薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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第十三章

第二十四話 魔法プリパラの復活

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~とある魔族視点~





 私は魔王様を復活させ、この世界を昔の混沌とした世界に戻そうと考えている魔族だ。

 ついにこの時が来た。

 私は祭壇の上に置かれた少女を見て、ニヤリと口角を上げる。

 今まで数人の少女を犠牲にしたが、この少女は今までのやつらに比べて適性が高い。そして今宵は満月である。

 今回こそ、今回こそは成功するであろう。

「ブッヒーよ、良くこの娘を見つけてくれた」

「ええ、この娘を見つけることに全力を尽くしました。絶対にこの女は、魔王様の器として相応しいでしょう」

「もし、成功したら褒美を授けてやろう。さぁ! 魔王様よ! 復活してください!」

 両手を上げて声を上げる。すると、月の光に照らされた少女が淡く光始めた。

 この反応、やはりあの少女は魔王様の器に適していたか。これで魔王様が完全に復活してくれるのであれば、私の野望が達成できる。

 懐から魔王様の魂がひとりでに飛び出す。そして魂は器である少女の中へと入って行った。

「魔王様! 復活の時です!」

 再び声を上げると、少女はゆっくりと状態を起こし、こちらに顔を向ける。

「お前が我を目覚めさせた者か?」

「ええ、そうです。私の名はルシファーです」

「そうか。礼を言おう。再びこの世に誕生することができたのだ」

「そうでしょう。そうでしょう。お目覚めのところ悪いのですが、魔王様、早速あなた様のお力で魔物を凶暴化させてください。そしてあなた様が活躍していた時代のように、血で血を争う混沌とした時代にしましょう!」

「嫌だ」

「え?」

 魔物を凶暴化させ、下等生物たちを襲わせるようにお願いをした。だが、気のせいだろうか? 魔王様は拒絶されたような気がした。

「すみません。どうやら聞き逃してしまったみたいです。恐れ多いながら、もう一度お聞かせください」

「嫌だと言っておる。どうして我がそのようなことをしなければならない」

「何を言っているのだ! それが魔王の仕事だろうが! この世の下等生物である人間共を駆逐し、魔族の世界を作り上げる使命を持っているのが魔王のはずだ! 目覚めたばかりとは言え、子供ではないのだぞ! 大人しく俺たちの言う通りにするんだ!」

「やめろ! ブッヒー!」

「へ? ぶっひいいいいいいぃぃぃぃぃぃ」

 魔王様に対して侮辱の言葉を述べたブッヒーに、それ以上暴言を吐かないように咎める。だが間に合わなかった。魔王様がパチンと指を鳴らした瞬間、ブッヒーの肉体が爆発して肉片が分散し、血の花火が飛び散る。

「うるさいブタがおる。ブタはブタらしく肉となれ」

 ブッヒーが死んだ瞬間、体が震える。目覚めたばかりとは言え、魔王様だ。魔力の量が違いすぎる。私も言葉を間違えれば彼女に殺されるだろう。

「あのう。魔王様、どうして魔物を凶暴化させてくれないのでしょうか?」

「そんなの決まっておる。我が痛い思いをするからだ」

「はい?」

 思わず聞き返す。

「魔物を凶暴化させて人々を襲わせれば、神々がこの世界に転生者を送り出す。そうすれば転生者を中心とした勢力が生まれ、我を倒しに来る。もうあんな痛い思いは嫌だ。そもそもどうして魔族と人族で争わなければならんない。みんな仲良く手を取り合って暮らすのが一番楽しいではないか。争いは悲しみしか生まぬ」

 いや、いや、いや、何を言っているんだこのバカは? 魔王なのだから世界を滅ぼすために動くのが普通ではないか。何が痛いから争いたくないだよ。

 実際に声に出す訳にはいかないので、心の中で彼女を罵倒する。

 それにしても困った。復活した魔王がここまで腑抜けになっているとはな。どうやって争いを好む殺伐としたマシーンと化すかを考えなければならない。

「ところで、この世には走者と呼ばれる者同士で走るレースがあるらしいな」

「え? あ、はい。魔王様が封印された後にできた競技でして、様々な種族が走って1番を決めております」

「素晴らしいではないか! 他者と争うと言う意味では戦争と同じかもしれないが、多くの血が流れないで済む。そして走っている者もそれを見ておる者も同時に楽しむことができる。本当に素晴らしいことではないか。この競技を考えた者には我から勲章を授けたい」

 何が素晴らしいだ! あんなもの、お遊戯のようなものではないか! 人々が憎しみ合い、血で血を争う混沌とした世界こそが、あるべき本当の世界だと言うのに!

「と言う訳で、我は走者レースが開催されてある場所に飛び入り参加してくるとしよう」

 魔王様が立ち上がると、彼女の背中から漆黒の翼が現れる。

「では、我は行って来る。我の活躍をその目に焼き付けておくのだ。ワハハハハハ!」

 魔王様は空高く舞い上がり、そして和の国がある方角へと飛び去って行く。

「この大バカ娘がああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
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