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第十二章
第三話 シュヴァルツの思惑
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転校生のルビーの兄であるシュヴァルツの脅迫により、俺は校舎内を案内することになった。
最低限の場所で良いと言われ、食堂やトレーニング施設など、重要な場所へと案内していく。
「この学園は良いね。設備も最先端のものが取り揃えているし、生徒たちも伸び伸びと暮らしている。俺のにらんだ通りだ」
校舎を案内している最中、シュヴァルツは笑みを浮かべながら言葉を吐き、納得したかのように頷く。
「あ、あそこにベンチがあるね。ちょっと休憩していかないかい?」
「まぁ、良いが」
休憩をしようと提案され、俺たちはベンチに腰をかける。
「それにしても、この時期に転校とは珍しいな。ルーナから誘われたのか?」
「ルーナ学園長? いや、彼女からは何も言われていないよ。この学園に来たのは俺の意思さ。でも、妹は納得していないみたいだけど」
遠くを見つめ、彼は俺の問いに答える。
「シャカール、君から見て、ルビーはどのように見えた?」
「どのようにって、そうだなぁ」
右手の親指を顎に当て、思案顔を作る。
「容姿は良いし、クラスメートたちからの質問にも嫌な顔をせずに答えるから、最初は好感を持った。だけど、たまに見せるあの目は、どこか俺たちをバカにしているように思った。俺たちのことを見下しているように思わせる発言も、たまたま聞こえてしまったからな。正直あいつの本性がバレたら、大変なことになりそうだと思っている」
シュヴァルツの問いに答えると、彼は何故か目を輝かせていた。そして俺の手を掴む。
「結婚してくれ」
「さっきから、お前のその誤解を生む発言はなんなんだ!」
再びプロボーズを受け、咄嗟に声を上げてしまう。
「すまない、すまない。妹のことを初見で見抜いたことに、感銘を受けてしまってね。つい、言葉を省略してしまったよ。あははは!」
彼は本気で悪いとは思っていないようで、笑みを浮かべながら謝罪の言葉を述べる。
「では、正確な発言をしよう。俺の妹と結婚してくれないか?」
「どうしてそうなってしまう?」
当然ながら、俺は戸惑いつつも疑問を疑問で返した。
「これは、身内の恥ずかしい話になってしまうのだけど、俺の妹は和の国では5本の指に入るほどに優秀だ。ウマのケモノ族の中でもトップだね。これまでレースでは無敗を記録している」
「だから、あんな性格になっていると?」
俺の問いに、彼は無言で頷く。
「妹はどんなレースでも勝ち続けているから、図に乗ってしまい、殆どの走者を見下すようになった。その結果、彼女の周りにいた友人たちは離れて行ってしまった」
誰だって、見下されるような発言をされれば腹が立つものだ。その結果は必然だろう。
「孤立してしまった妹を見て、俺は転校を考えた。そんな時に君の噂を耳にしてね。世界初人族の三冠王が誕生したと。彼の居る学園に入れば、妹は変わるのではないか。そう思ったんだ」
彼等が転校して来た理由は分かった。だが、彼の話を聞いた瞬間、ため息を吐きたい気持ちになった。
また面倒事に巻き込まれてしまったな。つまり、三冠王の俺が、彼女をどうにかしてほしいから、この学園に来たのだ。
「お前、兄貴だろう? 兄としてビシッと言ったらどうだ?」
「無理! 無理! 無理! いくらウマのケモノ族であっても、俺は妹には勝てない! 一応兄として接してくれてはいるが、内心見下されているんだよ。二人っきりの時なんて、兄さんと呼ばずにシュヴァルツって呼び捨てにするんだから!」
彼は大きく顔を左右に振り、それはできないと言ってきた。
兄としての威厳がないな。
「そんな訳で、妹を負かせてくれないか? 君が勝って、プライドをズタズタにすれば、妹も少しはマシになると思うんだ」
「それは面倒――」
「俺のお願いを聞いてくれなければ、俺と君が交際関係にあると嘘を広めるよ」
「お前、正気か?」
「正気さ。肉を切らせて骨を断つ」
こいつ、全然正気じゃねぇ! 何が肉を切らせて骨を断つだ! 妹のために自身を犠牲にするとしても、方向性が間違っているだろう!
