2 / 183
第一章
第二話 トレインセント学園
しおりを挟む
「遂にこの時が来たか。トレイセント学園の入学式が」
俺は両手を真上に上げ、伸びをしながら学園までの道を歩く。
「帝王から助けを求められた時は、正直驚いたけれど。まぁ、どうにか入学式までに間に合ってくれて良かったよ」
隣を歩いている親友、クロがホッとした表情で俺の独り言に答える。
「クロの実家には本当に世話になった。まさか数ヶ月掛かるリハビリが、たったの1ヶ月で終えられるなんてな。さすが北産カンパニーの子会社の病院だ」
「たった1ヶ月で治療とリハビリを終えられたのは、帝王の努力の結果だよ。パパも驚いていたよ『こんなに早くリハビリを終えた人間は見たことがない』って相当トレイセント学園に入学したかったんだね」
「まぁな。元々は俺を霊馬騎手にさせるために育てられていたし、俺の名を帝王にしたのだってトウカイテイオーを召喚して、学園のトップに君臨させるためだったからな。親父に捨てられて目的を失ってしまったが、次の目的を見つけるまでの間は、取り敢えず学園で名を上げようと思っている」
そんな会話をしていると、クロが俺の前に立った。そして両手を広げて俺の進行を止めたかと思うと、その場で一回転をしてみせた。
「どう? トレイセント学園の制服を来た私の格好は?」
学園の制服を着た自分に変なところがないのかの確認をしたいのだろう。自分が身に付けているものが変ではないか気になるのは、さすが女の子と言ったところだろうか。
頭のてっぺんから足のつま先まで見渡す。だが、特に変に思う箇所はなかった。
黒髪のセミロングに黒い瞳のある目は二重で童顔であり、まだあどけなさが残っている顔立ちをしているのはいつものことだし、同年代の平均に比べればやや小振りな胸にも変化が起きてはいなさそうだ。
身に付けている制服も白をベースにして清潔感があるし、ブラウスのボタンもかけ間違いはしていない。それに特に目立つ様な汚れもなさそうだ。
「安心しろ。特に変な風に制服は着ていない。いつも通りのクロだ……痛い!」
足に痛みを感じ、そちらに視線を向ける。すると、クロが俺の足を思いっきり踏み付けていた。
「おい、クロ! 何をしやがる。この靴買ったばかりの新品だぞ!」
「だからだよ。入学早々にケガとかされたら困るから、私が踏み付けて新品ではなくしてあげたの」
ケガ防止だと言い、クロは朗らかな笑みを浮かべる。
理由あっての行動であるため、怒りの感情よりも呆れの方が強まった。
「お前、迷信とか、願かつぎとか好きだよな。後、祭りも」
「うん、たくさんの人が集まって賑わうから、お祭りは大好き! だから多くの人が集まって、お祭りみたいに賑わうレースも大好き! 祭りだ祭りだ! レースはお祭りだ! ワッショイ!」
お祭りと言う大好きなワードが出て来てテンションが上がったのか、クロは声を上げて右手を上げる。
「あー、なんだか朝から楽しくなってきた。良い入学式になりそう!」
朝からテンションが高くなったクロと一緒に登校しながら歩く。するとトレイセント学園の門が見え、教諭だと思われる男性が呼びかけをしていた。
「新入生の皆さんはお急ぎください! 入学式が始まるまで、あまり時間はないですよ!」
「うそ! もうそんな時間なの! のんびりしすぎたかな? 急ごう! 帝王」
クロが俺の手を掴むと、急いで駆け出す。彼女に引っ張られる様な形で俺も走る。
学園の門に向かって走る中、俺の視線はクロと繋がれた手に注いでいた。
この年になっても、平気で俺の手を握るとはな。これが幼少期からの腐れ縁ってやつか。普通、この年齢になれば、異性の手を握ることにも抵抗があるだろうに。
まぁ、それだけ俺のことを同年代の弟として見ているのだろう。クロは何かとお姉ちゃんポジションを取りたがる。弟と接している感覚だからこそ、平気で俺の手を掴むことができるのだろうな。
そんなことを考えていると、俺たちはトレイセント学園の門を潜り抜ける。
「おはようございます」
「おはようございます。もうすぐ入学式が始まる時間になりますので、受付を済ましたら体育館へとお入りください」
クロが教諭だと思われる男性に朝の挨拶をすると、彼は入学式を迎えるまでの段取りを口にした。
