薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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第十二章

第十二話 こいつ、ナナミに手を出しやがってもう許さん

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~シャカール視点~





 ルーナの弟が他のみんなに接触される前に、先に会って事情を説明しなければ。

 急いでシェアハウスのメンバーたちを探し出すために、俺は校舎へと向かって行く。

「さっき廊下で見たナナミちゃん、少し変じゃなかった?」

「うん、急に態度が変わったような口調で先輩たちに絡んでいたよね」

「何かあったのかな? 少し心配だよね」

 あれはもしかしてナナミの同級生か? ナナミの話をしているみたいだし、彼女の居場所を知っているかもしれない。

「そこの君たち、ちょっと良いか?」

 下級生たちに近付き、声をかける。だが、俺の姿を認識した瞬間、なぜか彼女たちは頭の上に? を浮かべているかのような表情で俺のことを見てきた。

「あれ? あなたはナナミちゃんのお兄さんのシャカール三冠王ですよね? どうしてここに? さっき校舎でナナミちゃんと一緒に居たはず?」

 下級生の1人が言葉を言った瞬間、俺は大きく目を見開く。

「何だって! ナ、ナナミは今どこに居るんだ!」

「え? あ、はい。中等部と高等部の校舎を繋ぐ廊下に居ましたが? 何でそんなことを? だって、さっきまで一緒だったでは――」

「中等部と高等部を繋ぐ廊下だな。ありがとう」

 彼女の言葉を最後まで聞かずに礼を良い、急いで七海がいる場所へと向かっていく。

 まずいな。ルーナの弟が既にナナミと接触しているとは。

 大事な義妹いもうとをやつの毒牙にかける訳にはいかない。

 急いで目的地へと向かっていく。一度昇降口から校舎内へと入り、中等部と高等部を繋ぐ渡り廊下へと向かった。

 しばらくすると、ナナミとルーナの弟の姿が視界に入った。その他にも、ルビーとシュヴァルツの姿も認識する。

 最悪の場合は、俺が偽者だと思われて攻撃を受けるかもしれない。だが、それでも接触しなければやつの味方にされてしまう。

 そう思った瞬間、ナナミが蛇の形を模った雷の魔法をルーナの弟に向けて放ち始める。

『おい! これは何の冗談だ!』

『冗談? それはこっちのセリフじゃ、最初はただふざけているだけだろうと思っておった。じゃが、先程確信した。お主、下ネタ番号ではないな? いったい何者じゃ! 真の姿を現せ!』

「カレンニサキホコル!」

 俺はナナミの体に宿っているもう一つの魂の名を呼んだ。

「ストロングウインド!」

 そして強風を生み出す魔法を唱える。

 殺傷能力のある魔法を使用すれば、万が一にもカレンニサキホコルやその後にいるルビーたちを巻き込む可能性がある。

 なので、強風を生み出して相手を吹き飛ばす魔法を発動した。

 後方からの風に気付いたのか、ルーナの弟は振り返る。そして嫌そうに顔を歪めると、横に跳躍して攻撃を避けた。

 やつがカレンニサキホコルから離れた瞬間に一気近付き、義妹の体を使っている転生馬に近付く。

「カレンニサキホコル、無事か? あの男から何かされていないか?」

『妾をカレンニサキホコルと認識できると言うことは、本物の下ネタ番号で間違いなさそうだな』

「お前とナナミの区別くらいは付くさ。感じ取れる雰囲気が全然違うからな」

『そうか。さすが下ネタ番号じゃ。それで、あやつは何者なんじゃ? どうしてお主の偽者がおる?』

「あいつはお前からすれば偽者のように映るかもしれない。だけど、あいつはルーナの弟で、本物のシャカールだ」

『お主、何を言っておる? 意味が全く分からないのじゃが?』

「事情は後で説明する。その前に、やつを捉える」

 俺はやつを捉えるために構えをとる。

 拘束魔法を当てることができれば、やつを捉えることができるだろう。そのためにも、やつの体力を減らす必要がある。

『こうも早く、俺の居場所を特定させられるとはな。本当についていない。俺が自分の知っているシャカールではないと見破られた以上、ナナミに固執する必要性は亡くなった。次のターゲットを探しに行くとするよ。それじゃ』

「逃すか! アイシク――くっ」

 魔法を発動して攻撃をしようとした瞬間、やつは球体を地面に投げ付けた。その刹那、辺りに眩い光が放たれ、目が眩んでしまう。

『じゃあね。次に合う時は戦力が整ってからであることを祈るよ』

 瞼を閉じて視界が暗くなる中、ルーナの弟の声が耳に入ってくる。

 しばらくして目が開けられる状態になると、当然ながら、やつの姿はどこにもなかった。

 今回も逃してしまったか。でも、とりあえず、ナナミをやつから引き離せたことを喜ぶか。

『あやつは消えたか。それで、あの者は何者じゃ? どうしてお主と同じ容姿をしている』

 カレンニサキホコルから訊ねられ、俺はルーナの弟との関係性を話す。

『なるほど、ルーナ学園長の弟が下ネタ番号と同じで、死者が復活した。その結果、お主の肉体にある魔術回路を取り戻そうと策略しておると言うことか』

 俺の説明を理解してくれたようで、カレンニサキホコルは納得したかのような表情を浮かべる。

「それでは、私たちは帰りましょうか。兄さん」

「え? 今の話を聞いて何か協力しようとは思わないの?」

「これは彼らの問題です。部外者である私たちが首を突っ込むようなものではありません。万が一火の粉が飛んで来た場合は、それを振り払えば良いだけですので。それでは、私たちはこれで失礼します」

 話が一段落した後、ルビーがシュヴァルツを無理やり引っ張ってこの場から離れていく。

 確かにこの件に関しては、彼女たちは部外者だ。変に関わって標的にされる訳にはいかない。

「シャカール! 俺は協力するからね! 何かあったら遠慮しないで声をかけてくれよ!」

 妹に引っ張られ、次第に声は小さくなっていく。

 もし、何かあった時は、彼にも協力してもらうとしよう。さすがにルビーは動くことはなさそうだがな。

「とりあえずはクリープとマーヤ、それにアイリンを探し出して事情を説明する。手伝ってくれないか?」

『分かった。その3人を探してこよう』
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