248 / 269
第十三章
第二十話 龍の移動
しおりを挟む
龍の動き自体がギミックであることを悟った俺は、龍の背中に飛び乗る。すると、龍はギミックのゴールへと向かって移動を始めた。
龍が無理やり俺を振り落とそうとする素振りを見せない。どうやら正解のようだな。
だが、油断はできない。いつこの龍が転移ゲートへと体を潜り込ませるのか分かったものではないからな。
「なるほど、龍の背中に乗って移動すると言う訳ですか。確かにこれなら、上手く行けばクリアできるかもしれないですね」
「うわっと!」
背後から声が聞こえ、咄嗟に振り向く。そこには、ウマのケモノ族のルビーが立っていた。
「お前、いつの間に」
「つい先程です。あなたが龍に向けて飛んだ瞬間に私も勘付きました。では、私は先に行かせてもらいます。悠長にお話ししている時間はないようですので」
俺の横を通り過ぎて龍の頭の方に向けて走って行くルビー。
「時間がない? って、そう言うことか!」
尻尾の方に視線を向けると、龍は尻尾の先端から徐々に転移ゲートに体を入れて行く動作をし始めた。
呑気に突っ立ていると、転移ゲートに落下させられてしまう。
俺たちの後に続き、他の走者も龍へと飛び乗ったようだが、間に合わずに転移ゲートに落とされていた。
龍の体から滑り落ちないように気をつけつつ、頭の方へと走っていく。
だが、途中から龍の体が途切れていた。
いや、正確には、体の一部を転移ゲート内へと入り込ませていることで、境界線の奥の方が見えなくなっているだけだ。
つまり、跳躍して向こう側にいかないとダメと言うことだ。
跳躍力が試される場面だな。万が一ジャンプ力が足りなくって、落下を避けるために飛行魔法を使ったとしても、その瞬間に反則と見なされ、龍に落とされる可能性が高い。
勝負は1回きり、失敗すればまた龍のギミックを最初からやり直しだ。
一度深い深呼吸を行い、心を落ち着かせる。
普通に跳躍しては、まず届かない。なら、ここは肉体強化の魔法で身体能力を高めるべきだ。
「エンハンスドボディー」
肉体強化の魔法を発動させ、一度下がると助走をつけて跳躍。
よし、タイミングも跳躍する地点も問題ない。これならいける。
『ギャオオオオオオォォォォォン』
そう確信した瞬間、耳を劈くような龍の咆哮が耳に入ってくる。
龍の咆哮を聞いた瞬間、咄嗟に耳を塞いだことで体の体勢を崩してしまう。それにより、跳躍した際の勢いを殺してしまった。
しまった。このままではギリギリ届かないかもしれない。
最高到達点に達した瞬間、俺の体は重力に引っ張られ、下へと向かっていく。
「届けええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
声に出して叫び、届くことを祈る。すると、俺の願いが届いたのか、俺の足は転移ゲートの上ではなく、ギリギリ龍の体の上に乗せることができた。
龍の体に足がついた瞬間、体重を前にかけてその場で倒れる。
危なかった。もし、着地に失敗して後に体重がかかってしまっていたら、転移ゲートへと真っ逆様に落ちていただろう。
それにしても、タイミングの悪い。
「あなたを蹴落とすために、あのタイミングで龍に咆哮を上げさせたのに、届いてしまいましたか。運を味方に付けるだけの力はあるようですね」
奥の方からルビーの声が聞こえた。
起き上がって先の方を見ると、彼女は龍の鱗に触れている姿が視界に入る。
「今の口ぶりからすると、あのタイミングで龍が咆哮を上げたのはお前の仕業のようだな」
「ええ、偶然にも逆鱗を見つけたので、利用させてもらいました。逆鱗とは龍の体に1枚だけしか存在していない逆になっている鱗です。龍はそれに触れられるのを嫌う傾向にあるので、触れれば怒って咆哮をすると思っていました。ですが、この作戦は失敗に終わったようですね。では、先に行かせてもらいます」
ルビーは更に頭の方へと向かって行く。
俺たちのレースは走者への妨害もありだ。そのルールは和の国でも同じようだな。
なら、俺も逆鱗に触れてルビーを妨害すれば良いと言う話になるが、これは避けたほうが良い。
仏の顔も3度までと言うし、もう一度逆鱗に触れて龍が温厚でいられる補償はない。万が一にも振り落とされるようなことになればシャレにならない。
俺がすべき最善の手は先頭を走っているルビーに追い付くことだ。
彼女を追いかけ、俺も龍の頭へと向かって行く。
すると、ルビーは先に辿り着いていたようだ。龍の頭部に立って佇んでいた。
「そろそろこのギミックも終わるようですよ。あなたは、ここまで辿り着くことができますか?」
言葉を吐くと、ルビーが俺に向かって火球を放ってきた。
最後はお前自身が邪魔をするって訳か。コールドシーフとのレースを思い出すな。
彼女の放つ火球を躱しつつ、距離を詰めていく。
炎は水に、氷は炎で対抗して彼女の妨害を躱していく。
「お見事、どうやらゴール地点に龍が到達したみたいですし、私は先に行かせてもらいます」
俺への攻撃をやめた瞬間、ルビーは龍の頭から飛び、芝のコースを走っていく。
「待ちやがれ!」
お決まりのセリフを吐きつつ、俺はルビーを追いかけた。
『さぁ、第2のギミックをクリアしたのは1番人気と2番人気だ。次のギミックが最後となるが、果たして勝者は誰になるのか!』
龍が無理やり俺を振り落とそうとする素振りを見せない。どうやら正解のようだな。
だが、油断はできない。いつこの龍が転移ゲートへと体を潜り込ませるのか分かったものではないからな。
「なるほど、龍の背中に乗って移動すると言う訳ですか。確かにこれなら、上手く行けばクリアできるかもしれないですね」
「うわっと!」