直ぐに受付を済ませるために学園の体育館へと向かっていると、どこからか言い争っている声が聞こえてきた。
「良い加減にしてよ!」
「別に良いじゃないか。先輩たちと楽しく話をしようぜ」
「入学式なんてブッチしてさ、俺たちと遊ばない? 誰も来なくて静かな穴場があるんだよ」
「ああ、誰も来ないからたっぷりと楽しめるぜ」
何やらトラブルが起きているようだな。先生の話だと、そろそろ入学式が始まるようだし、どうしようか。
チラリとクロの方に視線を向ける。
「どうしたの? 帝王? 何かあった? 早く受付に行かないと、入学式に間に合わなくなるよ」
どうやらクロは、入学式に間に合うかどうかのことしか考えておらず、あの声が聞こえていなかったようだ。
「悪い、先に行っていてくれ。直ぐに戻るから」
クロに先に行くように促し、俺は急いで声が聞こえた方へと向かって行く。
「ちょっと! どうしたの! 帝王!」
後からクロが叫ぶ声が聞こえるが、彼女の言葉に足を止めることなく、走り続ける。
体育館の方角から離れると、人気があまりなさそうな道に4人組を見つけた。
中央に1人の女子生徒が居り、彼女を取り囲むようにして3人の男子生徒が両手を広げていた。
「早く行かないと、入学式に遅れてしまうわ! あたしは入学式に遅れる訳にはいかないのよ。だから良い加減にしてよ」
「入学式なんかに出て何になるんだよ。つまらない学園長の話を聞かされるだけじゃないか」
「そうそう。俺たちと話していた方が絶対に楽しいって。後悔させないから、なぁ? 良いだろう?」
「最初は嫌かもしれないけれど、その内お前も楽しくなるって。俺たちが気持ちよくマッサージをしてやるから。グヘヘ」
おそらく先輩だと思われる3人の男が、女子新入生をナンパしているみたいだ。一部危ない発言をしているやつもいるし、助けたほうが良いだろう。
「おい、お前たち、そこで何をやっている!」
声を掛けた瞬間、4人は一斉に俺の方を見る。男たちはゲームのモブキャラの様にパッとしない容姿だが、中央で取り囲まれている女子生徒は違った。
赤いロングの髪には軽くパーマが当てられているのか、緩くウエーブがかけられている。髪色と同じく燃えるような赤い瞳の目はまつ毛が長く、ただ立ち止まっている姿でも、どこか気品に溢れた佇まいをしている。そして、彼女の使っているシャンプーなのか香水なのかは分からないが、女の子からは薔薇の匂いが漂ってきた。
彼女の圧倒される美しさと気品に溢れるオーラの様なものに、一瞬だけ尻込むも、俺は一歩足を踏み出して近付く。
「もう一度言うぞ。彼女から離れるんだ」
「何だテメー? 新入生か?」
「入学したばかりの雑魚はあっちに行っていな。俺はG II優勝経験のある霊馬と契約しているんだぜ」
「俺はG Iを13着した経験の霊馬と契約しているんだ」
「俺は入賞を1回だけした馬と契約をしている」
「「「どうだビビったか! ビビったのならさっさと尻尾を丸めて逃げな! そうすれば見逃してやる」」」
3人は心が通じ合っているかのように、同時に同じ言葉を放つ。
「何だ。所詮はG Iレースに勝ったことのない雑魚じゃないか。やっぱり、見た目通りに小物だったな。俺は競馬界に伝説を作った馬と霊馬契約をしている。痛い目に遭いたくなければ、お前たちが尻尾を……いや尻尾はなかったな。ムスコを丸めて逃げな!」
俺は堂々と声を上げる。すると、男たちは1歩後退した。
「伝説を作った馬だと! まさか、3冠王や牝馬3冠の霊馬と契約しているのか!」
「そんなやつに目をつけられたら、俺たちの学園生活に支障が起きる」
「ち、仕方がない。ここはずらかるしかない。変に騒いで、あの風紀委員長にでも目をつけられたら、それこそ学園生活終了だ」
男たちは、俺の言葉を鵜呑みにして勝手に妄想し始める。すると女の子から距離を起き、後ずさってこの場から離れて行った。
ふぅ、賭けだったとは言え、俺の言葉を間に受けてくれたようで助かった。
俺の契約している霊馬は確かに伝説を作った。しかし、その伝説は強者ではなく、弱者としての伝説だ。競馬界最弱馬、それが俺の契約している馬だ。
もし、霊馬競争なんかの勝負を挑まれていたら、俺の方が負けていた。
