196 / 269
第十一章
第七話 タマモの嫉妬
しおりを挟む
~タマモ視点~
学園に戻ってからのシャカールとの関係は最悪だったわ。彼は何食わぬ顔で声をかけてくるのだけど、それが逆に腹立たしかった。
よくも、あたしをこれまで騙していたわね。スカーレット家の存続をかけた大切なことなのに、それをあたしに相談もしないなんて。兄さんもシャカールも嫌いよ!
彼の評価が下がった日々が過ぎ、登校日となった今日、あたしは学園に向かう準備をしていた。
みんなが同じ時間帯に出ると言う現象が起き、今日は珍しいなと思っていると、シャカールを取り囲むようにして、みんなが歩く。
そんな光景を、あたしは少し距離を開けた状態で歩いていた。
妹のナナミちゃんや、シャカールを狙っているマーヤ先輩が距離を近付けるのは良いわ。いや、恋人でもないのに、ベタベタしてくるマーヤ先輩もやっぱりダメよ。
そしてクリープ先輩やアイリンも、少しだけ距離が近いような気がする。
どうして、みんないつもと違うの?
疑問に思っていると、帰省した後に、兄さんから言われた言葉を思い出す。
もしかして、みんな親からシャカールを狙うように言われたのかしら? 確かに、彼はクラウン路線の三冠を達成して王様から正式に貴族となるように爵位を授けられたらしい。
彼に嫁ぐようなことになれば、将来安定な生活を送れるでしょうね。
でも、いくらなんでも露骨過ぎないかしら? シャカールも歩きにくそうな感じをしているし、ここは学級委員長として注意をした方が良いわね。みんな同じクラスではないし、2人は先輩だけど。言うべきことは言ったほうが良いわよ。
「み――」
「なぁ、タマモ?」
彼女たちに注意を促そうとした瞬間、いきなりシャカールが話しかけてきた。
「何よ、話しかけないでよ」
彼に声をかけられたことで、急に悪い感情が湧き上がって来てしまった。そのせいで、反射的に彼を拒絶する言葉を投げてしまった。
あたしの言葉に臆してしまったのか、彼は咄嗟に正面を向き直る。
はぁ、どうしてあたしは反射的に拒絶の言葉を言ってしまったのかしら。
自身でも驚く程の返しに少し嘆いてしまっていると、いつの間にか学生寮の前にたどり着いた。
「三冠王のシャカール様よ! 人族初の三冠で史上初の快挙を成し遂げた優良物件!」
学生寮に住んでいる女子生徒の声が耳に入ってくる。
何が優良物件よ! シャカールは建物じゃないのよ! 彼を物みたいに扱わないで!
あたしは咄嗟にヒソヒソ話をしている女子グループに視線を向けた。
「声をかけてお近づきになりたいけれど、取り巻きの連中が邪魔……ヒッ! 今こっちを睨まなかった? 怖い。取り巻きが近くにいる間は、話しかけられないわね」
あたしが視線を向けると、1人の女子生徒が萎縮してしまう。
誰が取り巻きよ! あたしをあんな奴らと一緒にしないで!
あー、もう! どうして朝っぱらからこんなにイライラしないといけないのよ! これも全てシャカールのせいなんだから!
イライラが治らないでいると、校舎に辿り着く。玄関で校舎用の靴に履き替え、それぞれが自分たちの教室へと向かうことになる。
「タマモちゃん! 教室でシャカールちゃんのことは頼んだからね!」
「タマモさん、教室が違うので、シャカールトレーナーのことはよろしくお願いしますね!」
「タマちゃんなら、安心してシャカール君を見張ってくれると思っています。休み時間などは様子を見に来ますので、それ以外の時間帯はお願いしますね」
「どうしてタマモお姉ちゃんに皆さんがお願いしているのかわからないですが、皆さんに習ってナナミも同じことを言います。ゼロナ兄のことをお願いします」
「え? え? あ、は、はい」
クリープ先輩たちにシャカールをお願いされ、彼女たちの圧に押されてしまったあたしは、戸惑いながらも了承してしまう。
あたしが了承すると、彼女たちは安堵の表情を浮かべた。
どれだけあたしのことを信頼しているのよ。それじゃ、がっかりされないために頑張るしかないじゃない!
疲れてしまいそうな気がするのだけど、ここは仕方がないわね。学級委員長として、みんなの友達として頑張るわよ!
半ばヤケクソになって教室へと向かっていると、女性グループが視界に入った。
「あ、シャカール様よ!」
「今朝の取り巻きの姿が見当たらないし、今なら話しかける絶好のチャンスかも! 私、行ってくる」
シャカールに話しかけようとする女子生徒の会話が耳に入り、1人の女子生徒がこちらに向かってくる。
そうはさせないわ!
あたしは女子生徒に向けて睨み付けようとした。すると、彼女は顔色を悪くして直ぐに引き返す。
あれ? まだ睨み付けていないのに、引き返して行ったわね。
彼女の行動に疑問を持っていると、あたしの掌に小さい火球が生み出されていることに気付く。
あれ? どうしてあたし、魔法なんて発動しているのかしら?
どうやら、無意識に魔法を発動してしまったみたいね。こんなこと初めてだわ。
火球を消し、あたしはシャカールと1メートルの距離を保った状態で廊下を歩き、教室に辿り着いた。
シャカールが教室内に入ると、クラス内にいる女子生徒が一斉に視線を向けた。
やっぱり、注目を集めてしまうわね。
教室内にいる女子のクラスメートは全員敵、そのように思えてくるのは何故かしら?
