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第九章
第三十二話話 トラッポラ記念⑧決着
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~クリープ視点~
『1位争いをする2人を追いかけるように、ここで地方の怪物オグニが怒涛の追い上げを見せる!』
「お腹空いたああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そんな! オグニちゃんの怪物が目覚めてしまうなんて!
彼女は空腹になると、レースを終わらせるために、通常では考えられないような走りをみせます。その対策として、彼女に満腹感を与える大福を差し上げましたのに、どうして彼女の怪物は目覚めてしまったのでしょうか?
『怪物と呼ばれた末脚がここで火を吹く! あっと言う間にクリープとサザンクロスに追い付いた!
ゴールに向けて走りながら、隣にまで迫ったオグニちゃんを見ます。彼女の勝負服はボロボロとなっており、擦り傷のようなものが見えました。
「やっと追い付いた。最後のギミックには骨が折れたよ。2人に引き離されないために、無我夢中で走り抜けて来たのだから」
オグニちゃんの言葉が耳に入った瞬間、ママは怪物が目覚めてしまった理由を知ります。
彼女は必死になってトラップだらけのエリアを潜り抜けた。それが原因で消費カロリーが多くなり、空腹を感じてしまったのでしょう。
お腹の燃費の悪さは計算外です。まさか、こんなに早く空腹が訪れてしまうなんて。
「悪いが、私は早くこのレースを終わらしたい。この子も、私に訴えかけている」
オグニちゃんはお腹を摩りながら言うとママたちを追い抜き、先頭を走ります。
このままでは、オグニちゃんが1着でゴールしてしまう。
「オグニに勝たせる訳にはいかんタイ。このレースに勝って、シャカールをウチの通う学園に編入させるタイ!」
言葉を吐き捨て、サザンクロスちゃんが加速します。
そうでしたね。このレースには、シャカール君の編入がかかっているのです。絶対に負ける訳にはいきません。
足の筋肉の収縮速度を早くするように意識して走り、ママは加速して前に出ようと試みます。
『優勝争いはこの3名に絞られたか。クリープ、オグニ、サザンクロス、この3名が順位を入れ替えていく。残り300メートルを切った! 魔法禁止エリアまで、残り100メートル』
彼女たちを追い抜くことばかりを考えていましたが、間も無く魔法禁止エリアに到達してしまいます。
あのエリア内に入ってしまえば、魔法を発動したとしても、無効化されてしまいます。
彼女たちに勝つには、ここで勝負をかけるしかありません。
「ここで勝負を決めてやるタイ! サンダー!」
サザンクロスちゃんが落雷の魔法を発動すると、目の前に雷が落ちました。
威力は小さいですが、怯ませるには十分な効果を持ちます。
『ここでサザンクロス走者が雷の魔法を発動! オグニとクリープ走者に直撃することはなかったが、一瞬足止めすることには成功したぞ!』
「クリープには悪いが、シャカールはウチの成長のために、いただいて行くタイ」
一瞬の足止めでしたが、白い俊雷と呼ばれた彼女の末脚には十分すぎる時間でした。あっと言う間に距離が離されていきます。
このままでは、本当に負けてしまいます。何か、何かないのでしょうか。
必死になって思考を巡らせます。
この場で使えるママの武器はなんなのでしょう。
(クリープさんの胸は殺人兵器です!)