しかし、彼の目は本気だと言っている。俺まで同性愛主義者だと思われたくない。
「分かったよ。ルビーとレース勝負をして勝てば良いのだろう?」
面倒事に巻き込まれてしまったが、俺の尊厳を守るためにも、ここは引き受けなければならない。
小さく息を吐いていると、2人組の女子生徒がこちらに向かって歩いて来るのが見えた。
タマモとルビーだ。
「あれ? シャカール君とルビーさんのお兄さんじゃない? もしかして、シャカール君がお兄さんを案内していたの? 珍しいわね」
二人っきりではないからか、タマモは猫被りモードで俺のことを君付けで呼んでくる。
「ルビーちょうど……ひっ! い、妹よ。丁度良いところで会った」
シュヴァルツがルビーのことを呼び捨てで言った瞬間、彼は怯んだ。そして直ぐに妹と言い直す。
あ、やっぱり彼の言った通り、力関係はルビーの方が上のようだ。
「なんですか? に・い・さ・ん」
「いや、シャカールが君に言いたいことがあるんだ」
俺が言いたい事がある。そのように言うと、ルビーは俺の方を見た。
彼女は無言であったが『人族如きが、私に何のようですか。時間の無駄なので手短にしてほしいのですが』と目で訴えているのを感じ取った。
だが、俺は別に彼女に言いたい事はない。敢えて言うのであれば、模擬戦の申し込みくらいだろうが、それは今ではない。
「あれ? もしかして恥ずかしがっているのかな? 仕方がない。ここは俺がシャカールに代わって言うしかないようだね『ルビー、俺と勝負だ。俺が勝ったら結婚してくれ』と彼は言いたいんだよ」
「「えええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」」
予想していなかった発言に、俺とタマモの叫び声が重なる。
こいつ、本当に何を考えているんだ。
最低限の場所で良いと言われ、食堂やトレーニング施設など、重要な場所へと案内していく。
「この学園は良いね。設備も最先端のものが取り揃えているし、生徒たちも伸び伸びと暮らしている。俺のにらんだ通りだ」
校舎を案内している最中、シュヴァルツは笑みを浮かべながら言葉を吐き、納得したかのように頷く。
「あ、あそこにベンチがあるね。ちょっと休憩していかないかい?」
「まぁ、良いが」
休憩をしようと提案され、俺たちはベンチに腰をかける。
「それにしても、この時期に転校とは珍しいな。ルーナから誘われたのか?」
「ルーナ学園長? いや、彼女からは何も言われていないよ。この学園に来たのは俺の意思さ。でも、妹は納得していないみたいだけど」
遠くを見つめ、彼は俺の問いに答える。
「シャカール、君から見て、ルビーはどのように見えた?」
「どのようにって、そうだなぁ」
右手の親指を顎に当て、思案顔を作る。
「容姿は良いし、クラスメートたちからの質問にも嫌な顔をせずに答えるから、最初は好感を持った。だけど、たまに見せるあの目は、どこか俺たちをバカにしているように思った。俺たちのことを見下しているように思わせる発言も、たまたま聞こえてしまったからな。正直あいつの本性がバレたら、大変なことになりそうだと思っている」
シュヴァルツの問いに答えると、彼は何故か目を輝かせていた。そして俺の手を掴む。
「結婚してくれ」
「さっきから、お前のその誤解を生む発言はなんなんだ!」
再びプロボーズを受け、咄嗟に声を上げてしまう。
「すまない、すまない。妹のことを初見で見抜いたことに、感銘を受けてしまってね。つい、言葉を省略してしまったよ。あははは!」
彼は本気で悪いとは思っていないようで、笑みを浮かべながら謝罪の言葉を述べる。
「では、正確な発言をしよう。俺の妹と結婚してくれないか?」
「どうしてそうなってしまう?」
当然ながら、俺は戸惑いつつも疑問を疑問で返した。
