薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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第九章

第二十九話 トラッポラ記念⑤

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~クリープ視点~





『第2のギミックは、見えない壁による迷いのコースだ! いち早く抜け出すのは、どの走者か!』

『このギミックは、真面目に突破しようとするとバカを見るコースです。逆転の発想で突破できるかが鍵となります』

 実況と解説の言葉が耳に入る中、ママは全体を見渡します。

 どこからどう見ても透明で壁が見えるようには見えません。ですが、虚空に向けて手を当てると、確かに視認できない壁が存在しています。

「お、ここには壁がないタイ。ここから中に入ることができそうタイ」

 考えていると、サザンクロスちゃんが入り口らしきものを発見してくれました。ママたちは中に入り、手探りで壁を探しつつ、先に進みます。ですが、簡単には突破できません。

「おや、どうやら行き止まりのようだな。前と左右に手を置いても、視認できない壁がある」

 どうやら進んだ先は、道が行き止まりだったようです。

「なら、引き返すバイだよ。少し前のところに、別ルートに行ける道があったケンから

 どうやら、サザンクロスちゃんが別の道を見つけていたようです。他の走者たちに先を越される前に、向かわないといけませんね。

 ママたちは急ぎ、引き返してサザンクロスちゃんが見つけた道を進みます。すると、前方から走者が歩いて来ました。

「お前たち、こっちは行き止まりだった。他の道を探した方が良い」

「あらあら、そうなのですね。それは困ってしまいました」

 頬に手を当て、ママは困りました。

 発見した道は現在2つ。でも、その2つとも行き止まりです。

「情報提供に感謝する。この先を引き返して右に行ったルートも行き止まりだった」

「そうなのか。そっちの道にはまだ行っていなかったのだが、困ったな。俺が入った道はどれも行き止まりだった。こちらこそ、情報の提供に感謝する」

 すれ違った走者は礼を言い、ママたちから離れて行きます。

「いったいドギャンどうすればヨカ良いタイ。あっちも行き止まり、こっちも行き止まりでアクシャウツ困った

「そうだな。でも、先ほど解説も言っていたが、真面目に挑めばバカを見る。きっとカラクリがあるのだろう」

「そうですね。先ほどすれ違った方も言っていましたが、他の入り口を探してみましょうか?」

「他の入り口? ソギャンそんなこと言っていた?」

 あら? どうやらサザンクロスちゃんは気付いていなかったようですね。

「はい。先程の方は『俺が入った道はどれも行き止まりだった』と言っていました。つまり、他にも入り口があると言っています。なので、一旦外に出て他の道を探してみましょうか」

「何! アンあの走者、ソギャンそんなこと言っとたとか。ウチは気付かなかったタイ

 一旦引き返すことにしたママたちは、見えない迷路の外に出ると、外壁に沿って探します。すると、先程以外にも入り口を見つけることができました。

「やったな。ここが正解のルートであってほしいものだが」

ソギャンそんなこと言っている暇があったら、先に進むバイだよ

 サザンクロスちゃんを先頭に先に進んで行きますが、その先も行き止まりでした。

 ママたちは他にも道がないか探しますが、結局見つけることができずに引き返します。そして再び他の入り口を見つけて中に入り、行き止まりとなって出て行く。それを繰り返します。

「ああ、もう! ドギャンどうなっているとタイ! どこもかしこも行き止まりタイ! こうなったら、ギミックを無視して越えてやるタイ!」

 出口が見つからず、豪を煮やしたサザンクロスちゃんはダートコースへと入ってギミックを無視しようとしましたが、見えない壁に激突してダートコースへと入ることができませんでした。

 ズルはできない。サザンクロスちゃんは、身を挺してそのことをママたちに教えてくださいました。

「いたた! ダートコースへと入られないようにしてあるタイ。やっぱりズルはヨクナカッ良くない

 隣のコースに入ることはできない。そのことを考えると、外壁を登って乗り越えることもできそうになさそうですね。

 そう思って見上げると、ママの視界に信じられないものが写ってしまいます。

「他の走者が……浮いている」

「何やって! ホンナコツバイ本当だよ獣人が空中を歩いているバイだよ

「いったいどうやって」

 サザンクロスちゃんとオグニちゃんが驚きの声を上げると、ママはとあることを閃きました。

「もしかして! サザンクロスちゃん、クリープちゃん。付いて来てください」

 2人に追いかけるように言うとママは再び見えない迷路の中に入り、行き止まりに到達します。

「何をやっているとタイ。そこはさっきも来たバイだよ。クリープまでがアンポンタンバカになってしまったバイだよそこは行き止まりだケンから

 悪態を吐くサザンクロスちゃんを無視して、ママは両手両足を見えない壁に当て、力を入れつつ蜘蛛のように上がって行きます。すると、手を置こうとした場所に空間が存在していることに気付きました。

 やっぱり、この迷路には2階が存在しています。

「サザンクロスちゃん、オグニちゃん、先程のママのように両手と両足を使って登って来てください。2階が存在しています」

「何やって!」

「それは本当か! なら、早速上がった方が良いな!」

 2階が存在していることを2人に伝えると、彼女たちは見えない壁を足場にして登って来ました。

『さぁ、今回のギミックに気付いた者たちが次々と先に進んでいる中、先にこのギミックを突破するのはどの走者か!』

『ここから見ている限りは、誰もリードはしていなさそうですね。果たしてどの走者が真の出口を見つけ出すことができるのか』
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