レース前にアイリンちゃんが言っていたことを思い出します。ママは抱き締めたつもりだったのですが、結果、アイリンちゃんが窒息死をしかけていました。
ママのおっぱいで攻撃? って何を考えているのでしょう。そんなの上手く行く訳がありません。そもそも、抱き締めること事態が難しいことです。
他には何かなかったでしょうか。
もう一度思考を巡らせます。ママは医者の娘として、保健の授業は得意です。なので、生物の肉体については、他の走者よりも詳しい。
この状況を打破する策を考えていると、あることが思い付きました。
『魔法禁止エリアまで、残り50メートル!』
魔法禁止エリアまで、残りの距離がありません。こうなったら、思い付いた策を実行してみましょう。
まずはオグニちゃん対策です。
『アイムフル!』
魔法を発動すると、オグニちゃんの走りが変わりました。鬼気迫る表情だったのが、穏やかな表情へと変わったのです。
「おや? 何故か知らないが、急にお腹が満たされたような気がする」
やりました! 先ほどの魔法は、満腹中枢を刺激して空腹を誤魔化す魔法です。主にダイエット目的に開発された魔法ですが、どうやらオグニちゃんの怪物を眠らせたことに成功しました。
その証拠に、彼女の速度が落ちています。これなら、追い抜くことができそうです。
『ここで先頭を走るサザンクロスが魔法禁止エリアに突入だ! ここから先は、己の足との勝負です!』
サザンクロスちゃんが魔法禁止エリアに突入しました。魔法禁止エリア内に入った走者への魔法妨害は反則となります。彼女に対して魔法が使えません。ならもう、この手しかありません。
ママは力一杯走り、オグニちゃんを抜いてサザンクロスちゃんを追いかけます。
『ここでクリープがオグニを抜いた! そして前方を走るサザンクロスを追い掛ける!』
「サザンクロスちゃん待ってください!」
ママは両手を広げてサザンクロスちゃんを追いかけます。
「待てと呼ばれて待つアンポンタンはいないタイ」
「待ってくださ~い! ママが抱き締めて頭なでなでして上げますから!」
最後の手段、それはアイリンちゃんが言ったママの胸で窒息作戦……と言うのは建前で、本当の狙いは別にあるのですが。
「何サラッと殺人予告をしとるバイ! 嫌タイ|《よ》殺されたくないタイ!」
ママから逃げようと、サザンクロスちゃんは更に加速しました。
やりました。これが狙いです。ママから逃げようとすれば、必要以上に体力を消耗するはずです。疲れた体で、最後まで走り抜けられるでしょうか。
『ここでサザンクロスが更に加速する! これは決まったか? いや、そんな彼女を逃すまいとクリープも追い上げてきた!』
「待ってください! そんなにママの抱擁が嫌なんですか?」
「嫌に決まっているタイ! 死因が胸による窒息死ってなったら、あの世で笑い者にされるタイ」
「そんなに嫌がられると、逆にムギュってしたくなります。絶対に捕まえて上げますからね!」
「どうして魔法禁止エリアなのに、最後の最後で変なギミックが発動するとタイ!」
ママから逃れようと、全速力でサザンクロスちゃんが逃げていきます。
むぅ、ママをギミック扱いする悪い子にはお仕置きが必要ですね。絶対に抱き締めて、ママの胸と腕で包み込んで上げます。
『ゴールまで、残り50メートル! 先頭、サザンクロスのまま、1メートル差でクリープが追いかけています。そして5メートル離れてオグニが追い掛ける展開だ』
ゴールまで、もう直ぐです。このまま逃げ切られる前に、何が何でもサザンクロスちゃんを捕まえて、ギュッと愛情たっぷりと抱き締めて頭をなでなでして上げなければ。
残り10メートルにまで迫った時です。ママは思いっきり加速してサザンクロスちゃんの前に出ます。そして体を反転させ、サザンクロスちゃんを抱きしめる体勢を取りました。
あれだけ加速して走っているのです。急に速度を落とすこともできませんし、横から抜けられようとしても、手が届きます。サザンクロスちゃんはママからは逃げられません。
「さぁ、チェックメイトです」
「このままではクリープに捕まる! どうしよう……とでも思っているのか! ウチはそこまでアンポンタンではないタイ」
サザンクロスちゃんが跳躍したかと思うと、ママの胸に飛び蹴りをしました。その反動でママは後方に吹き飛ばされてしまいます。
あーあ、最後までサザンクロスちゃんを捕まえることができませんでした。
『ゴール! サザンクロスが蹴った反動でクリープが吹き飛ばされてそのまま1着でゴールだあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
そう言えば、ゴールが近かったですね。サザンクロスちゃんを捕まえるのに夢中で、忘れていました。
『1位争いをする2人を追いかけるように、ここで地方の怪物オグニが怒涛の追い上げを見せる!』
「お腹空いたああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そんな! オグニちゃんの怪物が目覚めてしまうなんて!
