薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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第十二章

第十七話 指輪は呪われていた。装備を外すことはできない

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~シャカール視点~





 くそう。いったいどうなっているんだ。どうしてみんな俺のことを偽者だと思っている。

 シェアハウスのメンバーたちが一丸となって俺を魔法で攻撃してくる。

 タマモは一度見抜いてくれていた。そしてナナミなら、ワンチャン俺がお前の義兄であることに気付いてくれていると思っていた。

 アイリンはバカだから、気付かなくともおかしくはない。自惚れ過ぎだと自分で思うが、マーヤが外見が同じと言う理由で見分けが付かなくなるとは思えない。

 クリープに関しては、なんとも言えないが、見抜いてくれる確率は高いと思う。

 それなのに、どうしてみんな俺のことを攻撃してくる。

 確信は持てないが、何かがおかしい。もしかして、ルーナの弟に操られているとか?

 可能性としては0ではない。みんなからの攻撃を避けつつ、普段と違う部分がないか見分けるんだ。

 女性陣たちからの攻撃を躱し、隙が生じてはみんなのことを見る。

 すると、みんなの左手の薬指に指輪をしていることに気付く。

 あの指輪、数時間前まではみんな付けていなかったはず。

『みんな! そのまま攻撃を続けてくれ。あいつが疲れて身動きが取れなくなった隙に、俺が捉える』

 ルーナの弟が、俺に指を向けてきた。

 あいつ、親指に同じ指輪をしている。そうか、そう言うことか。

 原理がどうなっているのかは不明だが、あの指輪のせいでみんな操られているんだ。

 もしかしたら、そうであってほしいばかりに思い込んでいる可能性だってある。でも、今はそれに賭けたい。

「スピードスター!」

 俊足の魔法を発動し、みんなの目の前に移動する。その後、マーヤの左手首を掴むと、上に持ち上げた。

「痛い! 離して! みんな! シャカールちゃん助けて!」

「マーヤちゃん! ルーナ学園長の弟さん、気持ちは分からなくもないですが、もうやめましょう。出ないと、ママが誰でも良い子に戻れる手術をしなければなりません。シャカール君と同じ顔の方に、そのようなことはしたくないのです」

 クリープが俺の行動を見て訴えてくる。

 クリープの誰もが良い子に戻れる手術は、変態を作り出す。現に手術直後の所長は俺の靴を舐めようとしてきた変態になってしまった。

 あんな風にはなりたくない。でも、みんなを呪縛から助けるには、この指輪を取り外すしかない。

 マーヤの腕を掴んだままの俺は、一瞬だけ思考を巡らす。そしてセイレーンの女の子をお姫様抱っこをすると、後方へと跳躍。距離を引き離した後、マーヤの指に嵌めている指輪を摘み、取り外そうとした。

「うそだろう。指輪が取れない」

 まるで指に吸い付いているかのように、指輪はびくともしなかった。

『残念だったな。お前が取り外そうとしてくることなど、最初から分かっていた。その指輪は、一度嵌めたら嵌めた本人にしか取り外れないようになっている。第三者は決して取り外すことができない』

 チッ、まさかそんな作りになっているとは。俺のことを敵だと認識している段階では、いくら訴えたところで俺の言葉は届かない。

 彼女たちの意思で取り外してもらうこともできない。

 くそう、どうやったら、みんな自分の意思で取り外してくれる?

「好い加減に離してよ。変身解除」

 マーヤが叫んだ瞬間、人間の足だったのが魚の尾鰭に変わる。ヌメっとした感覚があった直後、手が滑ってしまい、マーヤはスルリと俺の腕から逃げる。

「よくもシャカールちゃんの前であんなことをしてくれたわね! 一瞬だけど、本物に抱き抱えられたみたいで嬉しくなってしまったじゃない!」

 若干のテレを感じているのか、マーヤの頬は少しだけ赤くなる。

「マーヤちゃん危ない!」

「え? きゃあ!」

 彼女の目の前に、小さい石ころが弾丸のように飛んできた。

 マーヤを助けようとして放ったものなのだろう。着弾場所はそのまま行けば俺の足だ。しかし、俺から飛び降りたことで、石の弾丸は彼女に衝突することになる。

 あれを受ければケガが免れないだろう。

 直ぐに彼女を抱き抱えて跳躍したいが、人魚の足となっている彼女を抱き抱えると、先程のように手を滑らせてしまう。

「チッ、こうするしかないか」

 手を前に出して再びマーヤの手首を掴み、腕に力を入れると、勢い良く腕を降って彼女を俺の背後に移動させる。

「がっ!」

 その後、俺の足に石の弾丸命中し、激痛を感じるとその場に座り込む。

「ルーナ学園長の弟さん、どうしてマーヤを……」

「お前が傷付くところなんか見たくないからな。例えお前の中で俺のことを敵だと認識していたとしても、俺はお前を守る」

 ズキズキと足が痛む。この足では、動くことができないだろう。

『マーヤ、クリープ、良くやってくれた。後は俺が拘束する』

 身動きが取れない俺を拘束しよう、ルーナの弟がこちらに向かって歩く。

『おい、これはなんの冗談だ』

「え、あ、えーと、これは……なんでかな? なぜか体が勝手に動いたと言うか、気付いたら、こうな体勢をとっていたと言うか」

 俺の前にマーヤがたち、両手を広げて彼女は仁王立ちをしていた。
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