薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

文字の大きさ
上 下
256 / 269
最終章

第四話 メンバー集め

しおりを挟む
 学園に帰って来たシャワーライトだったが、重要なことを伝えようとした瞬間に魔王に見つかってしまった。それにより、彼女は魔法陣に飲み込まれてどこかに転移させられてしまった。

 彼女を助けようとしたが、助けてあげることができなかった。こうなった場合、彼女が処刑場に転移させられていないことを祈るしかない。

 シャワーライトが転移する前に残した言葉を思い出す。魔王軍のメンバーは11名、その中には俺たちが良く知っている人物もおり、そしてギミックは俺たちが不利になるようなものが用意されていると言う。

 どんな内容のものなのかは教えてもらうことができなかったが、色々な展開を予想していた方が良いだろうな。

「シャワーライトは消えてしまったが、こうなってしまった以上は、我々がどうこうできる訳ではない。今は彼女が無事であることを祈ろう」

 俺の心の中で考えていたことを代弁するかのように、ルーナが言葉を連ねる。

「先ほどのシャワーライトが言っていた言葉からして、魔王軍は11名でレースに参加すると言うことであろう。ゲートはフルで18名、つまり、残り7名が参加できる」

「魔王プリパラは、俺を勇者役に任命していた。俺が参加することは決定事項だろうな」

 魔王プリパラは勇者シャカールと愉快な仲間たちと言っていた。つまり、彼女は魔王軍VS勇者チームのレースを望んでいると言うことになる。

「あの魔王プリパラが言っていた言葉を思い出すに、俺が率いるチーム戦を望んでいるみたいだ。誰か、俺と一緒に魔王杯に参加してくれる人は居るか?」

 一緒に戦ってくれるメンバーを、シェアハウスのメンバーから募ってみると、いくつかの手が上がる。

「もちろん、あたしも参加させてもらうわ。万が一、魔王がレースに勝つなんてことになった場合、悔しい思いをするかもしれない。なら、悔いのない方を選ぶためにも、あたし自身が参加するべきと判断したわ」

「ママも参加しますね。きっとあの魔王プリパラさんは、愛が欠けているのです。ママが優しくギュッて抱きしめてあげれば、きっと良い子になってくれると思います」

「マーヤも参加するよ! 魔王って世界を滅ぼす存在だよね? もし、世界が滅ぼされたら、マーヤとシャカールちゃんとの新婚旅行ができなくなってしまうもん!」

「ゼロナ兄! 私も参加する! みんなよりは、力不足な面もあるかもしれないけれど、魔王軍が勝つようなことになれば、世界が悪い方に進みそうな気がするから」

『下ネタ番号、安心しろ。ナナミの身に万が一のことが起きれば、直ぐに妾が入れ替わってやるから』

 タマモ、クリープ、マーヤ、ナナミ&カレンニサキホコルの4名が参加を希望する中、アイリンだけが参加の意を示さなかった。当然、彼女にみんなの視線が向けられる。

「皆さん頑張ってください! わたしは全力で応援させていただきます」

「お前は参加しないのかよ。流れ的にお前も参加する流れだろう?」

「わたしは自分自身の力量を把握しております。わたしが出走したところで、足手纏いになって皆さんに迷惑をかけることは目に見えております。足を引っ張るようなことはしたくないので、今回は遠慮させていただきます」

 アイリンのやつ何言っているんだ? 確かに俺たちのメンバーの中では最弱かもしれない。けれど、彼女はG Iレースのツインターボステークスで1着を取った実力者だ。足手纏いになることなんてあり得ない。

「本当は?」

「本当は参加したくないので建前を言いました。だって、もし負けてしまったら責任重大ではないですか。わたしにはそんな重責を負えないので、見ている方が楽で良いのです。責任は他人に押し付けて、リスクを回避した方が色々と安心しますからね……ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁシャ、シャカールトレーナーやめてください! 痛いですよ」

 本当のことを訊ねると、彼女は本音を口にした。だが、その内容が内容だったので、アイリンの頭に手を置き、アイアンクローをした。

「シャカール、やめなさいよ!」

「そうです。ケンカはダメですよ。アイリンちゃんの気持ちもママは分かります」

 タマモとクリープが止めに入ってきた。

 2人の言う通り、アイリンの気持ちも分かる。だけど、俺は彼女に参加して欲しい。

 彼女の実力は、トレーナーである俺自身が把握している。彼女は強い。でも、自分に自身を持っていないのだ。

「ルーナ学園長がいるではないですか! ルーナ学園長なら、きっと勝ってくれますよ」

「確かにワタシなら魔王プルパラとも対等に走れるかもしれない。だが、それはあくまでも現役の場合だ。引退した今では体力が低下している。ワタシの方が余程足手纏いになるだろうな」

 アイリンは参加したくない。そしてルーナは現役時代に比べると体力が劣っている。

 初めて彼女と出会ってレース勝負を行った時は負けてしまったが、今の俺ならルーナに勝てる自身がある。そのことを考えても、やっぱりルーナの参加は控えるべきだ。

 そしてレオも論外だ。そもそも子犬の状態で走っても負けが確定しているようなものだ。

「話は聞きました。私たちで良ければ、微力ながら強力致しましょう」

 玄関の入り口から声が聞こえ、そちらに顔を向ける。すると、ウマのケモノ族の男女が立っていた。

「ルビー、シュヴァルツ」

「前回のレースで負けた私はなんでもあなたの言うことを聞かなければならない立場です。あなたが参加メンバーを求めていると言うのであれば、是非参加させていただきます。ついでに兄さんも参加させます。使い物にならないところが保証されていて悲しい存在ではありますが、いないよりはマシです。風避けの道具のようにお使いください」

「妹よ、事実であっても言い方がキツくないか? 俺、心のヒットポイントがどんどん削られていくのだが」

 ルビーとシュヴァルツが参加してくれれば、とりあえずメンバーは揃うことになる。

 ルビーは心強いが、できることなら、やっぱりアイリンにも参加して欲しい。

「アイリン、本当に良いのだな。お前の代わりにシュヴァルツが走って」

「え? ええ。やった。これで思い切って応援ができますね。あははははは」

 俺の問いにアイリンは答えるが、どこからどう見ても心の底からの喜びの声には聞こえなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...