彼女は空腹になると、レースを終わらせるために、通常では考えられないような走りをみせます。その対策として、彼女に満腹感を与える大福を差し上げましたのに、どうして彼女の怪物は目覚めてしまったのでしょうか?
『怪物と呼ばれた末脚がここで火を吹く! あっと言う間にクリープとサザンクロスに追い付いた!
ゴールに向けて走りながら、隣にまで迫ったオグニちゃんを見ます。彼女の勝負服はボロボロとなっており、擦り傷のようなものが見えました。
「やっと追い付いた。最後のギミックには骨が折れたよ。2人に引き離されないために、無我夢中で走り抜けて来たのだから」
オグニちゃんの言葉が耳に入った瞬間、ママは怪物が目覚めてしまった理由を知ります。
彼女は必死になってトラップだらけのエリアを潜り抜けた。それが原因で消費カロリーが多くなり、空腹を感じてしまったのでしょう。
お腹の燃費の悪さは計算外です。まさか、こんなに早く空腹が訪れてしまうなんて。
「悪いが、私は早くこのレースを終わらしたい。この子も、私に訴えかけている」
オグニちゃんはお腹を摩りながら言うとママたちを追い抜き、先頭を走ります。
このままでは、オグニちゃんが1着でゴールしてしまう。
「オグニに勝たせる訳にはいかんタイ。このレースに勝って、シャカールをウチの通う学園に編入させるタイ!」
言葉を吐き捨て、サザンクロスちゃんが加速します。
そうでしたね。このレースには、シャカール君の編入がかかっているのです。絶対に負ける訳にはいきません。
足の筋肉の収縮速度を早くするように意識して走り、ママは加速して前に出ようと試みます。
『優勝争いはこの3名に絞られたか。クリープ、オグニ、サザンクロス、この3名が順位を入れ替えていく。残り300メートルを切った! 魔法禁止エリアまで、残り100メートル』
彼女たちを追い抜くことばかりを考えていましたが、間も無く魔法禁止エリアに到達してしまいます。
あのエリア内に入ってしまえば、魔法を発動したとしても、無効化されてしまいます。
彼女たちに勝つには、ここで勝負をかけるしかありません。
「ここで勝負を決めてやるタイ! サンダー!」
サザンクロスちゃんが落雷の魔法を発動すると、目の前に雷が落ちました。
威力は小さいですが、怯ませるには十分な効果を持ちます。
『ここでサザンクロス走者が雷の魔法を発動! オグニとクリープ走者に直撃することはなかったが、一瞬足止めすることには成功したぞ!』
「クリープには悪いが、シャカールはウチの成長のために、いただいて行くタイ」
一瞬の足止めでしたが、白い俊雷と呼ばれた彼女の末脚には十分すぎる時間でした。あっと言う間に距離が離されていきます。
このままでは、本当に負けてしまいます。何か、何かないのでしょうか。
必死になって思考を巡らせます。
この場で使えるママの武器はなんなのでしょう。
(クリープさんの胸は殺人兵器です!)