「助けてくれてありがとう。助かったわ」
トラブルを避けることができて安堵していると、女の子が礼を言ってきた。
「いや、偶然にも言い争っている声が聞こえたから、こっちに来ただけだ。特にケガとかはしていなさそうだな」
「お陰様でね。それじゃ、あたしは早く体育館の方に行かないといけないから、それじゃ」
急いで体育館へと向かうと言い、女の子は俺の横を通り過ぎる。
なぜだろう。どうしてか、彼女ともっと話してみたいと思ってしまった。
「待ってくれ!」
思わず声を上げて呼び止める。すると俺の声に驚いたのか、女の子はビクッとすると、ゆっくりと振り返る。
「びっくりした。何? まだ何か用でもある訳?」
「俺、東海帝王って言うんだ。君の名前は?」
彼女の名前が知りたい。そう思って自分から名を告げる。
「トウカイ……テイオウ?」
自身の名前を告げると、彼女は驚いたかのように大きく目を見開く。そしてこちらに向き直ると、俺のところへと戻ってきた。
名前を告げるだけなら、その場でも良いはず。なのに、わざわざ戻って来ることに違和感を覚えていると、女の子は目の前で足を止める。
そして赤い瞳のある目で俺を睨み付けると、大きく口を開けた。
「あんたバカ!」
そして第一声で俺のことを罵倒してきた。
俺は両手を真上に上げ、伸びをしながら学園までの道を歩く。
「帝王から助けを求められた時は、正直驚いたけれど。まぁ、どうにか入学式までに間に合ってくれて良かったよ」
隣を歩いている親友、クロがホッとした表情で俺の独り言に答える。
「クロの実家には本当に世話になった。まさか数ヶ月掛かるリハビリが、たったの1ヶ月で終えられるなんてな。さすが北産カンパニーの子会社の病院だ」
「たった1ヶ月で治療とリハビリを終えられたのは、帝王の努力の結果だよ。パパも驚いていたよ『こんなに早くリハビリを終えた人間は見たことがない』って相当トレイセント学園に入学したかったんだね」
「まぁな。元々は俺を霊馬騎手にさせるために育てられていたし、俺の名を帝王にしたのだってトウカイテイオーを召喚して、学園のトップに君臨させるためだったからな。親父に捨てられて目的を失ってしまったが、次の目的を見つけるまでの間は、取り敢えず学園で名を上げようと思っている」
そんな会話をしていると、クロが俺の前に立った。そして両手を広げて俺の進行を止めたかと思うと、その場で一回転をしてみせた。
「どう? トレイセント学園の制服を来た私の格好は?」
学園の制服を着た自分に変なところがないのかの確認をしたいのだろう。自分が身に付けているものが変ではないか気になるのは、さすが女の子と言ったところだろうか。
頭のてっぺんから足のつま先まで見渡す。だが、特に変に思う箇所はなかった。
黒髪のセミロングに黒い瞳のある目は二重で童顔であり、まだあどけなさが残っている顔立ちをしているのはいつものことだし、同年代の平均に比べればやや小振りな胸にも変化が起きてはいなさそうだ。
身に付けている制服も白をベースにして清潔感があるし、ブラウスのボタンもかけ間違いはしていない。それに特に目立つ様な汚れもなさそうだ。
「安心しろ。特に変な風に制服は着ていない。いつも通りのクロだ……痛い!」
足に痛みを感じ、そちらに視線を向ける。すると、クロが俺の足を思いっきり踏み付けていた。
「おい、クロ! 何をしやがる。この靴買ったばかりの新品だぞ!」
「だからだよ。入学早々にケガとかされたら困るから、私が踏み付けて新品ではなくしてあげたの」
ケガ防止だと言い、クロは朗らかな笑みを浮かべる。
理由あっての行動であるため、怒りの感情よりも呆れの方が強まった。
「お前、迷信とか、願かつぎとか好きだよな。後、祭りも」
「うん、たくさんの人が集まって賑わうから、お祭りは大好き! だから多くの人が集まって、お祭りみたいに賑わうレースも大好き! 祭りだ祭りだ! レースはお祭りだ! ワッショイ!」
お祭りと言う大好きなワードが出て来てテンションが上がったのか、クロは声を上げて右手を上げる。
「あー、なんだか朝から楽しくなってきた。良い入学式になりそう!」
朝からテンションが高くなったクロと一緒に登校しながら歩く。するとトレイセント学園の門が見え、教諭だと思われる男性が呼びかけをしていた。
