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第十三章

第十三話 マッスル先生のメッセージ

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 ~ルーナ視点~





「お世話になりました」

「またいつでもお越しになってください。お待ちしております」

 民宿で一泊したワタシたちは、目的地の走者場へと向かっていくことにした。

 民宿を営んでいる女性に礼を言い、私たちは馬車の停留所へと向かう。

「確か、お地蔵様がある場所まで一旦引き返すのだったな」

 昨日教えてもらった道を思い出しつつ、ポツリと言葉を漏らす。すると、1羽の鳥がこちらに向かって飛んできた。

 あれはリピートバードか。もしかして、シャカールからのメッセージなのでは?

 こちらに向かって飛んで来ている鳥がリピートバードであることを確信すると、心臓の鼓動が早鐘を打ち始める。

 鳥がワタシたちの前に降りると、リピートバードはワタシの方を見た。

『マッスル先生からメッセージがあります』

 リピートバードを寄越した相手がマッスル先生だったことに落胆してしまう。

 シャカールからではなかったか。あいつのことだ。どこかでくたばっているなんてことにはならないと思うが、もし生きているのであれば、メッセージのひとつでも寄越して欲しいものだ。

「分かった。メッセージを聞かせてくれ」

 落胆しつつも、教師として情けない姿を見せないために平然を装い、リピートバードにメッセージを言うように促す。

 すると、鳥は嘴を動かしてマッスル先生からのメッセージを語り始める。

『マッスル! ルーナ学園長と生徒たちよ、みんな筋トレはしているかな? 筋肉があれば大抵のことはなんでもできる! 今日も筋トレライフに精進してくれよ!』

 最初の言葉を聞いた瞬間、頭に手を置きたい気分になった。

 ワタシたちは時間がない。前置きは良いから、要件を話して欲しいものだ。

 しかし、リピートバードは聞いたメッセージを忠実に再現する鳥、なので、聴きたい部分だけを抽出して語ってはくれない。

『前置きは良いからさっさと要件だけを伝えてくれと思っているな? 何? どうして分かったのかって? それはな、俺の生徒たちから同じことを言われているからだ! アハハハハ!』

 やばい、怒りのあまりに目の前の鳥を殴りそうになる。

 ワタシはイラつきのあまりに咄嗟に拳を握ってしまった。だが、この鳥を殴っても意味がないことき即座に気付き、握った拳を開く。

『分かった。分かった。さっさと要件を言うからそんなに怖い顔をしないでくれ。要件と言うのはな。さっきシャカールと会ったんだ』

「なんだって!」

「シャカールが近くにいるの!」

「良かったです。ママ安心しました」

「良かったよぉー、シャカールちゃんが無事でぇ」

「まぁ、そんなことだろうと思いましたよ。だって、シャカールトレーナーはゴキブリ並みの生命力を持っていますからね。わたしは最初から無事だと思っていました」

「ゼロナ兄、良かった」

「まぁ、兄さんとは違うと思っていました。もし、兄さんなら、あのモンスターの餌になっていたでしょうからね」

「妹よ、確かに俺ならあり得るけれど、そんな言い方はしなくても良いんじゃないか?」

 シャカールが生きて彼の近くにいることを知り、思わず声を上げた。すると、ワタシに続いてタマモたちが声を上げる。

『人妻がどうのこうのと意味の分からないことを言っているが、元気でやっている。俺の生徒たちの合宿が終わり次第、走者場へと送るから、向こうで合流することになる。お前たちは安心してくれば良いさ。では、俺はこれから筋肉と語り合う時間なのでな。これにて失礼させていただく』

 メッセージを言い終えると、リピートバードは空へと舞い上がり、どこかに飛んで行く。

 最初に言っていた人妻がどうのこうのと言うのが気になるが、とりあえずは無事であることにホッとした。

「みんなも聞いただろう。シャカールは別行動で走者場へと向かっている。ワタシたちも間に合うように今から馬車の停留所へと向かうぞ」

 生徒たちに移動を開始するように言うと、みんなが頷く。シャカールが生きていることを知り、みんな安心したようだ。昨日に比べて、顔付きが良くなっているような気がする。

 教えてもらった道を頼りに、お地蔵さんの前に行くと、旅の無事を祈るためにも、お地蔵さんに手を合わせる。

 その後真っ直ぐに進むと、お地蔵さんとは違った像があった。

 これが動きそうで動かない石像か。

 石像は半裸になった男の像だった。片足を上げ、今にも一歩前に踏み出しそうに錯覚するほど臨場感のあるできとなっている。

「民宿のおばさんが言っていたみたいに、今にも動きそうね」

「案外動き出したりして」

「マーヤ先輩やめてください。それってフラグってやつですよ! もし、本当に動き出して襲ってきたらどうするのですか !これ以上フラグを立てないでください」

 マーヤの言葉にアイリンが慌ててそれ以上は言わないように制止を促す。

 念の為にもしばらく様子を伺ってみたが、動く気配はなかった。どうやら、アイリンの言うフラグと言うのは成立しなかったと言うことなのだろう。

 動きそうで動かない石像の右側の道を歩き始めると、複数の馬車が視界に入る。

 どうやら馬車の停留所へと辿り着いたようだ。

「ワタシが御者の方に話を付けてくる。みんなはこの場にいるように」

 生徒たちに待っているように告げ、ワタシは御者の人に話しかける。

 何人かは断られてしまったものの、ちょうど向かう馬車があり、そちらに乗せてもらうことになった。

 タマモたちを呼び、ワタシたちは馬車に乗ると目的地へと向かっていく。

 それから数日が経ち、ワタシたちは走者場のある町へと辿り着いた。
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