223 / 269
第十二章
第十五話 裏切る仲間たち
しおりを挟む
なんとかシェアハウスに辿り着くことができた。だが、時既に遅く、ルーナの弟が乗り込んでいた。だが、逆に考えれば自分から囚われに来てきるようなもの。ここで決着をつける。
「本当だ! シャカールトレーナーが2人!」
「あらあら、この目で見るまでは信じられませんでしたが、ママもビックリです」
「まるでシャカールちゃんのドッペルゲンガーみたいだね」
「対策を取らないと、本当にゼロナ兄を見分けるのは大変そうだね」
俺の登場にアイリン、クリープ、マーヤ、ナナミが驚きの声を上げる。ナナミが驚いているのは、カレンニサキホコルが表に出ている時に眠っていたからなのだろう。
「ルーナの弟よ、観念しろよ」
『観念? それはこっちのセリフだ。捕まるのはお前の方だ』
俺の口調を真似、まるで自身が俺であるかのようにルーナの弟は言葉を連ねる。
「そうかよ。なら、捕まえてみろ」
やつに背を向け、一目散に玄関へと向かっていく。
このままこの建物で争う訳にはいかないからな。俺が外に出れば、広い場所で戦うことができる。
「バインウイップ!」
「何!」
玄関へと向かって走っていると、突如足に何かが絡み、その場で転倒してしまう。
くそう。いったい何なんだ?
足元を見ると、蔓が足に絡まっている。このせいで転倒したのだろう。
「やりましたよ! シャカールトレーナー! 偽者を捕らえました」
「アイリン、ふざけやがって! 何が偽者だ! アイスニードル」
氷の針を魔法で出現させ、絡まった蔓を切断する。
炎の魔法では建物を燃やして火事に発展するかもしれない。なので、被害の少ない氷魔法で蔓を切った。
アイリンのあの反応、完全に俺のことを偽者だと思っているな。
一度見極めることができたタマモが何も言わないところを見るに、どうやら細かいところに気をつけて俺に成りきったようだな。
とにかく今は、外に出るのが先決だ。
起き上がると一目散に駆け出し、玄関から外に飛び出す。
当然、みんなが俺のことを追いかけてくる。
『外に出たのに逃げないとは、どうやら諦めたようだな』
「いや、俺は諦めてはいないぞ。外に出たのは誘導するためだ」
シェアハウスのメンバー全員が俺のことを敵だと認識している以上、彼女たちからの援護は期待できない。寧ろ俺が攻撃を受けてしまう。
彼女たちを魔法で拘束させれば済むが、拘束魔法のリストレイントはランダムだ。ハズレを引いた場合、あられもない姿で拘束されてしまうリスクがある。
ハズレを引いた場合は、俺の気が散ることになるだろう。
そうなると、彼女たちが攻撃したくともできない状況へと陥られせば良い。
「来いよ! ルーナの弟、それとも、女の子の近くに居ないと怖くて近付けないのか?」
『誰がそんな挑発に乗るか……と言いたいところではあるが、敢えてお前の挑発に乗ってやる。お前の作戦は既に破られているのだからな』
ルーナの弟が地を蹴って駆け、俺との距離を縮めてきた。
『エンハンスドボティ』
やつは肉体強化の魔法を発動し、拳を放つ。
肉弾戦でインファイトをしてきたのは、なるべく肉体を傷付けないためだろうか?
