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第十三章
第四話 牛とイカの合成獣
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海面から飛び出している触手に向けて雷撃の魔法を当てることに成功した。攻撃を受けたモンスターは叫び声を上げながら姿を見せるが、そのモンスターの頭部は牛の頭をしていた。
どうして海の中に牛が居る?
確かに牛の頭部を持つモンスターは実在する。だが、海の中で生息するなんて話は聞いたことはない。
『ギョエエエエエエエエエェェェェェェェェ!』
姿を現したモンスタに困惑していると、モンスターは再び叫び声を上げ、再び触手が襲いかかってくる。
モンスターに魔法を当てるために空中に跳躍した状態の俺では、回避するのは難しい。あの棘の付いた吸盤のある触手に巻き付かれでもしたら、重症を負うことになる。そうなれば、レースに出走できなくなるだろう。
今から魔法を放つにしても間に合わない。どうにかして、あの触手を躱さないと。
「ウインドカッター!」
敵の攻撃を避ける方法を考えていると、迫り来る触手が切断され、甲板に落下した。
「シャカール、危なかったね」
「シュヴァルツ、サンキュウ」
甲板に着地すると同時に助けてくれた彼に礼を言う。
切断された触手は、まるでトカゲの尻尾のようにウネウネと動いていた。
食用のタコやイカは、神経があまり発達していない。そのため、切られても暫くの間は動くことができるが、魔物の触手も似た様なもののようだ。
「シャカール、あれを見てくれ」
シュヴァルツが指を差し、彼の指が指し示す場所へと顔を向ける。
切断された触手が再生し、元の形へと戻っていた。
自然回復が早すぎる。どれだけ生命力が高いんだよ。
「あれだけ直ぐに再生するなら、食糧に困ることはなさそうだね」
敵の回復力の高さを目の当たりにして、シュヴァルツがポツリと呟く。
あのモンスターの触手を食うつもりか? まぁ、見た目はイカの足だし、食べられないことはないかと思うが……できることなら遠慮したい。
そんなことを考えつつ、俺はこの状況を打破する術を考える。
海の中にいる状態で俺の雷撃を受け、それでもあまり苦しんでいる様子を見せない。
あのモンスターは上級種と見て良いだろう。
今の俺たちが束になって戦ったところで、勝てるビジョンが見えない。なら、倒す戦いではなく、逃げるための戦いに切り替えた方が賢明だ。
この船が進まなくなった原因は、モンスターの触手で押さえ付けられているから。なら、その触手を全て海面から出させることができれば、船を動かすことができるはずだ。
更に思考を巡らせると、ある策を思い付く。
頭の中に浮かんだ策であれば、全ての触手を海面から出させることができるかもしれない。だが、失敗すれば俺の命は危険に晒される。
「でも、やるしかないよな。どっちにしても、何もしなければ全滅だ。だったら、少しでも生き残る可能性がある方に賭けるしかない」
決意をすると、再び魔力回路全体に魔力を行き渡らせる。
幸いなことに、今は触手が船を揺らして激しい振動を与えていないので、甲板の上にいても集中力を欠くことはない。
「ウイング」
魔法を発動すると、俺の背中に純白の翼が現れ、羽ばたかせると体が浮遊する。
「ルーナ、俺があのモンスターの触手を全て相手にする。船が動ける様になったら、俺に構わないで船を前進させる様に伝えてくれ」
「シャカール、お前は何を言っている! そんなことをすれば、お前は取り残されるぞ」
「そんなこと分かっている。でも、これが最善の策だ」
自分でも、今の発言が死亡フラグだってことくらい分かっている。もしこの場にアイリンがいれば、それを指摘するだろう。
でも、これ以外の方法がない以上は、俺がするしかない。
ルーナが別の案を提案しないところを見るに、彼女も他の策が思い付かない様子だ。
全員助かるなんて都合の良い話は。物語の世界にしか存在しない。
現実では、必ず誰かが犠牲になってしまうものだ。
船から飛び出すと、純白の翼を羽ばたかせ、海の上を飛翔する。そして牛の頭の周りを飛び回った。
すると、俺を捕らえようと触手が襲い掛かる。
俺だって、自分の周りに小蠅などが飛び回っていたら鬱陶しく思う。当然どっかに行かせようと手を振り回す。
今の俺は、モンスターにとっては小蠅の様なものだ。なら、精一杯飛び回ってやるよ。
触手を交わしていくと、次第に触手の数が増えていく。その度に回避する難易度が高くなるが、俺が注意を引き付ければ、それだけで船は逃げることが可能となる。
「さぁ、さぁ、俺を捕まえられるものなら捕まえてみろ」
モンスターに俺の言葉を理解できるのか不明だが、全力で挑発した。
すると、どうやら全ての触手が俺を狙っているようで、船が動き始めた様だ。
俺たちからどんどん遠ざかっていく。
よし、作戦成功だ。だけど、俺はこいつをどうにかしない限り、合流することはできない。俺が合流しようとすれば、こいつは必ず追いかけるだろう。
それでは意味がない。
俺はこいつをみんなから遠ざけた後、別の場所へと誘導するべきだ。
「いくぜ! ここからが負けイベントの始まりだ! 覚悟しろ!」
どうして海の中に牛が居る?