レース前にアイリンちゃんが言っていたことを思い出します。ママは抱き締めたつもりだったのですが、結果、アイリンちゃんが窒息死をしかけていました。
ママのおっぱいで攻撃? って何を考えているのでしょう。そんなの上手く行く訳がありません。そもそも、抱き締めること事態が難しいことです。
他には何かなかったでしょうか。
もう一度思考を巡らせます。ママは医者の娘として、保健の授業は得意です。なので、生物の肉体については、他の走者よりも詳しい。
この状況を打破する策を考えていると、あることが思い付きました。
『魔法禁止エリアまで、残り50メートル!』
魔法禁止エリアまで、残りの距離がありません。こうなったら、思い付いた策を実行してみましょう。
まずはオグニちゃん対策です。
『アイムフル!』
魔法を発動すると、オグニちゃんの走りが変わりました。鬼気迫る表情だったのが、穏やかな表情へと変わったのです。
「おや? 何故か知らないが、急にお腹が満たされたような気がする」
やりました! 先ほどの魔法は、満腹中枢を刺激して空腹を誤魔化す魔法です。主にダイエット目的に開発された魔法ですが、どうやらオグニちゃんの怪物を眠らせたことに成功しました。
その証拠に、彼女の速度が落ちています。これなら、追い抜くことができそうです。
『ここで先頭を走るサザンクロスが魔法禁止エリアに突入だ! ここから先は、己の足との勝負です!』
サザンクロスちゃんが魔法禁止エリアに突入しました。魔法禁止エリア内に入った走者への魔法妨害は反則となります。彼女に対して魔法が使えません。ならもう、この手しかありません。
ママは力一杯走り、オグニちゃんを抜いてサザンクロスちゃんを追いかけます。
『ここでクリープがオグニを抜いた! そして前方を走るサザンクロスを追い掛ける!』
「サザンクロスちゃん待ってください!」
ママは両手を広げてサザンクロスちゃんを追いかけます。
「待てと呼ばれて待つアンポンタンはいないタイ」
「待ってくださ~い! ママが抱き締めて頭なでなでして上げますから!」
最後の手段、それはアイリンちゃんが言ったママの胸で窒息作戦……と言うのは建前で、本当の狙いは別にあるのですが。
「何サラッと殺人予告をしとるバイ! 嫌タイ|《よ》殺されたくないタイ!」
ママから逃げようと、サザンクロスちゃんは更に加速しました。
やりました。これが狙いです。ママから逃げようとすれば、必要以上に体力を消耗するはずです。疲れた体で、最後まで走り抜けられるでしょうか。
『ここでサザンクロスが更に加速する! これは決まったか? いや、そんな彼女を逃すまいとクリープも追い上げてきた!』
「待ってください! そんなにママの抱擁が嫌なんですか?」
「嫌に決まっているタイ! 死因が胸による窒息死ってなったら、あの世で笑い者にされるタイ」
「そんなに嫌がられると、逆にムギュってしたくなります。絶対に捕まえて上げますからね!」
「どうして魔法禁止エリアなのに、最後の最後で変なギミックが発動するとタイ!」
ママから逃れようと、全速力でサザンクロスちゃんが逃げていきます。
むぅ、ママをギミック扱いする悪い子にはお仕置きが必要ですね。絶対に抱き締めて、ママの胸と腕で包み込んで上げます。
『ゴールまで、残り50メートル! 先頭、サザンクロスのまま、1メートル差でクリープが追いかけています。そして5メートル離れてオグニが追い掛ける展開だ』
ゴールまで、もう直ぐです。このまま逃げ切られる前に、何が何でもサザンクロスちゃんを捕まえて、ギュッと愛情たっぷりと抱き締めて頭をなでなでして上げなければ。
残り10メートルにまで迫った時です。ママは思いっきり加速してサザンクロスちゃんの前に出ます。そして体を反転させ、サザンクロスちゃんを抱きしめる体勢を取りました。
あれだけ加速して走っているのです。急に速度を落とすこともできませんし、横から抜けられようとしても、手が届きます。サザンクロスちゃんはママからは逃げられません。
「さぁ、チェックメイトです」
「このままではクリープに捕まる! どうしよう……とでも思っているのか! ウチはそこまでアンポンタンではないタイ」
サザンクロスちゃんが跳躍したかと思うと、ママの胸に飛び蹴りをしました。その反動でママは後方に吹き飛ばされてしまいます。
あーあ、最後までサザンクロスちゃんを捕まえることができませんでした。
『ゴール! サザンクロスが蹴った反動でクリープが吹き飛ばされてそのまま1着でゴールだあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
そう言えば、ゴールが近かったですね。サザンクロスちゃんを捕まえるのに夢中で、忘れていました。
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