薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳

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第九章

第十七話 裁判の結果

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「強制猥褻の罪に問われているシャカール君ですが、どうしますか? 黙秘しますか?」

 起訴状を読み上げられ、今度は黙秘するかどうかを問われる。

 もちろん、黙秘をするつもりはない。だって、あれは事故であり、俺はサザンクロスにムスコを触らせてなどいないからだ。

「黙秘権なんてものは使う必要はない」

「そうですか。では、罪状認否へと移行しましょう。シャカール君は、この罪を認めますか?」

「俺はやっていない。あれは事故だ。サザンクロスのやつが、誤解を招くようなことを発言してしまったから、マーヤが勘違いをしてしまっただけだ」

 強制猥褻の罪を認めるかを問われた俺は、直ぐに否定した。

 と言うか、寧ろ俺の方が被害者じゃないか? 未遂に終わったとは言え、俺の方がサザンクロスから猥褻なことをされそうになった。

「それでは、冒頭陳述へと参りましょう。検察側のマーヤさん。お願いします」

「はーい! マーヤ的にはこのようなストーリーが考えられます。被告人のシャカールちゃん以外は、全員が女子と言うこの合宿。そんな中、彼は悶々とした日々を過ごすことになりました。年中発情期種族であるシャカールちゃんは発情してしまい、自分の欲求を右手のパートナーで慰めると言う日々を過ごしていたある日、被害者のサザンクロスちゃんが現れました。被告人は自称男と名乗るサザンクロスちゃんをお風呂に連れ込み、そして実は女性であることを知った彼は、欲望を押さえつけられずに、彼女に己の股間を触らせたと考えられます」

「意義あり! マーヤの言っていることは出鱈目だ!」

「被告人のシャカール君は黙っていてください。冒頭陳述である以上、被告人に発言権はありません」

 マーヤの考えたストーリーが完全に的外れなことだったので、俺は意義を唱えた。しかし裁判では被告人の発言権は少ない。なので、裁判長役のクリープから注意を受けてしまった。

 このままではまずい。このままでは、完全に俺が有罪となってしまう。

「ですが、弁護人がいるのでしたら、弁護側の冒頭陳述を述べる権利はあります。誰か、シャカール君の弁護人を名乗る人はいますか?」

 クリープが問うが、この場にいる女性陣は誰も手を上げる素振りを見せなかった。それもそうだろう。みんなが俺のことを犯罪者だと思い込んでいるのだから。

 くそう。こうなったら、一か八かだ!

「弁護人は俺自身だ! だから、俺に本当のことを言わせてくれ!」

「意義有りだよ! クリープちゃん、被告人が弁護士もするなんて話、聞いたことがないよ! そんなことは認めてはダメだからね!」

「クリープ! 頼む! 俺に弁護人役をさせてくれ! このままでは、俺は真実を告げることができなくなってしまう! 裁判を公平に進める裁判長役なら、俺の発言は絶対に必要だ!」

 俺とマーヤは互いの意思を伝え、クリープに託す。

「あらあら、困ってしまいましたねぇ」

 クリープは頬に手を当て、小首を傾げる。

「別に良いんじゃないの? このままでは裁判の妨げになってしまうだろうし、彼に弁護人役もさせても」

 クリープが困っている所に、手を差し伸べたのはタマモだった。彼女は俺に弁護人役もさせても良いとクリープに告げてくれる。

「わたしもいいと思いますよ。シャカールトレーナーが、どんな妄想をわたしたちに聞かせてくれるのか、気になりますし」

 続いてアイリンも賛同し、他の傍観者も俺が弁護人役をしても良いと告げてくれる。

「分かりました。では、シャカール君は、被告人兼弁護人と言うことで」

「そんなあああああああぁぁぁぁぁぁ!」

 クリープの決断に、マーヤは両手を頬に当て、大袈裟に驚く。そんなに俺に弁護人はさせたくなかったのだろうか?

「それでは、弁護人側の冒頭陳述を始める」

 俺は、本当にあったことを話した。

「なるほど、分かりました。では、検察側の立証をお願いします。先ほど話されたものの証拠となるものを提出してください」

「証拠の提出? そんなものないよ? だって、マーヤの言っていることが本当のことで、証拠と言える物はないもん」

「え、何も証拠品がないのに、先ほどの発言をされたのですか?」

 マーヤの言葉に、クリープが驚く。

 彼女が驚くのも無理はないだろう。俺だって、聞いてビビったのだから。

「では、弁護人のシャカール君、証拠品の提出をお願いします」

「良いだろう。だけど縄を縛られている状態では、証拠を提出することができない。だから、縄を解いてくれ」

「良いでしょう。では、アイリンさん。彼の縄を解いてください」

「えー、わたしですか? 面倒臭いので、パスで」

「裁判長の命令に従えないのでしたら、シャカール君が受ける罰を、アイリンさんも受けてもらいますよ」

「わ、分かりました。します」

 俺の縄を解きたくないと主張するアイリンであったが、同じ罰を受けることになると云われ、渋々と俺の縄を解く。

「シャカールトレーナー、何股間を膨らませているのですか。縛られて興奮したのですか? 変態ですね」

「違う。この膨らみは証拠品がズボンのポケットに入っているからだ」

 アイリンの言葉を否定しつつ、自由になった俺は、ズボンのポケットから証拠品を出した。

「きゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「なんて物を出しているのよ!」

 俺の出した提出物を見て、女の子たちは悲鳴を上げた。そして両手で顔を隠しているものの、指の間からしっかりと証拠品を凝視しているのが窺える。

「あら? それはニセムスコダケですね。良く男性器と間違われる珍しいキノコ。確か、シャカール君の話にも出ていましたね」

「あ、そう言えば、お嬢様にプレゼントをしようと思って、私がこっそりとお風呂場で栽培していたことを、すっかりと忘れていました」

「なんてものをあたしに渡そうとしていたのよ!」

 クリープがキノコであることに気付き、ローレルが栽培していたものだと告げると、タマモが声を上げた。

 それもそうだろう。あんなものを送られても、扱いに困ってしまう。

「ニセムスコダケは食べたら美味ですのに。きっとお嬢様も気に入ってむしゃぶりつくすかと思っていたのですが?」

 メイドの発言に、俺は頭を抱えたくなった。こんなことに発展してしまったのも、彼女があんなものを風呂場なんかで栽培していたからだ。

「ニセムスコダケ以外の証拠品もなさそうなので、次に進むとしましょう。本来であれば、証人尋問と被告人質問があるのですが、検察官役のマーヤちゃんが証拠品がないと言ったので、飛ばさせていただきます。では、判決と行きましょう。被告人のシャカール君は――」

 どうやら、判決が下されるようだ。俺には無罪だと言える証拠を提出した。どう考えても、有罪になることなんてあり得ない。

「有罪です」

「なんでだよ!」

 有罪と宣言され、俺はノリツッコミ感覚で言葉を放つ。

「たとえシャカール君の言っていたことが事実でも、乙女の裸を見たことは事実です。覗きの重罪です」

「何が覗きだ! サザンクロスの方から、裸で風呂場に入って来たんだぞ! それを覗きと言えるか! これは事故だ!」

「これにて、裁判を終了します。一件落着ですね」

「何が一件落着だあああああああぁぁぁぁぁぁ! 絶対に控訴してやる!」

 こうして、俺は有罪判決となってしまった。控訴がどうなったのかは、それはまた別の話である。
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