確かに牛の頭部を持つモンスターは実在する。だが、海の中で生息するなんて話は聞いたことはない。
『ギョエエエエエエエエエェェェェェェェェ!』
姿を現したモンスタに困惑していると、モンスターは再び叫び声を上げ、再び触手が襲いかかってくる。
モンスターに魔法を当てるために空中に跳躍した状態の俺では、回避するのは難しい。あの棘の付いた吸盤のある触手に巻き付かれでもしたら、重症を負うことになる。そうなれば、レースに出走できなくなるだろう。
今から魔法を放つにしても間に合わない。どうにかして、あの触手を躱さないと。
「ウインドカッター!」
敵の攻撃を避ける方法を考えていると、迫り来る触手が切断され、甲板に落下した。
「シャカール、危なかったね」
「シュヴァルツ、サンキュウ」
甲板に着地すると同時に助けてくれた彼に礼を言う。
切断された触手は、まるでトカゲの尻尾のようにウネウネと動いていた。
食用のタコやイカは、神経があまり発達していない。そのため、切られても暫くの間は動くことができるが、魔物の触手も似た様なもののようだ。
「シャカール、あれを見てくれ」
シュヴァルツが指を差し、彼の指が指し示す場所へと顔を向ける。
切断された触手が再生し、元の形へと戻っていた。
自然回復が早すぎる。どれだけ生命力が高いんだよ。
「あれだけ直ぐに再生するなら、食糧に困ることはなさそうだね」
敵の回復力の高さを目の当たりにして、シュヴァルツがポツリと呟く。
あのモンスターの触手を食うつもりか? まぁ、見た目はイカの足だし、食べられないことはないかと思うが……できることなら遠慮したい。
そんなことを考えつつ、俺はこの状況を打破する術を考える。
海の中にいる状態で俺の雷撃を受け、それでもあまり苦しんでいる様子を見せない。
あのモンスターは上級種と見て良いだろう。
今の俺たちが束になって戦ったところで、勝てるビジョンが見えない。なら、倒す戦いではなく、逃げるための戦いに切り替えた方が賢明だ。
この船が進まなくなった原因は、モンスターの触手で押さえ付けられているから。なら、その触手を全て海面から出させることができれば、船を動かすことができるはずだ。
更に思考を巡らせると、ある策を思い付く。
頭の中に浮かんだ策であれば、全ての触手を海面から出させることができるかもしれない。だが、失敗すれば俺の命は危険に晒される。
「でも、やるしかないよな。どっちにしても、何もしなければ全滅だ。だったら、少しでも生き残る可能性がある方に賭けるしかない」
決意をすると、再び魔力回路全体に魔力を行き渡らせる。
幸いなことに、今は触手が船を揺らして激しい振動を与えていないので、甲板の上にいても集中力を欠くことはない。
「ウイング」
魔法を発動すると、俺の背中に純白の翼が現れ、羽ばたかせると体が浮遊する。
「ルーナ、俺があのモンスターの触手を全て相手にする。船が動ける様になったら、俺に構わないで船を前進させる様に伝えてくれ」
「シャカール、お前は何を言っている! そんなことをすれば、お前は取り残されるぞ」
「そんなこと分かっている。でも、これが最善の策だ」
自分でも、今の発言が死亡フラグだってことくらい分かっている。もしこの場にアイリンがいれば、それを指摘するだろう。
でも、これ以外の方法がない以上は、俺がするしかない。
ルーナが別の案を提案しないところを見るに、彼女も他の策が思い付かない様子だ。
全員助かるなんて都合の良い話は。物語の世界にしか存在しない。
現実では、必ず誰かが犠牲になってしまうものだ。
船から飛び出すと、純白の翼を羽ばたかせ、海の上を飛翔する。そして牛の頭の周りを飛び回った。
すると、俺を捕らえようと触手が襲い掛かる。
俺だって、自分の周りに小蠅などが飛び回っていたら鬱陶しく思う。当然どっかに行かせようと手を振り回す。
今の俺は、モンスターにとっては小蠅の様なものだ。なら、精一杯飛び回ってやるよ。
触手を交わしていくと、次第に触手の数が増えていく。その度に回避する難易度が高くなるが、俺が注意を引き付ければ、それだけで船は逃げることが可能となる。
「さぁ、さぁ、俺を捕まえられるものなら捕まえてみろ」
モンスターに俺の言葉を理解できるのか不明だが、全力で挑発した。
すると、どうやら全ての触手が俺を狙っているようで、船が動き始めた様だ。
俺たちからどんどん遠ざかっていく。
よし、作戦成功だ。だけど、俺はこいつをどうにかしない限り、合流することはできない。俺が合流しようとすれば、こいつは必ず追いかけるだろう。
それでは意味がない。
俺はこいつをみんなから遠ざけた後、別の場所へと誘導するべきだ。
「いくぜ! ここからが負けイベントの始まりだ! 覚悟しろ!」
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