「これは、身内の恥ずかしい話になってしまうのだけど、俺の妹は和の国では5本の指に入るほどに優秀だ。ウマのケモノ族の中でもトップだね。これまでレースでは無敗を記録している」
「だから、あんな性格になっていると?」
俺の問いに、彼は無言で頷く。
「妹はどんなレースでも勝ち続けているから、図に乗ってしまい、殆どの走者を見下すようになった。その結果、彼女の周りにいた友人たちは離れて行ってしまった」
誰だって、見下されるような発言をされれば腹が立つものだ。その結果は必然だろう。
「孤立してしまった妹を見て、俺は転校を考えた。そんな時に君の噂を耳にしてね。世界初人族の三冠王が誕生したと。彼の居る学園に入れば、妹は変わるのではないか。そう思ったんだ」
彼等が転校して来た理由は分かった。だが、彼の話を聞いた瞬間、ため息を吐きたい気持ちになった。
また面倒事に巻き込まれてしまったな。つまり、三冠王の俺が、彼女をどうにかしてほしいから、この学園に来たのだ。
「お前、兄貴だろう? 兄としてビシッと言ったらどうだ?」
「無理! 無理! 無理! いくらウマのケモノ族であっても、俺は妹には勝てない! 一応兄として接してくれてはいるが、内心見下されているんだよ。二人っきりの時なんて、兄さんと呼ばずにシュヴァルツって呼び捨てにするんだから!」
彼は大きく顔を左右に振り、それはできないと言ってきた。
兄としての威厳がないな。
「そんな訳で、妹を負かせてくれないか? 君が勝って、プライドをズタズタにすれば、妹も少しはマシになると思うんだ」
「それは面倒――」
「俺のお願いを聞いてくれなければ、俺と君が交際関係にあると嘘を広めるよ」
「お前、正気か?」
「正気さ。肉を切らせて骨を断つ」
こいつ、全然正気じゃねぇ! 何が肉を切らせて骨を断つだ! 妹のために自身を犠牲にするとしても、方向性が間違っているだろう!
しかし、彼の目は本気だと言っている。俺まで同性愛主義者だと思われたくない。
「分かったよ。ルビーとレース勝負をして勝てば良いのだろう?」
面倒事に巻き込まれてしまったが、俺の尊厳を守るためにも、ここは引き受けなければならない。
小さく息を吐いていると、2人組の女子生徒がこちらに向かって歩いて来るのが見えた。
タマモとルビーだ。
「あれ? シャカール君とルビーさんのお兄さんじゃない? もしかして、シャカール君がお兄さんを案内していたの? 珍しいわね」
二人っきりではないからか、タマモは猫被りモードで俺のことを君付けで呼んでくる。
「ルビーちょうど……ひっ! い、妹よ。丁度良いところで会った」
シュヴァルツがルビーのことを呼び捨てで言った瞬間、彼は怯んだ。そして直ぐに妹と言い直す。
あ、やっぱり彼の言った通り、力関係はルビーの方が上のようだ。
「なんですか? に・い・さ・ん」
「いや、シャカールが君に言いたいことがあるんだ」
俺が言いたい事がある。そのように言うと、ルビーは俺の方を見た。
彼女は無言であったが『人族如きが、私に何のようですか。時間の無駄なので手短にしてほしいのですが』と目で訴えているのを感じ取った。
だが、俺は別に彼女に言いたい事はない。敢えて言うのであれば、模擬戦の申し込みくらいだろうが、それは今ではない。
「あれ? もしかして恥ずかしがっているのかな? 仕方がない。ここは俺がシャカールに代わって言うしかないようだね『ルビー、俺と勝負だ。俺が勝ったら結婚してくれ』と彼は言いたいんだよ」
「「えええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」」
予想していなかった発言に、俺とタマモの叫び声が重なる。
こいつ、本当に何を考えているんだ。
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