「新入生の皆さんはお急ぎください! 入学式が始まるまで、あまり時間はないですよ!」
「うそ! もうそんな時間なの! のんびりしすぎたかな? 急ごう! 帝王」
クロが俺の手を掴むと、急いで駆け出す。彼女に引っ張られる様な形で俺も走る。
学園の門に向かって走る中、俺の視線はクロと繋がれた手に注いでいた。
この年になっても、平気で俺の手を握るとはな。これが幼少期からの腐れ縁ってやつか。普通、この年齢になれば、異性の手を握ることにも抵抗があるだろうに。
まぁ、それだけ俺のことを同年代の弟として見ているのだろう。クロは何かとお姉ちゃんポジションを取りたがる。弟と接している感覚だからこそ、平気で俺の手を掴むことができるのだろうな。
そんなことを考えていると、俺たちはトレイセント学園の門を潜り抜ける。
「おはようございます」
「おはようございます。もうすぐ入学式が始まる時間になりますので、受付を済ましたら体育館へとお入りください」
クロが教諭だと思われる男性に朝の挨拶をすると、彼は入学式を迎えるまでの段取りを口にした。
直ぐに受付を済ませるために学園の体育館へと向かっていると、どこからか言い争っている声が聞こえてきた。
「良い加減にしてよ!」
「別に良いじゃないか。先輩たちと楽しく話をしようぜ」
「入学式なんてブッチしてさ、俺たちと遊ばない? 誰も来なくて静かな穴場があるんだよ」
「ああ、誰も来ないからたっぷりと楽しめるぜ」
何やらトラブルが起きているようだな。先生の話だと、そろそろ入学式が始まるようだし、どうしようか。
チラリとクロの方に視線を向ける。
「どうしたの? 帝王? 何かあった? 早く受付に行かないと、入学式に間に合わなくなるよ」
どうやらクロは、入学式に間に合うかどうかのことしか考えておらず、あの声が聞こえていなかったようだ。
「悪い、先に行っていてくれ。直ぐに戻るから」
クロに先に行くように促し、俺は急いで声が聞こえた方へと向かって行く。
「ちょっと! どうしたの! 帝王!」
後からクロが叫ぶ声が聞こえるが、彼女の言葉に足を止めることなく、走り続ける。
体育館の方角から離れると、人気があまりなさそうな道に4人組を見つけた。
中央に1人の女子生徒が居り、彼女を取り囲むようにして3人の男子生徒が両手を広げていた。
「早く行かないと、入学式に遅れてしまうわ! あたしは入学式に遅れる訳にはいかないのよ。だから良い加減にしてよ」
「入学式なんかに出て何になるんだよ。つまらない学園長の話を聞かされるだけじゃないか」
「そうそう。俺たちと話していた方が絶対に楽しいって。後悔させないから、なぁ? 良いだろう?」
「最初は嫌かもしれないけれど、その内お前も楽しくなるって。俺たちが気持ちよくマッサージをしてやるから。グヘヘ」
おそらく先輩だと思われる3人の男が、女子新入生をナンパしているみたいだ。一部危ない発言をしているやつもいるし、助けたほうが良いだろう。
「おい、お前たち、そこで何をやっている!」
声を掛けた瞬間、4人は一斉に俺の方を見る。男たちはゲームのモブキャラの様にパッとしない容姿だが、中央で取り囲まれている女子生徒は違った。
赤いロングの髪には軽くパーマが当てられているのか、緩くウエーブがかけられている。髪色と同じく燃えるような赤い瞳の目はまつ毛が長く、ただ立ち止まっている姿でも、どこか気品に溢れた佇まいをしている。そして、彼女の使っているシャンプーなのか香水なのかは分からないが、女の子からは薔薇の匂いが漂ってきた。
彼女の圧倒される美しさと気品に溢れるオーラの様なものに、一瞬だけ尻込むも、俺は一歩足を踏み出して近付く。
「もう一度言うぞ。彼女から離れるんだ」
「何だテメー? 新入生か?」
「入学したばかりの雑魚はあっちに行っていな。俺はG II優勝経験のある霊馬と契約しているんだぜ」
「俺はG Iを13着した経験の霊馬と契約しているんだ」
「俺は入賞を1回だけした馬と契約をしている」
「「「どうだビビったか! ビビったのならさっさと尻尾を丸めて逃げな! そうすれば見逃してやる」」」
3人は心が通じ合っているかのように、同時に同じ言葉を放つ。
