薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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第十三章

第七話 久しぶりの再会

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~シャカール視点~





「ここは……どこだ?」

 頭の中がボーッとする中、俺はこれまでのことを思い出そうとする。

 確か、みんなを逃すために、俺は1人で巨大な海のモンスターと戦った。そして渦の中に閉じ込めることに成功したけど、その後に力尽きてそのまま海の中に落ちたんだ。

 視界がぼやけるが、ここはどうやらどこかの建物の中のようだ。つまり俺は、誰かに助けられたのだろう。

「いや、普通に考えて道徳的にもあり得ないタイ。どうして人肉を食べることになると」

 道徳? 人肉を食べる? いったい何を言っているんだ?

「お、どうやら目が覚めたようタイ。良かった。危ないところだったバイだよ。目が覚めなかったら、アタ貴方をどうやって逃そうか頭を悩ませるところだったタイ」

 目が覚めたことに気付いたようで、1人が俺を見てくる。

 まだ視界がぼやけているが、言葉からして安堵しているのだろう。

 それにしても、この声はどこかで聞いたことがあるな。

 指で目を擦り、ぼやけた視界をはっきりとさせる。すると、長い髪の小柄な女性が視界に移る。顔はどちらかと言うと童顔であり、一番に目を引くのは、彼女の着ているゴスロリ衣装だ。

「お前は……サザンクロスか? どうしてこんなところに?」

「まだ目が覚めたばかりで、状況が整理できていないようタイ。ウチもどう言う状況なのか良く分かっていないけれど、母親がアタ貴方を家に連れ込んだとタイ。しかも、いきなり食べるとか言い出して、訳が分からない状態となっているとタイ

「貴方が私の釣竿に引っかかったから、今夜のお楽しみにしようと思っていたのよ。鍛え上げられた肉体、きっとあそこの方もすごいのでしょうね。想像しただけで涎が」

「だから、シャカールを食材にさせないって言っているタイ!」

 2人のやりとりからでは要領を得難いが、整理すると、どうやら俺は海の中に落ちた後、そのまま漂っているうちにサザンクロスの母親の持つ釣竿に引っかかったようだ。

 その後救出された俺はそのまま彼女の家に運ばれ、そして今に至ると言ったところか。

 そしてサザンクロスの母親は俺を食べようと考えていた。

 はぁ? 何で?

 サザンクロスは勘違いをしているようだが、きっとあっちの意味で食べると言っているのだろう。

 しかし急展開すぎて意味が分からない。そもそも、母親と言う時点で旦那が居るだろうが。発情しているのなら、旦那とやれ。

「助けてくれたことには礼を言う。だけどここに居ては身の危険を感じるので、俺は早々出て行く。サザンクロスじゃあな」

 上体を起こし、この場から離れようとする。

「あ、待って!」

「シャカール! ウチが抑えているうちに早く出ていくとタイ」

 逃げようとする俺を見て、サザンクロスの母親が手を伸ばしてくるが、それを見たサザンクロスが母親を押さえ付けてくれた。

 俺は急いで飛び出すと、玄関に向かい、そのまま外に出る。

 ここがどこなのかは不明だが、とりあえずは安全な場所を探さないと。

 辺りを見渡すと、どうやら小さい村のようだ。

 家が複数あるが、周辺には隠れるのに適した場所がない。

「うん? お前シャカールじゃないか。久しぶりだな。どうしてこんなところに居るんだ?」

 どこかに隠れられる場所がないか探していると、声をかけられた。そちらに顔を向けると、金髪の長い髪に仮面を付けた女性が視界に入る。

「お前はコールドシーフじゃないか」

「よ! こんな田舎の村に来て、何しているんだ? もしかして、アタシたちの様に合宿か?」

 どうやら彼女たちは合宿中のようだ。なら、マッスル先生と合流することができる。

「どう言う訳か、サザンクロスの母親が俺を食べようとしているんだ。だから逃げてきた」

 簡単に説明をすると、彼女は苦笑いを浮かべる。

「あのおばちゃんは相変わらずだな。まぁ、シャカールはあのおばちゃん好みの体付きをしているから、狙われるのも納得だな。よし、ならアタシに付いてきな。マッスル先生のところに案内してやる」

 コールドシーフに案内され、彼女の隣を歩く。

 念の為に周辺を警戒していたが、サザンクロスの母親が追ってくる様子がない。

 彼女が連れてきた場所は民宿だった。彼女たちは、合宿中の間ここで寝泊まりをしているらしい。

 実家がこの村にあるサザンクロスだけが、特別に実家からの通学を許可されているとのことだ。

「マッスル先生、ちょっと良いか?」

「コールドシーフ、なんだ? 今、マッスル体操バージョン2を考えているところだ」

 体の筋肉を膨らませ、様々な格好を取るマッスル先生だったが、俺の存在に気付いた様で、目を大きく見開く。

「お前は、上腕二頭筋が本体のシャカール!」

「どう言う覚え方をしているんだ!」

 久しぶりの再会にも関わらず、俺はツッコミを入れる。

 そう言えば、彼は最初色々と誤解をしていたな。

「冗談だ。ルーナ学園長は元気か? お前がここに居ると言うことは、お前たちの学園もこの辺りが合宿しているのか? なら、合同合宿なんてのもありだな」

 訊ねられ、俺はこれまでの経緯を答える。

「なるほどな。それは災難だったな。よし、俺の方からルーナ学園長にリピートバードを飛ばしておこう。お前の無事を知らせておく」

「ありがとう。助かる。それで、ここからレース会場に向かうにはどうすれば良い?」

 離れ離れになった以上、迎えを待つよりも目的地に向かって歩く方が良いに決まっている。

「うーん、今から歩いたとしても、距離的には間に合わない。馬車を使えばギリギリ間に合うが、会場行きの馬車はこの村では1週間に一回だけだ。しかも、今朝出発したばかり。次は1週間後となる」

「マジかよ」

 会場に向かう馬車は1週間後、それでは間に合わない。

「まぁ、安心しろ。3日後には合宿が終わる。馬車を手配しているので、ついでに載せてやろう」

「それは本当か。助かる」
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