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第十二章

第十一話 カレンニサキホコルさんが浮気だ!

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 ~カレンニサキホコル視点~





 妾はカレンニサキホコル。元競走馬の魂、霊馬と呼ばれる存在である。ある日、異世界の実験で、妾はナナミと言う少女の肉体に宿った。

 本来であれば妾がナナミの魂を食い、彼女の魂を消滅させるはずらしいのだが、実験は失敗し、肉体に2つの魂が存在していると言う現象が起きてしまった。

『さて、帰るとするか。たく、ナナミのやつめ、宿題をしたくないからと言う理由で、急に妾と交代するとは』

 ポツリと独り言を呟き、教室を出ると、妾はシェアハウスへと向かう。

『うん? どこか懐かしいような匂いがするな?』

 廊下に出て歩いていると、どこか懐かしさを感じる匂いが鼻腔を刺激し、体が自然とそちらに向かって歩く。

「さすがルビーだね。ニホンカップの招待状をもらうなんて」

「私の実力からすれば当然ですね。まさかこんなに早く和の国に戻るようなことになるとは思っていませんでした。それよりも、誰が呼び捨てで言って良いと言いましたか? シュバルツ」

「す、すまない。だけどここは校内だ。どこで誰が聞き耳を立てているか、分からないじゃないか」

「校内を利用して、互いに呼び捨てにするのを避けているだけのような気がしますが?」

 どうやらあの2人組から懐かしい匂いが漂っているようじゃな。うん? お! おお! よく見ると馬の耳に馬の尻尾をしているではないか!

 見た目人間のように見えるところからすると、タマモやクリープたちと同じケモノ族か。

 馬のケモノ族、だから懐かしい匂いがしたのか!

 匂いの発生源の理由を知り、妾は思わず感動してしまう。

 体が自然と動き、気が付いた時には2人組の前に来ていた。

「うん? 君は? もしかして妹の友達かい?」

「いえ、下級生に友達はいません。何か用でしょうか?」

 馬のケモノ族の2人は、小首を傾げながら問うてくる。

 しまった! つい懐かしい匂いに引かれて、彼女等の前に出てしまった!

 しかし、目の前に来た以上、何も言わないでいるのも変な話じゃ。何か言うしかないのじゃが、何が良いかのう。

『お主等、馬のケモノ族じゃな?』

「ええ、そうですが? この子、変わった喋り方をしますね」

「妹よ、初対面の方に失礼ではないか」

『別に構わない。慣れておる。そうかそうか。やはり馬のケモノ族であったか。いや、この辺では見かけないと思ったのでな。つい話しかけようとしたのじゃ』

「そうだったのですか。私たちは先日、この学園に転校してきたばかりなのです」

『なるほど、納得した……それにしても馬のケモノ族か。もし、ナナミではなく、この娘が宿主であった場合、妾はもっと力を発揮していたかもしれぬな』

「カレンニサキホコルさんが浮気だ!」

 ポツリと小声で呟いた瞬間、いきなりナナミが表に現れ、声を上げてしまう。

『何が浮気じゃ! 仮の話ではないか』

「仮でも、そんなことを言う時点で浮気未遂になるんですぅ! なので浮気なの! ナナミとは遊びだったの? 体だけが目的だったんだ。カレンニサキホコルさんにとって、ナナミは都合の良い女だったんだね」

『人聞きの悪いことを言うではない! 色々と誤解を生むじゃろう』

 妾とナナミは交互に表に現れ、それぞれ声に出して発言しあう。

 他人からすれば、いきなり1人2役を演じ始めたおかしな人扱いをされてしまうだろう。

 現に、目の前にいる2人は、訝しむように妾を見ている。

「兄さん、どうやらこの子とは関わらない方が良さそうね」

「俺もそう思う。良く言えば個性的だが、知り合いにはなりたくないタイプだ」

 兄妹きょうだいのヒソヒソ話が耳に入ってくる。

 まずい。このままではナナミが、変なやつと言う噂が学園中に広まってしまう。

『あ、ナナミこんなところに居たんだ』

 直ぐに誤解を解かなければ。そう思った時、黒髪の吊り目気味の男が声をかけてくる。

『下ネタ番号ではないか? 何か用か?』

「シャカール君じゃないか。え? この変わった子って君の知り合いだったの?」

 彼が現れると、男の馬のケモノ族が下ネタ番号に声をかける。

 どうやらこやつ等は、下ネタ番号の知り合いのようじゃのう。

『え? あ? ああ。そうなんだよ。こいつは俺の義理の妹のナナミだ』

 突然話しかけられ、戸惑ってしまっているのか、下ネタ番号は歯切れの悪い感じで言葉を放つ。

『下ネタ番号、丁度良かった。実はナナミが急に表に現れてだな。妾が変人扱いをされておる。悪いが変わりに事情を話してくれぬか? 妾が説明するよりも信じてくれるはずじゃ』

 妾に変わって説明をするようにお願いをする。だが、彼は苦笑いを浮かべ、その場で突っ立ているだけじゃった。

『七海、変わった遊びをしているな? もしかして友達との遊びで負けて罰ゲームをさせられているのか?』

『お主、ふざけているのか! それよりも妾に変わって説明をするのじゃ』

 何か違和感を覚えつつも、再び説明をするように要求する。

『とは言っても、俺とナナミは血の繋がっていない妹とさっき紹介しただろう?』

『ナナミのことではない! 妾! カレンニサキホコルについてじゃ!』

 我慢の限界になり、思わず声を荒げてしまう。

『ナナミ、落ち着いてくれ。お前何を言っているんだ? いくら罰ゲームでそんな口調になっていたとしても、時と場合を考えてくれ。度を過ぎるようでは、さすがに怒るぞ』

『そうか。そっちがその気なら、こうじゃサンダースネーク!』

 妾は魔法を放ち、蛇の形を象った雷をやつに向けて放つ。

 じゃが、あやつは後方に跳躍して躱し、標的を外した雷の蛇はUターンして戻ってくる。

『おい! これは何の冗談だ!』

『冗談? それはこっちのセリフじゃ、最初はただふざけているだけだろうと思っておった。じゃが、先程確信した。お主、下ネタ番号ではないな? いったい何者じゃ! 真の姿を現せ!』
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