「何だ。所詮はG Iレースに勝ったことのない雑魚じゃないか。やっぱり、見た目通りに小物だったな。俺は競馬界に伝説を作った馬と霊馬契約をしている。痛い目に遭いたくなければ、お前たちが尻尾を……いや尻尾はなかったな。ムスコを丸めて逃げな!」
俺は堂々と声を上げる。すると、男たちは1歩後退した。
「伝説を作った馬だと! まさか、3冠王や牝馬3冠の霊馬と契約しているのか!」
「そんなやつに目をつけられたら、俺たちの学園生活に支障が起きる」
「ち、仕方がない。ここはずらかるしかない。変に騒いで、あの風紀委員長にでも目をつけられたら、それこそ学園生活終了だ」
男たちは、俺の言葉を鵜呑みにして勝手に妄想し始める。すると女の子から距離を起き、後ずさってこの場から離れて行った。
ふぅ、賭けだったとは言え、俺の言葉を間に受けてくれたようで助かった。
俺の契約している霊馬は確かに伝説を作った。しかし、その伝説は強者ではなく、弱者としての伝説だ。競馬界最弱馬、それが俺の契約している馬だ。
もし、霊馬競争なんかの勝負を挑まれていたら、俺の方が負けていた。
「助けてくれてありがとう。助かったわ」
トラブルを避けることができて安堵していると、女の子が礼を言ってきた。
「いや、偶然にも言い争っている声が聞こえたから、こっちに来ただけだ。特にケガとかはしていなさそうだな」
「お陰様でね。それじゃ、あたしは早く体育館の方に行かないといけないから、それじゃ」
急いで体育館へと向かうと言い、女の子は俺の横を通り過ぎる。
なぜだろう。どうしてか、彼女ともっと話してみたいと思ってしまった。
「待ってくれ!」
思わず声を上げて呼び止める。すると俺の声に驚いたのか、女の子はビクッとすると、ゆっくりと振り返る。
「びっくりした。何? まだ何か用でもある訳?」
「俺、東海帝王って言うんだ。君の名前は?」
彼女の名前が知りたい。そう思って自分から名を告げる。
「トウカイ……テイオウ?」
自身の名前を告げると、彼女は驚いたかのように大きく目を見開く。そしてこちらに向き直ると、俺のところへと戻ってきた。
名前を告げるだけなら、その場でも良いはず。なのに、わざわざ戻って来ることに違和感を覚えていると、女の子は目の前で足を止める。
そして赤い瞳のある目で俺を睨み付けると、大きく口を開けた。
「あんたバカ!」
そして第一声で俺のことを罵倒してきた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう
果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。
名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。
日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。
ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。
この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。
しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて――
しかも、その一部始終は生放送されていて――!?
《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》
《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》
SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!?
暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する!
※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。
※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる