薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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最終章

最終話 俺たちのレースはこれからだ

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 自称魔王を倒し、この世界を脅かす脅威が去ったと思った俺たちは、それぞれが歓喜の声を上げた。だが、俺たちの喜びの声に混じっていたのは、倒したはずの自称魔王のものだった。

「嘘だろう! まだ倒せれていなかったのか!」

『残念だったな! 私を倒すには至らなかったようだ。死ぬ寸前ではあったが、回復魔法が間に合ったようだ』

 ニヤリと笑みを浮かべる自称魔王に対して歯を食い縛る。

 まさかあれでもダメだったとは。

 俺はやつに注意を払いつつ、イノックス王に視線を向ける。

「チッ、本当にしぶとい奴だ。倒しても執念深く生き残ってやがるとはな。そもそもゴキブリを駆除するのは王の役目ではない。シャカールとその仲間たちよ。害虫を駆除するのはお前たちの役目だ」

 舌打ちをしつつ、イノックス王は言葉を連ねる。

 王の威厳を保つためにあんなことを言っているのだろう。もしかしたら、彼の魔力が尽きて、これ以上の攻撃はできないようになっているのかもしれない。

 あれだけ派手な攻撃をしたのだ。かなりの魔力を消費していてもおかしくはない。

 やはり、やつを倒すには、クリープから受け取った紙に書かれてある方法を実行するしかない。

「みんな! 今からあいつを倒すためにある魔法を使う。集中する必要があるから、その時間を稼いでくれ!」

「分かったわ! ファイヤーボール!」

「シャカール君はママの渡したアレに書かれていたことを実行しようとしているのですね! ロック!」

「未来の夫をサポートするのは未来の妻の役目だものね! アクアランチャー!」

「シャカールトレーナー! 信じていますよ! シャイニングアロー!」

「ゼロナ兄は絶対にどうにかしてくれるって信じているよ! サンダースネーク!」

「コールドシーフさん、またあの人を発射する大砲を貸してください。兄さん、私たちの兄妹の絆をもう一度見せる時です。兄さん発射!」

「どうしてこうなるうううううぅぅぅぅぅ!」

 タマモたちが協力し合って、自称魔王を攻撃して時間を稼いでくれている。今のうちに俺は集中するんだ。

 意識を集中し、魔力回路全体に魔力を行き渡らせる。そして自称魔王を倒すために必要な魔法の名を叫ぶ。

「セルデュプリケートミス!」

 魔法名を叫び、魔法を発動させる。だが、自称魔王は俺の魔法を受けても苦しむ素振りを見せない。

『今私に魔法を使ったみたいだが、どうやら不発に終わったようだな。まぁ、私は回復魔法が間に合いさえすれば、負けることがない。お前たちも煩わしい! さっさと諦めろ! ハア!』

 自称魔王が両手を横に広げると、まるで衝撃波が起きたようにタマモたちが吹き飛ぶ。

『お前たちは私を倒すことができない。もう一度絶望を見せてくれる! ネイチャーヒーリング』

 自称魔法が回復魔法を使った。だが、その光景を見た瞬間、俺はニヤリと口角を上げた。

 やつは自分の意思で自分の命を断つ選択をしたのだ。

『グアアアアアアアアアァァァァァァァァ! な! 何だ! 回復魔法を使ったはずなのに、体が痛い! 痛い! 痛い!』

「肉体の回復というのは、細胞が細胞分裂を繰り返し、体内から分泌される物質を使って修復される。だから、俺はお前に細胞のコピーミスを促す魔法をかけた」

『細胞のコピーミスを促す魔法だと!』

「回復魔法により、強制的に細胞が分裂する際にコピーミスが起きれば、正常な肉体にならない。そうなれば、残った細胞が身体を維持するために、間違った細胞を攻撃する。その結果過剰な免疫反応が起こり、身体が痛みを覚えると言うわけだ。もう、お前は終わりだ。回復をしても、しなくとも、お前は死を待つだけの存在となる」

『嘘だ! 嘘だ! 嘘だあああああああぁぁぁぁぁ! 私は不死身! 不死身なのだ! 私は死なない! お前たちを倒し! この世界の支配者となる!』

 俺に指を向けた状態のまま叫び、やつは世界の支配者になることを宣言する。だが、自称魔王はそれ以降動かなくなった。

 クリープが近付き、やつの腕を触る。

「脈がないことを確認しました。心臓も止まっています。彼はお亡くなりになりました」

「と言うことは、勝ったんだな」

「はい。ママたちに勝利です」

「「「「「やった!」」」」」

 今度こそ自称魔王を倒し、俺たちは世界を救ったのだ。

 長い1日であり、色々なことが起きたが、きっとこの日のことは忘れられない出来事として、これからの歴史に残されて行くだろう。

「みんなお疲れ。さぁ、帰ろうか」






 シャカールが自称魔王を倒した十数年後。

『さぁ、まもなく勇者シャカール杯のスタートが近付いてきました。今回のレースは、十数年前に起きた自称魔王がこの世界を支配しようとした時に、当時無敗の三冠王だったシャカールが自称魔王を倒したことを讃えたレースです』

『今回の注目される走者は5名おり、5名ともあのシャカールの子どもと言うことで注目が集まっております。それぞれが各種族と人族のハーフですが、人気はその5名に分かれており、それ以外の走者が勝った場合が万走券となるのでそのことにも注目ですね』

 実況者と解説の言葉が耳に入ってくる。まさか、俺の名前のレースが作られるとは思っていなかったな。

「ねぇ、誰が勝つと思う。あたしは自分の子どもが1着だと思うわ」

「ママの子どもが1着ですよ」

「マーヤの子どもが1着に決まっているじゃない!」

『妾はナナミの子どもが1着と予想する』

「あれ? 今日はカレンニサキホコルさんが表に出ているのですね。みんな自分の子どもが1着だと思っているようですが、小狡いことをしたら右に出る者はいないと言われているわたしの子どもが勝つと思います」

「何を言っているのですか。ケモノ族最強種族と言われているウマの走りと彼の魔力を持つ私の子どもが1着に決まっています」

「「「「「ねぇ、あなたは誰が1着だと思う?」」」」」

 嫁たちに尋ねられ、俺は苦笑いを浮かべる。

 あれから何事もなく平和な日々が続いた。これからの未来もずっと平和な世界が続くといいな。

『さぁ、ゲートが開きました! 走者一斉にスタートです!』









後書き

 最終話まで読んでいただきありがとうございます。

 おそらく去年の6月に投稿して約1年4ヶ月経ちましたが、無事に最後まで物語を描き終えることができました。

 最後まで書くことができたのは、最終話まで読んでいただいたあなたが居てくれたからです。心の底から感謝しております。

 きっとあなたがこの作品を読み続けてくれていなければ、この作品は途中で終わっていたかもしれません。

 本当に感謝しております。また別作品でお会いすることがありましたら、また読んでいただけると嬉しく思います。

 最後まで読んでいただきありがとうございます。お疲れ様でした。

 これからもあなたが楽しいと思える物語と出会えれますように。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

谷 亜里砂
2024.04.25 谷 亜里砂

更新がんばってください!また来ます🐬

2024.04.27 仁徳

谷亜里砂様、感想ありがとうございます。

今は一日おきの更新となっています。執筆を頑張らせていただきます。

またお時間のある時に読んでいただけたら嬉しいです。

解除

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