背後から声が聞こえ、咄嗟に振り向く。そこには、ウマのケモノ族のルビーが立っていた。
「お前、いつの間に」
「つい先程です。あなたが龍に向けて飛んだ瞬間に私も勘付きました。では、私は先に行かせてもらいます。悠長にお話ししている時間はないようですので」
俺の横を通り過ぎて龍の頭の方に向けて走って行くルビー。
「時間がない? って、そう言うことか!」
尻尾の方に視線を向けると、龍は尻尾の先端から徐々に転移ゲートに体を入れて行く動作をし始めた。
呑気に突っ立ていると、転移ゲートに落下させられてしまう。
俺たちの後に続き、他の走者も龍へと飛び乗ったようだが、間に合わずに転移ゲートに落とされていた。
龍の体から滑り落ちないように気をつけつつ、頭の方へと走っていく。
だが、途中から龍の体が途切れていた。
いや、正確には、体の一部を転移ゲート内へと入り込ませていることで、境界線の奥の方が見えなくなっているだけだ。
つまり、跳躍して向こう側にいかないとダメと言うことだ。
跳躍力が試される場面だな。万が一ジャンプ力が足りなくって、落下を避けるために飛行魔法を使ったとしても、その瞬間に反則と見なされ、龍に落とされる可能性が高い。
勝負は1回きり、失敗すればまた龍のギミックを最初からやり直しだ。
一度深い深呼吸を行い、心を落ち着かせる。
普通に跳躍しては、まず届かない。なら、ここは肉体強化の魔法で身体能力を高めるべきだ。
「エンハンスドボディー」
肉体強化の魔法を発動させ、一度下がると助走をつけて跳躍。
よし、タイミングも跳躍する地点も問題ない。これならいける。
『ギャオオオオオオォォォォォン』
そう確信した瞬間、耳を劈くような龍の咆哮が耳に入ってくる。
龍の咆哮を聞いた瞬間、咄嗟に耳を塞いだことで体の体勢を崩してしまう。それにより、跳躍した際の勢いを殺してしまった。
しまった。このままではギリギリ届かないかもしれない。
最高到達点に達した瞬間、俺の体は重力に引っ張られ、下へと向かっていく。
「届けええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
声に出して叫び、届くことを祈る。すると、俺の願いが届いたのか、俺の足は転移ゲートの上ではなく、ギリギリ龍の体の上に乗せることができた。
龍の体に足がついた瞬間、体重を前にかけてその場で倒れる。
危なかった。もし、着地に失敗して後に体重がかかってしまっていたら、転移ゲートへと真っ逆様に落ちていただろう。
それにしても、タイミングの悪い。
「あなたを蹴落とすために、あのタイミングで龍に咆哮を上げさせたのに、届いてしまいましたか。運を味方に付けるだけの力はあるようですね」
奥の方からルビーの声が聞こえた。
起き上がって先の方を見ると、彼女は龍の鱗に触れている姿が視界に入る。
「今の口ぶりからすると、あのタイミングで龍が咆哮を上げたのはお前の仕業のようだな」
「ええ、偶然にも逆鱗を見つけたので、利用させてもらいました。逆鱗とは龍の体に1枚だけしか存在していない逆になっている鱗です。龍はそれに触れられるのを嫌う傾向にあるので、触れれば怒って咆哮をすると思っていました。ですが、この作戦は失敗に終わったようですね。では、先に行かせてもらいます」
ルビーは更に頭の方へと向かって行く。
俺たちのレースは走者への妨害もありだ。そのルールは和の国でも同じようだな。
なら、俺も逆鱗に触れてルビーを妨害すれば良いと言う話になるが、これは避けたほうが良い。
仏の顔も3度までと言うし、もう一度逆鱗に触れて龍が温厚でいられる補償はない。万が一にも振り落とされるようなことになればシャレにならない。
俺がすべき最善の手は先頭を走っているルビーに追い付くことだ。
彼女を追いかけ、俺も龍の頭へと向かって行く。
すると、ルビーは先に辿り着いていたようだ。龍の頭部に立って佇んでいた。
「そろそろこのギミックも終わるようですよ。あなたは、ここまで辿り着くことができますか?」
言葉を吐くと、ルビーが俺に向かって火球を放ってきた。
最後はお前自身が邪魔をするって訳か。コールドシーフとのレースを思い出すな。
彼女の放つ火球を躱しつつ、距離を詰めていく。
炎は水に、氷は炎で対抗して彼女の妨害を躱していく。
「お見事、どうやらゴール地点に龍が到達したみたいですし、私は先に行かせてもらいます」
俺への攻撃をやめた瞬間、ルビーは龍の頭から飛び、芝のコースを走っていく。
「待ちやがれ!」
お決まりのセリフを吐きつつ、俺はルビーを追いかけた。
『さぁ、第2のギミックをクリアしたのは1番人気と2番人気だ。次のギミックが最後となるが、果たして勝者は誰になるのか!』
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】
雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。
そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!
気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?
するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。
だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──
でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる