薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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第十二章

第十三話 狙われるシェアハウスのメンバー

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 あれから俺とカレンニサキホコルは、手分けしてシェアハウスのメンバーを探した。

 運が良いのか、それとも相手が慎重に動いているのか、ルーナの弟が接触してくることもなく、無事に合流することができた。

「シャカールちゃん、その話本当なの?」

 リビングで全員が集まり、事情を話すとマーヤが本当の出来事なのかと訊ねてくる。

『ああ、本当だ。現にルーナやタマモ、それにカレンニサキホコルが目撃している』

「私はカレンニサキホコルさんと入れ替わって眠っていたから知らないけれど、カレンニサキホコルさんも同じことを言っていたよ」

 本当であること告げると、後押しをするようにナナミが続けて事実であることを告げてくれた。

「もし、本人そっくりでしたら、外見では見分けが付かないですね。シャカールトレーナーが2人、想像しただけでも鳥肌が立ちます。ただでさえ精神的にも肉体的にもキツイトレーニングが2倍になってしまいそうです」

 アイリンの言葉に苦笑いを浮かべてしまう。

 俺とあいつが一緒になってお前にトレーニングをさせることなんてないからな。

『とにかく今は、みんなが俺とあいつを間違って認識してしまわない対策が必要だ。そこで、全員にこれを配る』

 ポケットから6つの指輪を取り出す。

『これは所有者同士の体内にある魔力を共有させるアイテムだ。異世界転生者が活躍していた時代の代物だが、これを使えば装備している人物は、魔力回路を通じてその線が見える。魔力の繋がりが見えたらそれは俺だと思ってくれ』

 指輪を差し出すと、それぞれが受け取ってくれた。

「わーい! シャカールちゃんから結婚指輪をもらった!」

 指輪を受け取ったマーヤは笑顔で左手の薬指に付ける。

 どうしてそんなところに付ける! 別に指輪はそこでないといけない訳ではないからな!

 そんなことを思っていると、女性陣が急におかしな行動を取り始めた。

 一度別の場所に嵌めようとした指輪を、左手の薬指に嵌めだしたのだ。

 せっかくなら場所を統一しようとしたのだろうか。まぁ、同じ場所に指輪をすることで、彼女たち女性陣の中での一体感を表現しようとしているのかもしれない。

 そんなことを思いながら、俺は右手の親指に指輪を嵌めた。

 すると、俺の魔力回路を通じて彼女たちの魔力回路とリンクしたようだ。魔力の線が見え、彼女たちと繋がっていることを認識する。

「どうしてそんなところに指輪を嵌めるの! シャカールちゃんも左手の薬指に嵌めてよ!」

 全員と繋がっていることを確認すると、マーヤが抗議の声を上げる。

『あのな。指にはそれぞれの意味があり、どこに指輪をするのかでもその意味が違ってくるんだ。俺の場合はここで良い』

 そう、指にはそれぞれ意味を持っている。

 右手の親指は指導者の指と言われ、リーダーシップの象徴を意味する。

 左手の親指は実行や実現を意味する指だ。信念を貫く指とも言われている。

 右手の人差し指は集中力を高め、行動を促す。人々の行く道を指し示すことから統率力と言う意味もある。

 左手の人差し指は積極的な行動を促す。

 右手の中指は第六感を刺激し、ひらめきを促す。

 左手の中指は協調性を高める力を持つ。

 右手の薬指は心を落ち着かせ、想像力を高めてくれる。

 左手の薬指は愛の象徴であり、絆を高めてくれる。

 右手の小指は自分の魅力を高めてくれる。魔除けの意味としても使われる。

 左手の小指は願掛けの指でチャンスを呼び込むと言われている。

 俺は右手の親指と右手の人差し指で迷ったが、親指にした。

『みんな、俺と魔力回路を通じて繋がっていることを確認できているな』

「ついにマーヤとシャカールちゃんが繋がって一つになってしまったね」

 ある意味、色々な意味で解釈されそうな言葉をマーヤだけが言う中、他のみんなは無言で頷く。

「とりあえずはこれで安心ってことで良いのよね? 魔力の繋がりが認知できないのが、ルーナ学園長の弟さんって言う判断で?」

『ああ、その認識で良い。もし、次にやつを見つけたら殺さない程度に攻撃を与え、拘束してくれ。聞きたいことがあるんだ』

「そうですね。どうしてシャカール君を狙うのか事情を聞かないといけませんし、もし悪い子であれば、多少ごうも……良い子になる手術が必要になるでしょう」

 クリープのやつ、今拷問と言いかけて訂正しやがったな。

『そこまでしなくていい! あくまでも捕まえるのがメインだ。動くことができない程度にダメージを与えるだけで良い』

 自分と同じ顔のやつが拷問を受ける光景を見てしまっては、まるで自分が拷問に遭っているかのように思えて嫌だ。

「そうですか。なら、言われた通りにします」

 素直に捕まえるだけにとどめると言う言葉を聞き、胸を撫で下ろす。

 さて、とりあえずはこれで準備はできた。後はあの男をどうやって捕まえるかだが。

 そんなことを思っていると、突然扉が開かれて反射的に振り向く。そこには俺と同じ容姿の男が立っていた。

 ここに来るまでに何かあったのか、やつの体には擦り傷のようなものがあり、痛々しい姿だ。

 そんな彼は俺に視線を向けて睨み付けてきた。

「よぉ、ルーナの弟。さっきは良くもやってくれたな。お陰でケガをしてボロボロだ。だけど隙を付いてシェアハウスに乗り込んだのが運の尽きだ。ここでお前を捕まえる」

 やつの登場に驚いた。まさかあそこから這い上がってくるとはな。その執念深さには賞賛をする。だが、既に手駒は揃った。彼女たちは君を敵だと認識している。

 飛んで火に入る夏の虫とはお前のことだよ。偽者の俺。
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