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第十一章

第十四話 犯人はクリープ

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 ルーナから教えてもらった真実に、俺は驚きを隠せなかった。

「クリープがこの騒動の犯人ってどう言うことだよ! そんなの、簡単に信じられる訳がないだろう!」

 あのクリープが、学園の女子生徒たちを発情させ、混乱に陥れようと考えているとは、とても思えなかった。

「信じられない気持ちも分かる。だが、事実だ。その証拠もある」

 ルーナが机の引き出しから、袋に包まれた菓子を取り出す。彼女が見せた菓子には見覚えがあった。

 あれは、今朝クリープが作ってくれたクッキーやビスケット!

「お裾分けで貰ったのだが、一口食べただけで違和感を覚えてね。それで念の為に成分を調べてみたら、性欲を高めるエストロゲンの分泌を促す物質が混ざっていることが分かった」

「性欲を高める物質、それでケモノ族ではない女の子たちがあんな状態に」

「この事実を知ったワタシは直ぐに行動に出た。学園の男子たちを次々と眠らせて閉じ込め、隔離することにしたのだ」

「またあのお菓子を食べていなかった私もそのことを知り、男子拘束を手伝っていた時に、あなたを見つけたと言う訳です」

 ルーナに続き、シャワーライトが言葉を連ねる。

 元凶はクリープ。だけど、彼女がこんなことをする理由が思いつかない。きっと何かあるはずだ。

 今日、昨日、一昨日と、次々と過去のことを思い出していく。

 すると、クリープが風邪気味だったあの日のことを思い出した。

 確か、あの時クリープは風邪薬とは別の薬を作っていると言っていた。そしてシェアハウスを飛び出すことになる前には、タマモとクリープは発情を抑える薬を飲んでいたと言う証言がある。

 仮定の話になってしまうが、もし、クリープがあの時熱があり、俺を心配させないために微熱程度だと嘘を言っていたとしたら、薬の調合を間違えて発情を促す薬を作った。

 そしてその薬を飲んだことで、思考がエロティックになっていたとしたら、意図的に発情を促す成分を混ぜ込むことも可能だ。

 全て俺の憶測にすぎないが、可能性としては0ではない。

 その可能性に辿り着いた俺は、冷や汗をかいた。

 俺以外の男子生徒は閉じ込められている。そして、発情を促すお菓子を食べた者は、発散するためにターゲットを狙う。百合を好む女子生徒は俺を狙わないだろうが、ノーマルな性癖の女子生徒は間違いなく、俺を見つけたら性欲の吐口としようとしてくるだろう。

 そしてあのお菓子を一番多く食べたのは、シェアハウスのメンバーたちだ。これから俺は、あいつらからも襲われる可能性が高い。

「なぁ、女子生徒たちを正気に戻す方法はないのか?」

「今から薬を作っても間に合わない。薬の効果が無くなるのを待つしかないね。タイムリミットは明朝の朝日が昇る頃だと推測する」

「明朝か」

 本当にゾンビが登場する物語のような展開だな。相手が下着姿の女子生徒と言う違いはあるが。

 こうなったら、時間一杯逃げ続けるしかない。

「みーつけた♡ シャカールちゃん、ここに居たんだ♡」

 マーヤの声が聞こえた瞬間、窓ガラスが一斉に割れ、割れた窓からセイレーンの女の子と、様々な種族の女子生徒が学園長室へと侵入してきた。

「マーヤ、やっぱりお前も」

「マーヤね。今、とてもシャカールちゃんと繋がりたい気分なの♡ だから今から食べちゃうね」

 頬を赤くし、マーヤが一歩近付く。

「気配遮断の魔法の効果が切れていたか。シャカール! お前は逃げろ、ここはワタシが食い止めるから」

 ルーナから逃げるように促される。

 ルーナはこの学園の学園長だ。魔法にも長けている。だから心配する必要はないだろう。

「分かった。ここは任せ……」

「邪魔をする悪い子にはお仕置きだよ! マーヤ隊! 突撃!」

 この場を任せると言った直後、マーヤが突撃の合図を出す。その瞬間、まるでゾンビの群れの如く女子生徒が飛び出し、ルーナとシャワーライトを押し倒した。

「お前たち、何をうぐっ!」

「きゃああああああぁぁぁぁぁ!」

 ルーナとシャワーライトが女子生徒に押し倒され、彼女たちの悲鳴が響く。

 隙間からチラリと見えたが、女子生徒たちは手に持っている菓子をルーナたちの口の中へと詰め込んでいる。

 その数秒後、女子生徒たちはルーナたちから離れると、ルーナとシャワーライトは服を脱ぎ出す。

 嘘だろう。ルーナがあっさりと倒されてしまうなんて。

「シャカール♡ お姉ちゃんとい・い・こ・と・しよう」

「ウイニングライブさん♡今向かいますからね♡」

 シャワーライトはウイニングライブを探しに飛び出して行くが、ルーナは完全に俺を狙っている。

 ミイラ取りがミイラになってしまった。

 状況を考えるに、もうこの学園に俺の味方はいない。

 絶望感があるが、この場に留まってはルーナたちに捕まってしまう。捕まってしまっては最後、俺の子種は全て出され、干涸びてしまうかもしれない。

「くそおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!」

 俺は声を上げながら学園長室から飛び出す。

 廊下にある時計は、現在夜の20時だ。夜明けまで10時間。それまで、俺は学園の女子生徒から逃げださなければならない。
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