薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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第十一章

第六話 仲間に起きる異変

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 イノックス王からサラッと爵位を渡された俺は、本当に王様がすることなのかよと思える対応で、あの後城から追い出された。

 それから学園に帰り、ナナミに子爵になったことを告げると、彼女は自分のことのように喜んでくれた。





 翌日、帰省でシェアハウスを出て行った女性陣が帰って来たが、何故か様子がおかしい。

 マーヤはいつも通りのような気もするのだが、どこかスキンシップに違いがあるような気がする。

 アイリンもなぜか俺に気を使うような素振りも見せて、正直気持ち悪い。

 アイリンのやつ、何を企んでいるんだ? もしかして、俺が知らない間に何かをやらかして、それでご機嫌取りをしているのだろうか?

 クリープは、昔に戻ったかのように、過剰に甘やかそうとしてくる。そしてもし、子どもがいたらなど、ifイフの話をしてくるようになった。

 だが、彼女たちに対してタマモは真逆だ。俺が話しかけようとすると冷たい態度であしらわれ、避けられている。

 俺、タマモに何かしただろうか? これまでの行いを思い出してみるも、彼女の機嫌を損なわせるようなことはしていないはず。

 アイリンではないが、俺もタマモのご機嫌取りをした方が良いのだろうか?





 シェアハウスの女性陣が帰って来てから、翌日の登校日となり、俺たちは校舎へと向かって行った。

 普段はみんなバラバラの時間帯にシェアハウスを出て行くのだが、今回は珍しく全員が同じタイミングで住居から出ると、俺を取り囲むような配置で歩く。

 俺の前をクリープが歩き、両サイドをアイリンとマーヤ、そして後ろを七海が歩き、少し離れた位置にタマモが歩く形となっていた。

 正直に言って歩き難い。

「なぁ、どうしてみんなは俺の周りを歩いているんだ? それにクリープが前に居ると、歩き難いのだけど?」

 彼女たちの不可解な行動に疑問に思い、訊ねてみる。

「シャカールちゃんの隣はマーヤだからに決まっているじゃない!」

「シャカールトレーナーの弟子として、隣を歩くのは当然です!」

「ママはシャカール君の身の安全の確認のために歩いているのです。小石に躓いて転んでケガをしたら、大変ではないですか? もし、ケガをしたら、ママが『痛いの痛いの飛んで行け!』って言って、消毒してあげますが」

 クリープの発言に苦笑いを浮かべる。

 マーヤは通常通りとして、アイリンは普段そんなことは言わないはず。それにクリープの過保護にも拍車がかかっているような?

 女性陣に囲まれる中、俺はチラリと後方を見る。

 タマモは元気のなさそうに頭を下げ、視線を下に向けていた。

「なぁ、タマモ?」

「何よ、話しかけないでよ」

 彼女の返しに、心の中でため息を吐く。

 俺、本当に何をしたのだろうか?

 みんな、帰省してからの様子がおかしい。

 居心地に悪さを感じて居ると、学生寮前に辿り着く。この辺りになると、他の生徒たちとすれ違うのだが、殆どの生徒からの視線を感じた。

 俺が三冠王となったから、少しは注目を集めるようになるのでは? そう思っていたが、予想以上だ。

「三冠王のシャカール様よ! 人族初の三冠で史上初の快挙を成し遂げた優良物件!」

「声をかけてお近づきになりたいけれど、取り巻きの連中が邪魔……ヒッ! 今こっちを睨まなかった? 怖い。取り巻きが近くにいる間は、話しかけられないわね」

「シャカールと友好関係を気付けば、取り巻きの女の子とも仲良くなれるんじゃないか?」

「やめとけよ。彼女たちは既に唾をつけられている。手を出そうとしたら、殺されるぞ。あいつはもう、俺たちとは違う世界にいるんだ。気に食わないやつは簡単に処刑できる権利を持っている」

 学生たちのヒソヒソ話が少しだけ耳に入ってくる。

 シェアハウスのメンバーに唾なんてつけていないし、気に食わないからと言って、処刑したりもしない。

 まずいな。変な噂話が流れれば、尾鰭が付いて鬼畜な男として学園中に広まる恐れがある。学生の誤解を招かないためにも、行動には気をつけたほうが良いのかもしれない。

 そんなことを考えながら歩いていると、校舎に辿り着いた。

「タマモちゃん! 教室でシャカールちゃんのことは頼んだからね!」

「タマモさん、教室が違うので、シャカールトレーナーのことはよろしくお願いしますね!」

「タマちゃんなら、安心してシャカール君を見張ってくれると思っています。休み時間などは様子を見に来ますので、それ以外の時間帯はお願いしますね」

「どうしてタマモお姉ちゃんに皆さんがお願いしているのかわからないですが、皆さんに習ってナナミも同じことを言います。ゼロナ兄のことをお願いします」

「え? え? あ、は、はい」

 クリープたちにお願いをされ、タマモは戸惑いながらも承諾をした。

 彼女は俺に対してあまり良い反応をしてくれない。もしかしたら、嫌なのかもしれない。

 これ以上、タマモとの関係を悪くして、更に居心地に悪さを感じたくはない。彼女に迷惑をかけないように、今日は大人しくしておくか。

 そんなことを思いながら、俺とタマモは教室へと向かって行くが、互いに無言のままだ。

 廊下を歩くと当然のようにヒソヒソ話が聞こえ、女子生徒がこちらに向かって来ると思えば、なぜか急いで引き返す謎の現象がチラホラと起きた。

 早く教室に入りたい。そして自分の席で休まりたい。今日は一日が長くなりそうだ。そんな気がしてならない。
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