学園に戻ってからのシャカールとの関係は最悪だったわ。彼は何食わぬ顔で声をかけてくるのだけど、それが逆に腹立たしかった。
よくも、あたしをこれまで騙していたわね。スカーレット家の存続をかけた大切なことなのに、それをあたしに相談もしないなんて。兄さんもシャカールも嫌いよ!
彼の評価が下がった日々が過ぎ、登校日となった今日、あたしは学園に向かう準備をしていた。
みんなが同じ時間帯に出ると言う現象が起き、今日は珍しいなと思っていると、シャカールを取り囲むようにして、みんなが歩く。
そんな光景を、あたしは少し距離を開けた状態で歩いていた。
妹のナナミちゃんや、シャカールを狙っているマーヤ先輩が距離を近付けるのは良いわ。いや、恋人でもないのに、ベタベタしてくるマーヤ先輩もやっぱりダメよ。
そしてクリープ先輩やアイリンも、少しだけ距離が近いような気がする。
どうして、みんないつもと違うの?
疑問に思っていると、帰省した後に、兄さんから言われた言葉を思い出す。
もしかして、みんな親からシャカールを狙うように言われたのかしら? 確かに、彼はクラウン路線の三冠を達成して王様から正式に貴族となるように爵位を授けられたらしい。
彼に嫁ぐようなことになれば、将来安定な生活を送れるでしょうね。
でも、いくらなんでも露骨過ぎないかしら? シャカールも歩きにくそうな感じをしているし、ここは学級委員長として注意をした方が良いわね。みんな同じクラスではないし、2人は先輩だけど。言うべきことは言ったほうが良いわよ。
「み――」
「なぁ、タマモ?」
彼女たちに注意を促そうとした瞬間、いきなりシャカールが話しかけてきた。
「何よ、話しかけないでよ」
彼に声をかけられたことで、急に悪い感情が湧き上がって来てしまった。そのせいで、反射的に彼を拒絶する言葉を投げてしまった。
あたしの言葉に臆してしまったのか、彼は咄嗟に正面を向き直る。
はぁ、どうしてあたしは反射的に拒絶の言葉を言ってしまったのかしら。
自身でも驚く程の返しに少し嘆いてしまっていると、いつの間にか学生寮の前にたどり着いた。
「三冠王のシャカール様よ! 人族初の三冠で史上初の快挙を成し遂げた優良物件!」
学生寮に住んでいる女子生徒の声が耳に入ってくる。
何が優良物件よ! シャカールは建物じゃないのよ! 彼を物みたいに扱わないで!
あたしは咄嗟にヒソヒソ話をしている女子グループに視線を向けた。
「声をかけてお近づきになりたいけれど、取り巻きの連中が邪魔……ヒッ! 今こっちを睨まなかった? 怖い。取り巻きが近くにいる間は、話しかけられないわね」
あたしが視線を向けると、1人の女子生徒が萎縮してしまう。
誰が取り巻きよ! あたしをあんな奴らと一緒にしないで!
あー、もう! どうして朝っぱらからこんなにイライラしないといけないのよ! これも全てシャカールのせいなんだから!
イライラが治らないでいると、校舎に辿り着く。玄関で校舎用の靴に履き替え、それぞれが自分たちの教室へと向かうことになる。
「タマモちゃん! 教室でシャカールちゃんのことは頼んだからね!」
「タマモさん、教室が違うので、シャカールトレーナーのことはよろしくお願いしますね!」
「タマちゃんなら、安心してシャカール君を見張ってくれると思っています。休み時間などは様子を見に来ますので、それ以外の時間帯はお願いしますね」
「どうしてタマモお姉ちゃんに皆さんがお願いしているのかわからないですが、皆さんに習ってナナミも同じことを言います。ゼロナ兄のことをお願いします」
「え? え? あ、は、はい」
クリープ先輩たちにシャカールをお願いされ、彼女たちの圧に押されてしまったあたしは、戸惑いながらも了承してしまう。
あたしが了承すると、彼女たちは安堵の表情を浮かべた。
どれだけあたしのことを信頼しているのよ。それじゃ、がっかりされないために頑張るしかないじゃない!
疲れてしまいそうな気がするのだけど、ここは仕方がないわね。学級委員長として、みんなの友達として頑張るわよ!
半ばヤケクソになって教室へと向かっていると、女性グループが視界に入った。
「あ、シャカール様よ!」
「今朝の取り巻きの姿が見当たらないし、今なら話しかける絶好のチャンスかも! 私、行ってくる」
シャカールに話しかけようとする女子生徒の会話が耳に入り、1人の女子生徒がこちらに向かってくる。
そうはさせないわ!
あたしは女子生徒に向けて睨み付けようとした。すると、彼女は顔色を悪くして直ぐに引き返す。
あれ? まだ睨み付けていないのに、引き返して行ったわね。
彼女の行動に疑問を持っていると、あたしの掌に小さい火球が生み出されていることに気付く。
あれ? どうしてあたし、魔法なんて発動しているのかしら?
どうやら、無意識に魔法を発動してしまったみたいね。こんなこと初めてだわ。
火球を消し、あたしはシャカールと1メートルの距離を保った状態で廊下を歩き、教室に辿り着いた。
シャカールが教室内に入ると、クラス内にいる女子生徒が一斉に視線を向けた。
やっぱり、注目を集めてしまうわね。
教室内にいる女子のクラスメートは全員敵、そのように思えてくるのは何故かしら?
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】
雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。
そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!
気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?
するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。
だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──
でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる