園に入れる訳がないだろうが!」

 内巣自然ナイスネイチャの言葉に怒りを感じたワシは、大声で怒鳴ると通話を切った。すると、直ぐに着信が入る。

「また内巣自然ナイスネイチャのガキか。何度交渉しようとしても無駄だ。二度と連絡を寄越さないように、もう一度怒鳴り付けてやる」

 応答ボタンを押し、再度空中ディスプレイが表示される。その瞬間、ストレスを発散させるかのように、大声を上げた。

「だからお前を編入させないと言っているだろうが!」

『編入? なんのこと? 俺は叔父さんのところの生徒じゃないか?』

 この声は甥っ子ではないか。まさか、彼から連絡が来るとは思っていなかった。

『今日、無事にトレイセント学園に編入できたよ。スパイ活動も良好だ』

「そうか、そうか。無事に編入できたか。これから帝王の情報は逐一報告するように。だが、お前の姿は帝王に見せるな。あいつのことだ。もし、お前を見つけてしまえば、あやつはワシが送り付けた刺客かスパイだと勘繰るだろう」

『分かっているよ。でも、安心して、もし見つかってしまった時のために、プランBの作戦を考えてある。俺たち新堀シンボリ一族のためにね。あ、そうそう。早速取り立てで新鮮な情報を入手したけど買う?』

 入手した情報を買うかと問われた瞬間、ワシは3度目になる「ふざけるな!」と言いたい気分になった。しかし、この怒りの感情を抑え、ワシは無理やり笑みを作る。

 スパイ活動に協力してくれたのは、こやつだけだ。もし、機嫌を損ねてスパイ活動を止めると言い出されては、目も当てられない。ワンチャン、ワシを裏切って帝王に情報をバラす可能性だってある。

「そうかそうか。では、買い取らせてもらうとしよう。それでいくらだ?」

『100万ポイント! 偶然俺好みのを見つけてね。今度デートに誘おうと思っているのだけど金が欲しくって』

 甥っ子の提示してきた金額に思わず頬を引き攣る。100万ポイントも消費するデートって、お前はいったい何を考えている?

「分かった。では、今からお前のタブレットにポイントを振り込んでおこう」

 タブレットを操作して、甥っ子のアカウントに100万ポイントを振り込む。

『毎度あり! それでは、本日入った新鮮でピチピチな情報を提供してあげるね』

 ポイントが入金されたことを確認したようで、甥っ子はニヤリと口角を上げる。

『実はさ、帝王がトウカイテイオーを召喚したことがきっかけで、ハルウララと仲違いをしてしまったようだ。あの牝馬、実家に帰るとかかしていたよ。マジ受けるよな。霊馬の実家ってどこだよ! ワハハハハハ!』

 何が可笑しいのかこれっぽっちも分からないが、甥っ子は腹を抱えて笑い出した。

『帝王を倒すなら、今がチャンスだよ。刺客を送り、弥生賞の時みたいにシステムにハッキングしてダートコースを走らせれば、帝王は負ける』

 甥っ子のアドバイスを聞き、ワシは口角を上げた。

 なるほど、確かにこいつの言う通りだ。鉄は熱いうちに叩けとも言う。今の状況を利用して、帝王を叩き潰すのも良いかもしれない。

「良く、その情報を掴んでくれた。また何か良い情報ネタを仕入れたら、ワシに教えるように」

『情報も刺身も新鮮が命だからね。また新鮮な情報ネタが入ったら、直ぐに教えるよ。情報は古くなるのが早いからね』

 甥っ子の方から通話を切ったようで、空中ディスプレイは消えた。

「さて、次の刺客は誰にしようか? 観光大使か? ナンバーワン神社か? それとも地方の怪物?」

 ダートを得意とする名馬と契約をしている霊馬騎手を思い出しながら、誰を刺客に送るかを考えていると、とある人物から連絡が来る。

 今日は通話が多くかかる日だな。

 応答すると、空中ディスプレイが浮かび、通話をした人物が表示される。その人物を見た瞬間、ワシは口角を上げた。

「雷の頭目か。ちょうど良かった。実は、お前に頼みたいことがあるのだが」
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