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第九章

第十六話 シェアハウス裁判

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 ~シャカール視点~





 突然だが、サザンクロスが実は女の子と判明した後、俺は両手両足を縛られた状態で椅子に括り付けられ、女性陣たちの晒し者となっていた。

「それでは、これより裁判を始めます。裁判長はママが務めさせていただきます。では、まずは人定質問から行きましょう。被告人の名前と所属、そしてママの好きな所を言いなさい」

 なぜかいきなり裁判が始まり、俺はクリープから本人確認のための自己紹介をするように指示を受ける。

「シャカール、魔走学園の1年だ」

「ちゃんとママの話を聞いていましたか? ちゃんと聞かれた内容に答えなさい。まだ言っていないことがあるでしょう」

 どうしてそんなことを言わないといけないんだよ! 誰か助けてくれ!

 どうにか助けを求めようとしてタマモに視線を向ける。すると、彼女はゴミを見るような蔑みの眼差しを送っていた。

 ダメだ。タマモのやつ、完全に俺が犯罪者だと思い込んでいるみたいだ。

 こうなったら、アイリンだ。

「アイリン! 早くこの縄を解いてくれ。俺は無実だ!」

「嫌ですよ。ププ、シャカールトレーナーがみんなの前で恥を掻く姿を見るのは気分爽快です。いつも、わたしにきついトレーニングをさせるから、バチが当たったのですね。あ、トイレに行きたくなった時は、そのままお漏らししても良いですよ。ちゃんと掃除はローレルさんがしてくれますので」

 こいつ、日頃のトレーニングを根に持っていやがったな。確かにハードなトレーニングだが、それはお前のことを考えて敢えて厳しくしていたと言うのに!

 おそらく、この場には俺の味方となる人物は1人もいないだろう。

 こうなってしまっては、不本意ではあるが、早く終わらせるためにもクリープの指示に従った方が良いだろうな。

「クリープの好きな所? そうだな?料理が美味いところか」

「そうですか。料理が美味しいところがママの魅力なのですね。どうやら、被告人は本人である証明がされたようです。では、次に進みとしましょう。それでは、検察のマーヤちゃん。起訴状を読み上げてください」

「はーい! 被告人シャカールちゃんは、サザンクロスちゃんが女の子だと知りながらも、下半身のアレを触らせた強制猥褻の罪に問わられています」

 マーヤの言葉を聞き、どうして俺がこんなことになっているのかを理解する。なるほど、確かにあの現場を目撃したマーヤなら勘違いをしても仕方がない。

 確かにサザンクロスの発言は誤解を生むものだった。でも、彼女は俺のムスコなどは一切触ってはいない。

 1時間程前のことを思い出す。






「サザンクロス! 今、何をしようとした」

「いや、一人前の男の男性器がどんなものか興味があって。この機会に触ってみようかと」

「ふざけるな!」

「いや、ふざけてオランタイいないよ

 サザンクロスは両手の指を曲げたり伸ばしたりしながら、ニヤついた笑みを浮かべていた。

「サザンクロス! やめろ!」

「別に良いじゃないか。減るものでもないだろう?」

「確かに減らないが、そう言う問題ではない!」

 後方に下がって彼女から距離を離そうとするも、俺の背後は壁となっており、これ以上下がることはできない。

「もう逃げられないタイ。諦めて、触らせてくれればいいケンから

「やめろ。早まるな!」

「大丈夫、大丈夫、優しくしてあげるタイ

 まずい。何か、何かないか? 彼女の気を晒す何かが?

 思考を巡らしていると、俺の視界の奥に、何かがあるのが見えた。

 目を凝らして見ると、どうやらキノコのようなものが浴室に生えているように見えた。

「何で浴室にキノコが?」

「キノコ?」

 俺の言葉に反応したサザンクロスが振り向き、キノコがある場所へと向かって行く。

「シャ、シャカール! このキノコ凄かバイ

 そう言って彼女は戻って来た。彼女の手には、男性器が握られていた。

 いや、一瞬だけそう見えてしまったが、良く見ると男性器のように見えるキノコだ。

「このキノコ、ヌシャーお前の男性器のように大きいバイ

 男性器に似たキノコを見せ付け、まるで精神年齢の幼い子どものように目を輝かせる。そして何をとち狂ったのか、彼女は男性器に似たキノコを股間へと持って行く。

「見ろ! これで自分も一人前の男バイだよ!」

「あ、ああ。そうだな」

 頬を引き攣らせ、苦笑いを浮かべるしかない俺は、この後始末をどうすればいいのか悩む。

「ふむふむ、こうなっていたのか。ここからアレが出ると。思っていたよりも柔らかいタイ

 男性器に似たキノコを俺のムスコと見立てているのか、彼女はキノコを研究熱心に見つめては弄り始める。

 その姿はまるで無垢な子どもが好奇心で弄っているようで、何だか心を痛めてしまう。

「サ、サザンクロス。もうやめてくれ」

「いやバイだよ。こんな機会はそうそうないケンから。もっと触りたい。お、なんか知らんが、膨らんで来たな。それに固くて熱くなって来ている」

 男性器に似たキノコの特徴は見た目だけではない。触れられると柄の部分が膨張して膨らみ、そして熱を生む。そしてそれが最大になると、カサの部分から白い水分を放出する特徴を持っている。なので、別名ニセムスコとも呼ばれている。

 この状況をどうすれば良いのか分からなくなり、この後の展開に恐怖を覚えてしまった。

 この場に居るのは良くない。そう思って俺はこの場から逃げ出そうと試みる。

 サザンクロスがニセムスコに興味を持っている間に、俺は彼女の目を盗んで浴槽から上がり、そのまま脱衣所へと向かおうとした。

「あ、何どさくさに紛れて逃げようとしているとタイ! 逃がさないバイ」

 脱衣所へと逃げようとした俺だったが、直ぐに彼女に取り押さえられてしまった。

 四つん這いの状態で腰に手を置かれて逃げることができない。

 見た目は人間の女の子なのに、考えられないほどの力を持っている。こいつ、ルーナと同じ神族か。

「せっかく、こうして本物と似たキノコがあるとタイ。両方触って本当に同じなのか確かめるタイ」

 やめろおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!

「そこまでだよ! それ以上、シャカールちゃんをBLに目覚めさせないのだから!」

 心の中で叫び声を上げたその時、脱衣場からバスタオル1枚のマーヤが現れた。






 とまぁ、こんな経緯だったのだが、果たして裁判長のクリープは信じてくれるのだろうか。
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