やつの目的は俺を倒して魔術回路を奪い返し、その後ルーナを連れ去ることのはず。
下手な魔法で肉体に損傷を与え、肉体内部にある魔術回路を破壊するようなことになれば目も当てられないからな。
「スピードスター」
俊足の魔法を発動してやつの拳を躱し、時には反撃としてこちらも拳を放つ。
そして前後左右に動き、時には円を描くように移動をする。
互いに激しい攻防を行えば、タマモたちはどっちが俺で、どっちがルーナの弟なのか見失うはずだ。
判別ができなくさせれば、彼女たちは下手に攻撃をすることはできない。
「ロックアモォウ」
ルーナの弟に集中していると、後方からクリープの声が聞こえ、背後を見る。
彼女の前に複数の石が出現し、礫のように放たれてくる。
嘘だろう。
横に跳躍してクリープの攻撃を避ける。俺が飛び退いたことで、その攻撃は対面にいるルーナの弟に向かってくるが、彼も横に跳躍して回避する。
『クリープ! お前な』
「シャカール君ごめんなさい。まさか敵が避けるとは思っていませんでした。ですが、ケガの巧妙です。距離が離れたことで、正確に偽者を攻撃することができます」
敵だと認識している俺を狙った。つまり、彼女は凄まじい動体視力を持っていると言うことなのか?
いや、そんなはずはない。俺は俊足の魔法を唱えた。あの動きは強化されていない肉眼では追えない。彼女は動体視力を強化する魔法を使用していない以上、あり得ないことだ。
つまり、別の方法を用いて、俺とやつを見極めたことになる。
くそう。どんな手品を使いやがったんだ。ルーナの弟は。
思考を巡らせる。だが、多人数対個人の戦いである以上、そんな余裕は与えてはくれなかった。
「ファイヤーボール」
「ロック」
「アクアショット」
「ウインドカッター」
「サンダースネーク」
炎、岩、水、風、雷、様々な属性の魔法が一斉に俺に向けて襲い掛かってくる。
どうしてタマモたちは正確に俺のことだけを狙っている? 普通であるなら、見極めることは困難だ。
きっと何かしらの絡繰は存在しているはず。まずはそれを見つけないと、現状を変えることはできないだろう。
攻撃を避けつつも、俺は思考を巡らせ、状況の打開策を思案した。
「本当だ! シャカールトレーナーが2人!」
「あらあら、この目で見るまでは信じられませんでしたが、ママもビックリです」
「まるでシャカールちゃんのドッペルゲンガーみたいだね」
「対策を取らないと、本当にゼロナ兄を見分けるのは大変そうだね」
俺の登場にアイリン、クリープ、マーヤ、ナナミが驚きの声を上げる。ナナミが驚いているのは、カレンニサキホコルが表に出ている時に眠っていたからなのだろう。
「ルーナの弟よ、観念しろよ」
『観念? それはこっちのセリフだ。捕まるのはお前の方だ』
俺の口調を真似、まるで自身が俺であるかのようにルーナの弟は言葉を連ねる。
「そうかよ。なら、捕まえてみろ」
やつに背を向け、一目散に玄関へと向かっていく。
このままこの建物で争う訳にはいかないからな。俺が外に出れば、広い場所で戦うことができる。
「バインウイップ!」
「何!」
玄関へと向かって走っていると、突如足に何かが絡み、その場で転倒してしまう。
くそう。いったい何なんだ?
足元を見ると、蔓が足に絡まっている。このせいで転倒したのだろう。
「やりましたよ! シャカールトレーナー! 偽者を捕らえました」
「アイリン、ふざけやがって! 何が偽者だ! アイスニードル」
氷の針を魔法で出現させ、絡まった蔓を切断する。
炎の魔法では建物を燃やして火事に発展するかもしれない。なので、被害の少ない氷魔法で蔓を切った。
アイリンのあの反応、完全に俺のことを偽者だと思っているな。
一度見極めることができたタマモが何も言わないところを見るに、どうやら細かいところに気をつけて俺に成りきったようだな。
とにかく今は、外に出るのが先決だ。
起き上がると一目散に駆け出し、玄関から外に飛び出す。
当然、みんなが俺のことを追いかけてくる。
『外に出たのに逃げないとは、どうやら諦めたようだな』
「いや、俺は諦めてはいないぞ。外に出たのは誘導するためだ」
シェアハウスのメンバー全員が俺のことを敵だと認識している以上、彼女たちからの援護は期待できない。寧ろ俺が攻撃を受けてしまう。
彼女たちを魔法で拘束させれば済むが、拘束魔法のリストレイントはランダムだ。ハズレを引いた場合、あられもない姿で拘束されてしまうリスクがある。
ハズレを引いた場合は、俺の気が散ることになるだろう。
そうなると、彼女たちが攻撃したくともできない状況へと陥られせば良い。
「来いよ! ルーナの弟、それとも、女の子の近くに居ないと怖くて近付けないのか?」
『誰がそんな挑発に乗るか……と言いたいところではあるが、敢えてお前の挑発に乗ってやる。お前の作戦は既に破られているのだからな』
ルーナの弟が地を蹴って駆け、俺との距離を縮めてきた。
『エンハンスドボティ』
やつは肉体強化の魔法を発動し、拳を放つ。
肉弾戦でインファイトをしてきたのは、なるべく肉体を傷付けないためだろうか?
やつの目的は俺を倒して魔術回路を奪い返し、その後ルーナを連れ去ることのはず。
下手な魔法で肉体に損傷を与え、肉体内部にある魔術回路を破壊するようなことになれば目も当てられないからな。
「スピードスター」
俊足の魔法を発動してやつの拳を躱し、時には反撃としてこちらも拳を放つ。
そして前後左右に動き、時には円を描くように移動をする。
互いに激しい攻防を行えば、タマモたちはどっちが俺で、どっちがルーナの弟なのか見失うはずだ。
判別ができなくさせれば、彼女たちは下手に攻撃をすることはできない。
「ロックアモォウ」
ルーナの弟に集中していると、後方からクリープの声が聞こえ、背後を見る。
彼女の前に複数の石が出現し、礫のように放たれてくる。
嘘だろう。
横に跳躍してクリープの攻撃を避ける。俺が飛び退いたことで、その攻撃は対面にいるルーナの弟に向かってくるが、彼も横に跳躍して回避する。
『クリープ! お前な』
「シャカール君ごめんなさい。まさか敵が避けるとは思っていませんでした。ですが、ケガの巧妙です。距離が離れたことで、正確に偽者を攻撃することができます」
敵だと認識している俺を狙った。つまり、彼女は凄まじい動体視力を持っていると言うことなのか?
いや、そんなはずはない。俺は俊足の魔法を唱えた。あの動きは強化されていない肉眼では追えない。彼女は動体視力を強化する魔法を使用していない以上、あり得ないことだ。
つまり、別の方法を用いて、俺とやつを見極めたことになる。
くそう。どんな手品を使いやがったんだ。ルーナの弟は。
思考を巡らせる。だが、多人数対個人の戦いである以上、そんな余裕は与えてはくれなかった。
「ファイヤーボール」
「ロック」
「アクアショット」
「ウインドカッター」
「サンダースネーク」
炎、岩、水、風、雷、様々な属性の魔法が一斉に俺に向けて襲い掛かってくる。
どうしてタマモたちは正確に俺のことだけを狙っている? 普通であるなら、見極めることは困難だ。
きっと何かしらの絡繰は存在しているはず。まずはそれを見つけないと、現状を変えることはできないだろう。
攻撃を避けつつも、俺は思考を巡らせ、状況の打開策を思案した。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

追放騎手の霊馬召喚〜トウカイテイオーを召喚できずに勘当された俺は、伝説の負け馬と共に霊馬競馬界で成り上がる!
仁徳
SF
この物語は、カクヨムの方でも投稿してあります。カクヨムでは高評価、レビューも多くいただいているので、それなりに面白い作品になっているかと。
知識0でも安心して読める競馬物語になっています。
S F要素があるので、ジャンルはS Fにしていますが、物語の雰囲気は現代ファンタジーの学園物が近いかと。
とりあえずは1話だけでも試し読みして頂けると助かります。
面白いかどうかは取り敢えず1話を読んで、その目で確かめてください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる